日曜ミニコミ誌!/あいじょうaijou『愛情通信』
『愛情通信』。左の小冊子の名前だ。模索舎、タコシェなどミニコミ誌を多数扱っているところに置かれているフリーペーパーである。多くの個人ミニコミ誌が続行困難となる中、無料配布で19号まで続いている。誌名から考えて、心温まるエピソードが書かれているのか? と予想する人は、中を見て驚くだろう。例えば19号の最初の記事は「サンドイッチすごい」というタイトルだ。サンドイッチの携帯性と利便性のすばらしさについて延々と語っている。口語体の文章に独特のノリとキレがあり、思わず笑ってしまう。そして次の記事は「今更何故か光GENJI」。さらにスポーツコラムや音楽芸能ネタなど、愛情にはあまり関係ないと思われる記事ばかりだ。どうしてこれが「愛情通信」なのか。
ホームページを拝見すると、編集人のナカダヨーコさんは以前「愛情」という劇団を結成していたらしい。が、なぜ「愛情」なのか。「愛情通信」はそこから来ているのか。ご本人にお話を伺った。
--フリーペーパーを作る前は、「愛情」という劇団をされていたということですが?
(ナカダさん:以下ナ)はい。演劇のゼミに通ったあとに仲間と結成して、2回ほど上演しました。愛情という名前は、ア行だとイベント情報誌の最初のほうにくるのでいいと思い、国語辞典で調べて「愛情」に決めました。
そしてフリーペーパーを作って役者募集をしようと思い、出来上がったのが『愛情通信』です。最初の何号かは劇団員募集の広告を載せていたんですよ。誰も来ないので載せなくなりましたが。
--『愛情通信』はいつごろから続けているんですか?
(ナ)2001年からなので、今年で7年めですね。ほとんど1人で作っているので、締め切りなど決めずに書いています。一貫したテーマというのも特にはなく、自由にその時書きたいものを書きます。 例えば11号の表紙は、ピンクチラシにアルバイトで覚えなければならない事項を書き殴ったものなんです。仕事を始めたばかりで覚えられなくて。その時、本当に働きたくない気持ちでいっぱいだったので「働きたくない特集号」になってます。バイト初日にあった嫌なことを題材に小説を書いたりしています。
--バックナンバーをみると、結構「働きたくない」というテーマと、芸能ネタが多いようですね。
(ナ)ぱっと思いついたものを書いているんですが、やはり頻繁に気になってしまう題材はありますね。「働きたくない」もそうだし、芸能だとm.c.A.Tが自分の中で何度もブームになるので彼について書くことが多いです。書き始めるのは突然で、急に思いつくんですよ。どんな形の文章でいくかには悩みますが、それが決まれば一気に書き上げます。
その時に気になったものを自由に書く、というスタイルを一貫して持っているナカダさん。勢いのある文章はそこから生まれるのだろう。ナカダさんは「愛情通信」の別冊として『孤立無援』も刊行している。
(ナ)『愛情通信』は8ページで短いので、もっと思いっきりしつこく書こうと思って『孤立無援』を書いたんです。
『孤立無援』もトイレ特集や結婚特集などバラエティに富んでいる。しかしどんなテーマでも筋が一本通っていると感じさせるのは、「はじめに」に書かれた「発行の原動力は強い怒りや悲しみが大半」という言葉にヒントがあるとみた。斬新な企画や文章力はもちろんだが、表現したいという情熱がナカダさんの雑誌の一番の魅力ではないかと思う。編集ツールが圧倒的に欠けていても、それでも伝えたいという思いがにじみ出ているからこそこんなにも惹かれるのではないか。
その情熱は『孤立無援』の「おわりに~感性、共感、繋がり~」にも見てとることができる。…引用したいところだが、大変に長く、一部を切り取ると曲解される可能性もある。手にとって読んでいただくことを強くおすすめしたい。(奥山)
(■『愛情通信』フリーペーパー ■『孤立無援』1号 15×21㎝ 46P 350円)
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