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2008年10月17日 (金)

サブプライム問題に翻弄されるNPO法人「もやい」

 サブプライム問題が世界を揺さぶっている。米国ではリーマン・ブラザーズが破綻し、世界中の株価は一気に値を下げた。メディアで見る限り、投資に血眼になっていた金持ちが慌てふためいているだけに感じる経済混乱だが、じつは庶民の生活にも影響が出始めている。特に経済的弱者にとって、この騒動は人ごとではない。

 円高と世界的な不況の予測におびえ、自動車産業ではさっそく非正規雇用者のクビを大量に切り始めた。10月7日の閣僚懇談会で、麻生太郎首相は「これから次第に実体経済への影響も出てくる。内需拡大に適切な手を打っていかなければならない」と発言していたが、政治家が歯牙にもかけないワーキングプア層の「実体経済」は、すでにボロボロだ。

 そして、この経済混乱の余波をもろに受けた団体がある。ネットカフェ難民やホームレス、DVの被害者などの生活相談や住居の確保に尽力してきたNPO法人「もやい」だ。活動費の約40%に当たる1320万円を寄付してきた、賃貸の保証人代行業「リプラス」が破産手続きを開始したからである。企業業績を一気に悪化させたのは、サブライム問題の影響を受けたファンド部門の行き詰まりだった。
「毎月110万円ずつ寄付をいただいていたのですが、5月からストップしていました。会社が危ないのではとの噂もあったので対策は協議していたのですが、現実のものになってしまいました」
 稲葉剛理事長はそう説明してくれた。
 もやいの趣旨に賛同したリプラスは活動資金を寄付するだけでなく、もやいが支援する人々の保証人をもやいと共同で請け負っていた。しかも彼らの支払いが滞っても、もやいを信頼し借り主には直接交渉しなかったという。
 なぜ、リプラスがここまでもやいに肩入れしたのか、正確なところは分からない。ただ、もやい設立から現在までの社会状況を考えれば支援したくなる気持ちは分かる。

 もやい設立当時、『新・ホームレス自らを語る』(アストラ)の取材でホームレスの方々に話を聞いていた私は、時に絶望的な気分にさいなまれていた。ボランティア団体は、彼らが死なないように援助していた。食べ物や衣服も配り声をかける。できる限りの援助だったと思う。ただホームレスの方々の生きる尊厳を取り戻すことは、なかなか難しいとも感じていた。当時、取材のたびに「もう死にたい」と聞かされていたのだから……。

 誤解している人も多いが、たいはんのホームレスは働きたいと思っている。また、せめて簡易宿泊所で暮らせるぐらいの生活を確保したいとも願っている。暑さや寒さ、虫など住環境の問題だけではない。路上で生きることは精神的にもつらいのだ。他人の視線が生きる意志を少しずつ浸食していく。雑踏の片隅で腰を下ろして行われる数時間の取材でも、そう感じた。地べたに座って見上げる風景は、見慣れたはずの場所を別物に変える。
 そうした現実に報道など何の力も持たなかった。実際、取材した男性から「話したって、オレたちの生活が変わるわけじゃねえし」とため息まじりに言われたこともある。

 住む場所を完全に失ってしまうと、そこから人は目先の問題に追われていく。食料や寝場所の確保などなど、とにかく生きるための戦いが始まる。その前の段階で支援する人がいたなら、せめて相談できる場があれば、と考えていた人もいたに違いない。しかし、そんな困難を全面的に引き受けたのは、もやいだけだった。だからこそ相談の電話が今でも鳴りやまない。
「会が設立された2001年から2006年3月まで、すべての活動は無償ボランティアでした。だから無給に戻ればいいかとも思うんです。ただ、リプラスから寄付を受けた2年間で活動は一気に広がりました。以前は月20件程度しか生活相談が無かったのに、現在は月100件ほど対応しています。活動が報じられたこともあって、地方からいきなり事務所に相談に来る方もいます。そうした期待を裏切れません」
 稲葉さんは強い感情をにじませることなく、さらりと語った。

 この会にかかわる人々は、まじめ過ぎるのかもしれない。「貧乏人を食い物にするような商売はしない」と、生活相談はすべて無料。孤立しがちな弱者のために、サロンまで作ってしまった。コツコツと積み上げてきた入居保証は、1350世帯にもなった。これだけの活動をしているのに、活動に対する報酬は月12万円にも満たない。
「みんな自分の仕事を別に持っています。わたしも塾講師をしながら続けていますし。支援する側もワーキングプアなんです」と、稲葉さんは笑う。
 会の経済状況が悪化すれば、生活費を稼ぐ時間が必要となり、活動に費やす時間が減ってしまうだろう。すでにシェルターとして使っていたアパートを解約するなど、規模縮小は始まっている。
 リプラス破産の影響は寄付金だけにとどまらない。リプラスと連帯保証した入居人の家賃保証まで負うことになってしまった。リプラス破産の報を受け、もやい以外の保証人を求める大家も出てきているという。

「企業が史上空前の利益を上げているときですらアパートを追い出される人がいたわけですから、景気の悪くなるこれからはもっと支援の必要な人が増えるでしょう」と、稲葉さんは予測する。その通りだろう。
 悪質な保証人代行業や敷金や礼金が無料のかわりに数日でも滞納したらアパート追い出すような賃貸物件の広まりで、以前よりホームレスへの圧力は高まっている。かつてのように大家さんに頭を下げ、家賃を少し待ってもらうことなどできない御時世となった。
 この不景気に勤務先に何かあったら、どこに相談すればいいのか不安に感じないだろうか? 少しでも不安がよぎった方は、ぜひもやいにカンパに協力してほしい。(大畑)


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<資金カンパお振込み方法>

①臨時特別カンパ 1口50000円(何口でも)
②サポーター会員 年会費1口5000円(何口でも)
③その他、一般の(金額自由)
 いずれも歓迎です。


*ゆうちょ銀行振替口座 No.00160-7-37247
口座名「自立生活サポートセンター・もやい」

*三菱東京UFJ銀行 新宿通支店 普通 3149899 
口座名「特定非営利活動法人 自立生活サポートセンター・もやい 理事長稲葉剛」
(トクテイヒエイリカツドウホウジン ジリツセイカツサポートセンターモヤイ リジチョウイナバツヨシ)

三菱東京UFJ銀行の口座へのお振込みをされる場合は、連絡先の御住所と御氏名、金額の内訳をメールにて送信の上、上記口座に入金をお願い致します。

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