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2008年11月22日 (土)

靖国神社/第7回 靖国神社 06年8月15日――この日、九段で起こっていたこと――(上)

 当日の朝、テレビをつけたら既に小泉首相が靖国神社から引き揚げた後だったという人は多いのではないだろうか。何しろ靖国を去った時点でまだ7時55分だったのだから。14日まで連日続いていた報道、論争のハイトーンぶりと比べ、なんだ、意外とアッサリ終わったんだなぁと拍子抜けの感がある人もいるだろう。
 その後、各新聞社の世論調査で首相参拝に50%以上が「賛成」という英霊もビックリものの結果が示されたりしたが、基本的にはどの記事にも「喉もと過ぎた感」がじわりと滲んでいる気がする。

 しかし! 実際の8月15日の靖国神社の熱狂ぶりは凄まじいものがあった。靖国問題ではなく事実上、小泉問題化していた一連の出来事だが、あくまで舞台は靖国一帯なのである。カメラのレンズが白い髪の小泉首相ばかりを捉えていたそのとき、その回りではどんな光景が広がっていたのか、これからお伝えしよう。
 少々時間を遡って当日の午前の6時半、徹夜明けで体力の限界を感じていた編集部員がテレビをつけると、靖国の前で女性リポーターが首相参拝の決定を伝えていた。7時半に官邸を出発、40分頃には到着するという。こうしちゃおれんと仕事を中断して、すぐさま靖国に向かった。

6時50分 九段の坂を登っていると早速こんな場面に出くわした。坂の途中にある九段駅A6番出口前にマイクロバスが止まり、「全学連」と書かれた青いヘルメットを被った一団が飛び出してきた。その数約30人。胸に「小泉首相靖国参拝阻止」と書かれたプレートをつけ、横断幕を掲げ反対のシュプレヒコールをあげるために集まったようだが、数人の右翼に押され気味だった。後のニュースで知ったのだが、その後「全学連」たちは神門前で約50人の特攻服姿の男たちに取り囲まれた。警視庁の赤色のコーンや傘を投げつけられ、「とっとと消えろ」などと叫び声が飛び交い、その場は乱闘騒ぎになった。私服警官らしき人物が殴りかかろうとする人物を必死に止め、羽交い締めにする。そんな一幕があったという。
7時11分 すでに神門前の道は靖国通りにつながる側に警察車両が止まって通行止め。ただし売店横には右翼の街宣車2台が止まっていた。神門前にはテレビカメラが並び、小泉首相到着に備えていた。
7時20分 警視庁と書かれたレインコートを来た20人ほどの一団が神門の中へ入っていく。
7時21分 遊就館横の門、到着殿に車で乗り付けることのできる入り口付近で、右翼と警察の小競り合いが始まる。パトカーから「歩道に上がってください」とたびたび呼びかけるも、黒いスーツを着た若い男性がキレまくっている。数は5人から10人で明らかにカタギではない。そのうちのひとりは、「報道」の腕章をつけた新聞社員らしき男に向かい、「オマエらがキチンと報道せんからこっちが勘違いされるんじゃぁ!」と凄む。
7時25分 到着殿に向かおうとすると、すでに車の通り道にはロープが張られ、マスコミ関係者以外は参集所までしか行けないように警察が通行を規制していた。小社も報道受付をすませれば、奥の到着殿に向かうことができるが時間が切迫しているため、危険を冒さず参集所の横の群衆から小泉の車両の写真を撮ることにした。
7時30分 ますます群衆の数が増えていく。どこかで配っているのだろう、国旗の小さい旗を手にしている人がけっこういた。国旗を持っているくらいなので、その辺りにいる人たちは首相の参拝に賛成なのであり、コイズミよはやく来てくれないかと待ちわびるような雰囲気である。頭上ではうるさいほどのヘリが飛び回っている。10機も飛び回ったとも報じられていたが、参集所横の群衆に体を押されながら見えた機体数は5機だった。
7時40分 首相を乗せた車が到着。一斉にカメラと携帯を頭上に掲げ撮影合戦が始まる。一眼レフカメラがチラホラ上がっていた。カメラ群の前を黒塗りの車が通過する。一瞬の出来事だ。
 到着殿に到着すると、「小泉、最後だぞー! 昇殿参拝しろー」との声が響いた。かなり通なかけ声だ。
7時42分 参道を埋めていた人々が少し引いていく。幾人かのテレビクルーがテープを持って神門の方へ走っていく。少し小雨が強くなり、報道関係者とおぼしき人々が顔をしかめていた。
7時55分 数分前から人がまた戻って来始め、再度、大混雑の中で小泉の車を見送ることに。「小泉さん、ありがとう」との声が参拝客から響いた。車が目の前を通り過ぎると、いっせいに人が帰り始める。神門からの眺めは、とても8時前の神社とは思えなかった。(本誌編集部)

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