書店の風格/第23回 新潟の老舗 萬松堂
「ばんしょうどう」と読む。創業が江戸末期だから、かなりの老舗だ。
新潟駅から北へ向けて歩いていくと、大きな橋に出る。広大な信濃川にかかる万代橋だ。日本海からの風が吹き抜ける橋を渡りきると、そこには東西に長く長く続く商店街が姿を現す。古町と呼ばれるその界隈は、万代・南口付近と並んで新潟の繁華街である。しかし、繁華街というに至るまでの華やかさはあまり感じられず、落ち着いた雰囲気が全体を包んでいる。筆者自身、古町を歩いていたら「出張で新潟に来たんですが、新潟で一番栄えている街はどの辺ですか?」と聞かれたことがある。「一応この辺もそうなんですが……」と答えたときにはちょっと切なかった。
萬松堂は古町のモール街、6番町にある。まわりには医学書の考古堂、これまた老舗の北光社、遊べる本屋・ヴィレッジバンガードがあり、書店のオンパレードのなかで「本好きならここへ」といわれる個性を出しているステキな本屋さんだ。
どのへんがステキか。お店は4階建てだから、それぞれのフロアのステキさについて紹介してみよう。
まずは1階。雑誌、新刊・話題書、児童書のフロアなのだが、とくに話題書の「書評コーナー」が素晴らしい。特に日曜日は新聞書評のラッシュ日だが、遅れじとそれぞれの新聞の書評記事を切り抜きして棚に貼りだし、一冊ずつ揃えるのだ。もちろんどの店でもやっている手法ではあるが、これほどの俊敏さは新潟ではなかなか見られないぶん、とても貴重。TV、雑誌の書評欄もできる限り網羅する熱意がとても素晴らしい。
中二階。なぜかここだけ「中」がつく。文庫とノベルスのフロアだ。やや狭いが、平台よりも棚優先の構成が、瞬間的に売れる本よりも品揃えを重視する姿勢を感じさせて好印象だ。
二階。専門書売場だ。広いとはいえないフロアなのに、ユリイカのバックナンバーや中小出版社の思想書が豊富。なんといっても注目すべきはレジ隣の平台で、稀覯書や絶版本のフェアをはじめ、数々の催しを展開している。担当者の遊び心が垣間見られ、平台を見るためだけに通ってしまいたくなる。
三階。学習参考書のフロアだ。コミックも扱っているが棚数は少なく、コミック愛好者には物足りないかもしれない。でも大丈夫、当然注文はできるし、ビックリすることに「真向かいにある北光社さんはコミックが豊富です」と教えてくれる。もし他のお店でも在庫がなかったら、Uターンしてここで注文しようかしらと思ってしまう。
ちなみに家庭向け以外の医学書は扱っておらず、こちらも「モール4の考古堂さんが医学書専門です」と教えてくれる。得意ジャンルを持ち寄った書店の集まる古町は、地域丸ごとおすすめだ。
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