ホテルニュージャパン火災後の廃墟/第22回 火事を一気に拡大させた原因が壁に
これは丸焦げになった部屋の内部である。ブロック塀のように見えるのが、隣の部屋との間仕切りである。このブロック塀に胴縁を縦にを打ち付け、そこにベニヤ板を張り、その上に仕上げのクロスが張られていたのだ。
この工法についてニュージャパンの火事に詳しいKBさんは次のように語る。
「当時は、コンクリートブロックに胴縁を固定する方法として木レンガが使われていました。ブロックは上から見ると3つの穴が空いています。その穴に向けてブロックの表面を崩し木を差し込んであるのです。そうすると、その木に胴縁を釘で打ち付けることができるからです。
ただ火事になると大きな問題が生じます。空洞がきちんとモルタルで埋め戻され、木レンガも隣と貫通していなければ(例えば千鳥配列)問題ないが、ここでは埋め込まれた木レンガに壁の両側から胴縁を固定するため、火が付けば可燃物の胴縁と木レンガを通じて一気に隣の部屋まで燃え移ってしまうのです。木材が乾燥しきっていたらなおさらです」
1ブロックおきに燃えかすが縦に並んでいるのがわかるだろう。これが埋め込まれていた木レンガの跡だ。その右隣、胴縁が炭となって燃え残っているのは、バスルームを囲っていたセメントを材料とした壁だ。この耐火材料で作られた壁が胴縁の完全な延焼を防いだのである。つまり壁がベニア板でなければ、せめて胴縁を隣室貫通の木レンガで固定していなければ、ここまでひどい火災にならなかったわけだ。
火災発生直後、耐火材料ではないただのベニア板が部屋に張られていたことがメディアで大々的に報道された。しかし、さらに問題だったのは、本来なら簡単に火が移らないはずのホテルの壁に穴を開け、燃えやすい木レンガが埋め込んでいたことだ。
きれいに胴縁が焼けたブロック塀と胴縁の残った耐火の壁。この写真は耐火材料がいかに重要かを示している。(大畑)
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