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2008年6月14日 (土)

書店の風格/第9回 旭屋書店船橋店で『石塚さん、書店営業に来ました。』を買う

 ひ、卑怯者! と思わず怒鳴ってしまいたくなるほど、うまい企画である。
 さて問題です。日本で一番、本屋さんに行く回数が多いのはどういった人たちでしょう?
 答えは文学青年でもなく大学教授でもなく、「出版社の営業」。彼らは毎日、向かうべくして書店に向かう。もと書店人によって書かれた、出版社のための営業ノウハウ本。「本屋に人がいなくなった」とぼやかれる昨今、訴えかけなくともターゲットは否応なしにお店にやってくる。ほんとになんて巧いんだ。そして季節を問わず営業をしていると額と脇の下に汗を大量にかいてしまう小心・口下手・軟弱者の奥山としては、買うしかないでしょう、この本は!!

 買った現場は、旭屋書店船橋店。ここでも、素敵な書店員さんとの出会いがあった。大変お忙しい中、じっくりとお話を聞いてくださったのはHさん。長い髪をすっきりと束ねた女性だ。人文の棚を担当しているので、弊社から本を出版している著者の中ではルポライター鎌田慧と相性が良い。さっそく、まだ企画段階の本について意見を伺ってみた。
 すると実に手際よく資料を読んで「ウチは●冊かな」と、具体数まで言っていただけるではないか。
 出版時期が確定していないものに、書店員さんのほうから積極的に注文数を提示してくださったのは、実は初めて。今まで参考程度にとお願いしても「出版時期が決まってから」「値段が決定してから」「ゲラができてから」と言われ続けてきたので感動した。
 そして「これは人文だけじゃなくて社会の棚にも置けるから」と言って、店内を横切っていく。ついていくと、社会系の棚を担当しているSさんに本を紹介してくださった。そして二人で相談して、注文数をまとめて渡される。ここまでの時間、じつにご挨拶から2分程度。素早い!!

 購入した『石塚さん、書店営業に来ました。』にもあったが、書店員さんのお仕事は分刻みになりやすい。筆者も書店のアルバイトをしたことがあるが、棚整理をしようと本に手をかけた瞬間にお客さんからお問い合わせを受け、該当書籍を探している間に出版社営業に声をかけられて「少々お待ちください」と言い、お客さんをご案内した後にさっきの営業さんは?と周りを見渡しているとレジが混み始めて助っ人に行き、落ち着いた瞬間に電話が鳴って取り、取り次いだあとにまたさっきの営業さんに声をかけられてそれもご案内し、さて棚整理にまた取り掛かろうと時計を見ると自らがレジに入る時間になっている…といったことの繰り返し。あっという間に一日はすぎていった。
 だからこそ、Hさんの頭の切り替えの早さには驚愕した。チラシをちらと見ただけで判断ができる、そして他の棚のことも考える余裕。ベテラン社員だからこそのプロのお仕事だ。じっくりと考える時間がないからこそ生まれる集中力が、全身にみなぎっている。そして終始明るく対応してくださったのもじつに印象深かった。こういった書店員さんには、ファンが多いんだろうな。

 こちらも緊張ばかりしていないで、書店の利益になるようきちんと本のご案内をしていかなくてはならない。『石塚さん、~』では書店員さんの側から見た出版社営業がやってしまう数々のウッカリがたくさん書いてある。「参考になる」程度でおさまるものではない。。心の中で土下座しながら読みきった。とくに「説明したあと、注文くださいって言ってますか? 注文の責任を相手に押し付けるのではなく、自らも負いましょう」というくだりには頭が上がらない。そのとおり、最後の一押しができないんですよね…。ああ、ちゃんと仕事しなければ。しよう。(奥山)

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