ロストジェネレーション自らを語る/第6回 30歳・男性・正社員(後編)
(前回からの続き)それから特にやりたいことも見つからなかったんですが工業系に進んでしまったので、実家に帰って父親の仕事を手伝いました。父親は嬉しがってましたね。当然跡継ぎ候補になりましたが、私は遅くにできた子だったので父親から学べる時間があまりないわけです。加えて父親の頭に白髪が増えてきたりどんどん体力がなくなってくるのを見るにつけ、焦って怖くなってくるんですね。父親がいなくなったらなんでも1人でやらなきゃならない。責任も負う。当たり前の話ですよね、経営者なんだから。でも、その時期が迫っていることを思い知らされて、怖かったんです。
そんな矢先、父親が手首を骨折して入院したんです。病院に通って指示を貰い、各従業員に申し送ってたんですが、言われたことをただ伝えて仕事を回す、それだけでもすごく大変だったんです。普段の父親ならプラスで現場にもガンガン行っているわけですから、改めて「すごいな」と感じました。で、なんというのかな、ムリだな、こういうふうにはなれないな、と思ったんです。それに手首の手術の時に担架で運ばれていく父親を見て、もうたまらなかったんですね。横に母親もいたんですが、大泣きしてしまったんです。「いずれこうなるんだぞ」っていうのを見せつけられた感じがしました。それから、そのまま仕事をやっていくのが悩みでしかなくなってきたんです。
本当に申し訳ないし、父親を助けたい気持ちもあったんですが、堪えられなくなって母親に打ち明けました。母親は残念がってました。そうですよね、男が生まれるまでわざわざ待って、大学まで入れて。
で、自立というより逃げでしかないんですが、関東に出てきたんです。今は正社員で働けてます。残業代は出てません。管理能力が低いと思われちゃうんで。会社の寮に住んでるんで、電車に乗るロスタイムがなくて、その面ではいいですね。
距離を置いたら楽になったというか、今は地元に帰って父親の仕事を手伝うのが楽しいですね。手伝いたいばっかりに、有給ちょっと多めにとったりとかしてね。母親も、東京のほうは冬も雪の心配なく施工できていいね、って言ってくれてます。最初は逃げで上京してきたけど、今考えるとそれで安定したのかな、という思いがあります。
最近は父親と仕事以外の話をするようになりました。今までは仕事の話が主で、父親がどういう人間なのかを考えたりする機会がなかったんです。でも、この前初めてサシで飲んだらすごく新鮮で、ほら、実家だったら家族と団らんになるじゃないですか、そうでなく二人で飲む、ということを味わってみたら、今更、父親自身に興味を持ち始めたんですよ。この年になってきちんと親と向き合えるようになったというか。色々知ってみると、「ああ、この人の子なんだな」と実感します。父親もあんまり人付き合いが良くないし、不器用だし。いろいろ、そこそこ、似ているところはありますね。…なんだか父親の話ばっかりになっちゃいましたね(笑)
今は、急に携帯電話が鳴ると「悪い知らせなのでは?」とびくびくしてしまう自分がいます。職場では携帯禁止なんですよ。それがすごくもどかしいです。なにかあったとしても、すぐに電話に出られないじゃないですか。それが、怖いです。(聞き手:奥山)
| 固定リンク
「ロストジェネレーション」カテゴリの記事
- ロストジェネレーション自らを語る/男性・26歳・無職 前編(2009.06.29)
- ロストジェネレーション自らを語る/男性・33歳・正社員(教育関係)後編(2009.05.18)
- ロストジェネレーション自らを語る/男性・33歳・正社員(教育関係)(2009.04.20)
- ロストジェネレーション自らを語る/第10回 女性・28歳・パート(農業従事)(後編)(2009.03.23)
- ロストジェネレーション自らを語る/第9回 女性・28歳・パート(農業従事)(前編)(2009.02.23)


コメント