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2008年8月23日 (土)

書店の風格/第17回 高円寺界隈

 さきの第16回では、オトナな街・西荻窪の書店様をご紹介した。
 不運にも店主には会えなかったが、「日中は他の店舗にいる」と連絡先を教えていただいた。ブックカフェである。地図を取得するためネットで検索すると、新刊・豆本を扱っていて、カフェスペースでは軽食もできて、さらにイベントスペースやギャラリーとしての機能もあるお店のようだ。

 1つのイベントが目をひいた。
 「アニメーション・ポルカ」。

 アニメのショート・フィルムとは珍しい。山村浩二の「田舎医者」を見て以来、このジャンルは注目したいと思っていたのだが、願望だけで終わっていた。情報キャッチが難しい分野なのだ。しかしこんな催しがあったら行くしかない。
 ということで、仕事とは全く関係ないが、お客としていそいそ参加してみた。

 お店は「茶房 高円寺書林」。高円寺駅北口を出て、純情商店街を突っ切って、庚申通りをまっすぐ進むと左手に看板が見つかる。手作り感覚の、木の看板だ。案内どおりに左に折れるとすぐに見つかった。観葉植物の置かれたテラスがあり、見た目はまごうことなきカフェ。しかしテラスのテーブルには多くのミニコミ誌やフライヤーが置かれ、棚には本がたくさん並んでいる。間違いなくここは、本屋さんなのだ。

 中に入ると、左手に本棚、右手にイベントスペースが広がっていた。
 「いらっしゃいませ」とにこやかに話しかけて下さる女性がいる。ワンドリンク制とのことなので、アイスティーを選んだ。スクリーンこそないが、白壁はひろく空けてある。普段はカフェスペースであろう空間に木製の椅子がいくつか並べられている。うながされ、ちゃっかり一番前に陣取った。

 上映作品は韓国の映像制作会社「MASCO」のもの。最初はコマーシャルフィルムがいくつか、そしてプライベートフィルム、短編アニメが上映された。アニメばかりではなく、実写のものもある。クレイアニメによく見られるように、コマ撮りのものが多い。印象的だったのは「貞子」もどきが出てくるプライベートフィルムで、テレビの中から映画のとおりに貞子が登場するがあまりに小さいので誰からも相手にされず、物をテーブルに置いた時の振動で床に跳ね落ちてしまうというもの。言葉が伝わらなくとも、ユーモアは伝わる。表象文化は素晴らしい。実際、日本人はもちろん韓国人、フランス人と多国籍の人々が集まっており、上映後はそれぞれの言葉で盛り上がっていた。

 せっかくなのでご挨拶したいと、先ほどコーヒーを持ってきてくれた女性に話しかけると、店主その方らしい。図々しくも名刺を差し出すと、なんと弊社雑誌「記録」を取り扱っていてくれたとのこと。そしてホームレス本についての意見をいただいた。曰く、「2番目に出たのよりも1番目の方が緊張感があって好きですね」と。1番目の『ホームレス自らを語る』は、調べうる限りでは本邦初のホームレス本であった。偏見の目で見られがちなホームレスに取材し、その重みある半生を語っていただくというものだ。体当たり取材の緊迫感が読み手にも伝わったのであろう。

 後日、もう一度お邪魔して、先日は拝見できなかった本棚をじっくりと拝見した。一般書店では手に入らないような若手の書くミニコミ誌、デザイナーの記念本、Tシャツ、そして豆本と、表現したい人々の息づかいが伝わってくるアーティスティックな品揃えだ。さすがはサブカル・ディレッタントな街、高円寺。西荻窪のお店とはひと味もふた味も違う。店主の守備範囲の広さに、思わず唸った。これからも絶えずアンテナを張って、本と人との出会いのサポート役として活躍していただきたい。(奥山)

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