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2008年10月23日 (木)

アフガン終わりなき戦場/第4回 悪化する治安(2)

 治安の悪化は、体感的に2006年から段々と悪化してきていた危険度のラインが2007年に一線を越えたように思う。2007年の韓国人援助団体23人の拉致が決定的だった。それまで、武装勢力の攻撃対象は外国軍やアフガン政府に限られていたのだが、そこに関係の無い援助関係者が狙われたのだ。

 わたしは事件の発生した7月に現地にいた。事件を契機に外務省の発表する危険情報も「渡航の延期をおすすめします」から最高レベルの「退避を勧告します」に跳ね上がった。わたしも「日本人ならば大丈夫だろう」と思っていたが、それではすまない事態に発展した。それまで仲良くしていた友人がわたしと歩くのを怖がるようになったのだ。「外国人といるところをタリバンに見られたら、殺される」と言うのである。
 それまでわたしはアフガニスタンの戦況分布を外国軍対タリバンという単純な図式で見ていたが、2001年末までは正しかったこの構図は現在では完全に用を成さないものになっている。韓国人拉致の事件で明るみになったのは、タリバンに多くの外国人義勇兵が参加していることであった。韓国人23人は拉致された後に3つのグループに分けられ、一つのグループはアフガン人タリバンが管理し、一つはパキスタン人タリバンが、一つはシリア人タリバンが、という具合に管理された。事件発生後何度も「開放する。開放しない」と様々な情報が錯綜したが、国ごとのグループによって意見が割れたからである。

 以前は頂点のオマル師から末端の構成員までの指揮系統があったが、現在は指揮系統が完全に崩壊し、外国人義勇兵たちとばらばらに共闘しているのが現状だ。しかし、この外国人義勇兵は往々にして本家のタリバンよりも過激になりやすい。もともと、タリバンというのはもともとアフガニスタン統一を目標とした一派であり、アメリカ侵攻後も民衆を味方につけ、国を取り戻すのがイデオロギーだ。しかし、外国人義勇兵というのは反米とイスラム主義をイデオロギーとしているので、行動原理がタリバンとは異なる。
 タリバンが再興した際、民間人を犠牲にした自爆攻撃というのは行われなかった。民衆の支持を失っては元も子もないからだ。しかし、外国人義勇兵は非イスラム者、ひいてはアメリカ、欧米憎しで行動しているので、援助関係者だろうがアフガニスタンの民間人だろうがお構い無しなのだ。近年多くの市民を巻き込んだ自爆攻撃が行われているが、外国人義勇兵の参加がその要因となっている。
 わたしもカブールで空爆の被害者の国内避難民を取材した際、彼らからも同様の話を聞いた。

 カブールの国内避難民は激戦区ヘルマンド出身だ。昨年11月の米英軍の空爆にあい、カブールに避難してきた。約400人が雪の降る空き地にテントを張って暮らしていた。
 キャンプを見回すと、男女や年齢の比率が明らかにおかしい。女性や子供、老人しかいない。若い男がほとんどいないのだ。
 復讐のためにタリバンに参加したのだろう。
 近年外国軍の空爆は激しさを増しおり、その空爆の被害者が復讐のためにタリバンに参加することが増えているのだ。しかし、彼らは本家のタリバンとはほぼ無関係であり、外国人に対し怒りを燃やす復讐者だ。彼らは少人数のグループで活動しており、団体の軍事作戦というよりも、仕掛け爆弾や外国人への無差別攻撃など、小規模なテロに走っている。
 彼らも外国人義勇兵同様、政治的な意図を気にかけない。復讐が行動原理だから、行動も非常に過激だ。
 米英軍は「テロリストを根絶やしにする」という。しかし、実際にはその攻撃の被害者が、敵に回っていのだ。結果的には敵を増殖していることになる。ひとり殺せばその家族の若い男が皆「テロリスト」になり、米英軍を攻撃するのだ。
 「憎しみの連鎖」という言葉が、現実味を持っている。米軍もそれに気づき、復興支援などを行い人心を得ようとしているが、彼らが居つづける限り連鎖は断ち切られないだろう。

 では、外国軍が全て撤退したらどうなるだろうか。間違いなく、3日も経たずカブールはタリバン勢力の手に落ちるだろう。しかし、米軍はアフガニスタン国軍を何年もかけて訓練をしてきた。現在アフガン政府の中枢にいるムジャヒディーンが権力を手放すとは思えない。恐らく、現政権のムジャヒディーンとタリバンによる内戦に突入するだろう。1989年にソ連が撤退し後、親ソ政権とムジャヒディーン側で血で血を洗う内戦になった。歴史が繰り返される可能性がある。
 現在、アフガニスタン情勢は悪化の一途にある。最大の問題は、何をすれば、何がよくなる、というビジョンが全く無いことだ。外国軍が力で抑えようとしても失敗し、外国軍が退けば、内戦に突入。旱魃(かんばつ)は深刻さを増し、英オックスファムの発表によると今冬には500万人が飢餓に直面するという。何もかもが悪い方向に進み、一縷の希望も見えないのだ。
 ペシャワール会の伊藤和也さんはこの絶望的な状況の中、「子供たちが食うに困らないように」と活動をしていた。事実、ペシャワール会はジャララバード付近で事実を好転させていた。もし、アフガニスタンに未来があるならば、それは彼らNGO団体の地道な活動によってこそ達せられるのではないだろうか。
 伊藤和也さんの冥福をお祈りする。(白川徹)

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