原ジャパンとは呼ぶまい
イチロー選手の「WBCを北京のリベンジの場としてとらえたら、チームの足並みはそろわない」発言は図らずもWBCの正体を示している。ズバリそれは米国メジャーリーグベースボール(MLB)の大会という性格である。
そもそも1回目からClassicという名がついているわけで。大リーグのスペシャルイベントだぞと明記しているに等しい。時期も大リーグ開催前。場所もアメリカ。
対するイチロー選手言うところの「北京」とは五輪の大会である。周知のように次回ロンドン大会から野球が正式競技でなくなる。おそらく最大の理由は「ロンドンで野球をやってどうする」だろうが公式見解として見られるうちの1つが大リーグの不参加であろう。根本的な問題でないとしてもIOCとしては我慢がなるまい。似たような関係にIOCとFIFAがあるにはある。しかしFIFAはオーバーエージ枠を渋々ながら認めたし世界の競技国・地域数が野球と比較にならない。
で、イチロー選手はもはやMLBの一員として発想する。するとせいぜい3Aクラスが出場するにすぎない「北京」とWBCでは格が違う。ないしは別種である。したがって北京の延長線上(リベンジ)にWBCを置けばWBCをMLBの大会ととらえ、ゆえに参加でき、参加もしようとする「チーム」の主力を構成するであろう日本人大リーガーの「足並みはそろわない」。この「足並み」とは月並みなチームワークといった意味ではなさそうだ。現に前回のWBCでイチロー選手は事実上特別扱いされていた。今回は彼以外にも多くの日本人大リーガーがいる。ポジションを考えると
●投手
松坂大輔
岡島秀樹
黒田博樹
小林雅英
斎藤隆
●捕手
城島健司
●内野手
井口資仁
岩村明憲
松井稼頭央
●外野手
田口壮
福留孝介
イチロー
あたりは選出しない理由があまりない。少なくとも日本プロ野球選手で彼らを押しのけてまでレギュラー入りする選手は先発投手とコマが1つ足りない内野手を除いて考えにくい。けがの松井秀喜と不振の井川慶も場合によってはあり得る。この大リーガー達に混じって先発出場させたい北京代表はどれだけいるか。投手のダルビッシュ有と藤川球児、外野手の青木宣親ぐらいではないか。
つまりイチロー発言はWBCで日本人大リーガーが主力となるのは必然であり、「北京のリベンジ」にされたら彼らの「足並みがそろわない」のである。なぜならば日本人大リーガーは北京に出場していないからリベンジも何もない。担う必要のない荷物を負うのはご免であり筋も違うと。
選手の分際で監督人事に間接的ながら口を挟むのは何ごとかとイチロー発言を非難する向きもある。そうだろうか。イチロー選手は「選手の分際」ではなく大リーガーの立場から大リーグの大会へ出場する当事者として発言したのであろう。
第1回からの3年で事情も大きく変わった。一番の変化は繰り返すように日本人大リーガーでチームができるほど増えたという点。したがってこの集団を指揮するにふさわしい日本人フィールド・マネジャーを本来は育てておくべきだった。具体的には大リーグの指導者経験である。日本と違って選手時代の輝かしい実績は必要ないのだから日本野球機構(NPB)はしかるべき人物をMLBへ送って育てておくべきだった。
もちろん外国人監督でもいいけど国別対抗戦となるとどうか。最近ではサッカーのW杯では違和感がないもののサッカーの方は「日本はトップレベルとはまだまだ差がある」との認識で共通しているからまだいい。曲がりなりにもWBCは前回優勝国ですからねえ。
とか何とかで原辰徳氏が監督とのこと。いろいろ心配ではある。みんなそうだろう。ジャイアンツ愛の原サンで大丈夫かと。でも案外いい人選のような気がする。なぜならば「原ジャパン」とは呼ばれそうにないから。松坂が投げて城島が受けてイチローが仕切るチームにそれはなかろう。
前から書いているように監督名をチームのシンボルにするのはそもそも誤りである。北京優勝チームを誰が「キム韓国」と呼び、準優勝を「パチェコ・キューバ」としたか。日本でのプレー経験がありそこそこ知名度があっても三位決定戦で敗れたチームを「ジョンソン・アメリカ」と言う声を聞いたことがない。相手には付けないのに自分には付ける。その顛末はどうだ。反町ジャパン、植田ジャパン、星野ジャパン、柳本ジャパン……。惨憺たる結果である。
比較的健闘した女子サッカーは「なでしこジャパン」で監督名なし。優勝して日本中をわかせた女子ソフトボールに至っては愛称すらない。誰か斎藤(春香)ジャパンなぞ言い習わしたか。(編集長)
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