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2008年10月 1日 (水)

テレビ局の入構証

仕事の関係でテレビ局の入構証というのを局ごとに持っている。理由は簡単でないと局内に入れない。入れないと仕事ができないからだ。忘れると大変で一緒にお仕事をしているADの方など呼び出してもらって降りて来させ、受付でかなり面倒な手続きをしなければならない。その間に会議でも始まったら迷惑をかけてしまう。
今の入構証は以前と違ってハイテクだ。おおよそスイカやパスネットみたいなものと考えてもらえばいい。それをピッとかざすと門が開く。入構証には局名と私の名前と顔写真と所属会社などが見えるように記されている。いったん入構するとそこは別世界。めくるめく……などということは別にない。
「マスコミ」と呼ばれる組織に正社員として、または関係者として関わるようになって20年以上経つと何の驚きもない。いやそうでない人も別段すごいとは感じない光景が広がる。

新聞社の場合は基本的に社員が構成するので社員証でいい。ただし編集局は厳重である。これは20年前より厳しくなった。毎日新聞の場合は私が社員だった頃、編集局の前には警備員が一応いたけれども眠っているようだった。今はビシッとしておられる。そこをくぐり抜けると20年前はそのまま編集局へ入れたと記憶するが今はもう1つチェック機関をくぐらなければならない。
それも当然だろう。編集局の中で飛び交う情報は、それこそ全部書いたらあぜん呆然仰天のたぐいのオンパレードである。「10を取材して1を書く」の原則でいえば残りの9が渦巻いているわけである。裏が取れない、書くに値しない、書ききれないなどなど。そのなかには値しないけど下世話な興味は十分に引く情報も満載なのである。

一方でテレビ局にはそうした深刻さがあまりない。ただし私のような外部の人間が関わる量が新聞作りに比べると格段に多いので入構証が必要なのだろう。でも顔写真は効果薄な気がする。局内には「入構証を常時携帯せよ」と張り紙が貼ってあるので私は首からぶら下げている。そうしている人が圧倒的に多い。といってすれ違いさまに入構証の顔写真とご本人を素早く比較するのは神業である。多分できないしやろうとしている人を見たこともない。
おそらくそんな表面上の問題ではなく入構するまさにその際の情報確認が決定的に重要なのだろう。スイカと同じわけだからIDカードの情報はコンピュータで照合されているはずだ。そこで怪しい人物をはじこうとの算段である。ここで問題。私は怪しい人物ではないのか。答え。怪しい。ただし怪しいにしても個人情報と入構時間が記録されるので何かあれば特定される。だから大丈夫なのである。

最近時々見かけるのはタレントさんで入構証をぶら下げている方。この光景は以前はなかったよなあ。

この入構証はなくすと大変らしい。どうやら顔認証まではしていないらしく拾った人が不届き者だと入れてしまうようだからだ。あんなところに仕事もないのに入っても仕方がないと思い込んでいたのだが、どういやらそうでもないと最近気づいて厳重に管理するようになった。
というのも私の入構証を見て「すごーい」「ほしーい」という人がたくさんいると知ったからだ。見せびらかしたのかって? 違う違う。先に書いたように局内にいる時にはぶら下げておかねばならないではないですか。で、そのまま退局した後も忘れたままぶら下げていたのを「それ何?」と聞かれたのだ。
笑い事ではなさそうである。うっかり置き忘れたのを不届き者が手に入れて私の入構証で侵入したとする。そこで盗撮やら何やらを働いて去ったとする。後に発覚したら記録に残っている不届き者は「私」となってしまうのだ。
そうか。だからこそ入構は厳重になったのか。(編集長)

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