止めよう地デジ
地上波デジタルは本気でやるらしい。何のため、誰のためなのか全くわからない設備投資である。およそテレビに関わる者としては
①テレビ局
②番組の出演者
③視聴者
④スポンサー
あたりが当事者。そのいずれもが別段得をしない。
地デジの売りは「電波の有効利用」「高品質画像」「双方向」「マルチ編成」当たり。これらが何をもたらすのか
「電波の有効利用」は空いた周波数で何ができるかだから差し当たってテレビには関係ない。
売り物の「高品質画像」は誰がそれを求めているか謎である。丹念に追った動物ものとか世界遺産や美術紹介、開局○周年記念とか芸術祭参加作品とかいった目玉番組で奮発した豪華セットなどにはよかろう。でも「開局○周年記念とか芸術祭参加作品」は常にではない。ラインナップから推して恩恵があるとしたらNHKぐらい。
そもそも今のテレビ番組をより高い品質でみたいとする視聴者が多くいるとは思えない。バラエティーなど特にそう。ドラマはセットのアラが見えるとまずいのでコストアップにもつながりかねない。俳優さんの化粧もより入念にということになりそうだ
ワンセグは移動体でテレビが見られる仕組みでデジタル化の成功例といえよう。しかしそれは文字通りワンセグ。つまり通常のテレビ画像の3分の1程度の低品質である。それが成功したのは視聴者が画質より利便性を重んじている何よりの証拠ではないのか
お金持ちのスポンサーは高品質画像のCMを流したいかもしれないけど、これまたカネのかかる話だ。そもそも広告の効果測定はなかなかに難しく画質をあげれば客が付くといった明確な根拠をこれまで広告代理店の方から聞いたことがない。
双方向も端末であるテレビ受信機から視聴者がテレビ局へアクセスできるわけではないので本当の意味での双方向ではない。WEBカメラでお話しするような「双方向」が実現するはずもない。
マルチ編成に至っては存在自体が矛盾をはらむ。先に示した高品質画像のCMを提供してくれるスポンサーはおそらく上得意だ。したがって番組も高品質画像で流すしかない。その時点でセグメントの過半数を制してしまうからマルチにしようがない。
今程度の画像でよければ理論的にはワンセグを維持したまま3番組がマルチに作れる。正確には2番組分が空く。空いてどうだというのだ。人もカネも時間も余っていて(ありえないけど)今まで通りのメーン番組に加えて同時間帯に別の2番組を流す? それは自局で裏環境を整えているのと同じ行為にならないか。何が悲しくてしのぎを削る他局(裏)ばかりでなく自局で同時間帯を張り合わなければならないのか。
その「自局裏」が数字を取ったらどうする。メーンの広告主はきっと怒る。「いやあ裏であんな強いのをぶつけられると厳しいですよ」との言い訳が通じない。
では「自局裏」が数字を取れなければいいのか。よくない。「まったく無意味な行為をしている」と同義だからだ。
そして人もカネも時間も余ってなどいないという現実を考えればマルチ編成はほとんど意味がない。
地デジというのは要するにハード依拠の公共事業と同じだ。ソフトである番組制作への恩恵がないし、そうした配慮がもともと感じられない。費用はテレビ局に重くのしかかる。その分だけ制作へのしわ寄せが必至だ。高品質を価値あらしめるためには制作にカネをかけねばならないのに実際には逆方向となる。マルチ編成を本気でやったらテレビ局の編成さんも制作サイドも比喩ではなく本当に多数が死んでしまう。それでもやり遂げて戻ってくるのはスポンサーの苦情なのだからやりきれないことこの上ない。
今からでも遅くない。やめましょう。そのお金は制作現場につぎ込みましょう。ソフトの充実あってのハードである。地デジの電波塔である新東京タワーの開業は停波に間に合わないらしいし……ていうかこれもすごい話ですよね。
ところで新東京タワーの名称はなぜ「新東京タワー」でいけなかったのか。今ある東京タワーと紛らわしいから? いやあ、誰も間違えないと思うね。「東京スカイツリー」との新名称も定着するかしら
①「モーニング娘。」のように最初は違和感があったが次第に定着する
②「E電」のように最初の違和感を抱えたまま消え結局は新東京タワーと呼ばれる運命にある
どちらか。私は②に賭けたい。そういえばJR車掌の斎藤典雄さんの記事を編集して知ったのだけどJR東日本社内ではE電という言葉は生きているそうだ。よかった!……という話でもないか(編集長)
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コメント
私は地デジにテレビはほとんど観ないので完全移行したらお別れする計画です。情報媒体としてテレビは最悪ですし、ネットを基礎にして新聞(問題大ありですが)とAMラジオがあればこと足ります。実際にテレビよりも娯楽番組はAMラジオの方がはるかに面白いものが多いのです。
特にTBSなんてテレビとラジオでは雲泥の差があり、アナウンサーも心なしかテレビよりもイキイキしています。
投稿: バラ砂糖 | 2008年10月 8日 (水) 00時52分