書店の風格/第11回 文教堂 ブックストア談 錦糸町店
下町の代名詞(と思っているのは田舎者の私だけ?)、錦糸町。駅に降り立ってひととおり街を歩けば見えてくるキーワードは、競馬、競馬、競馬の嵐。JRA競馬場・ウィンズが駅前にあり場外競馬が楽しめるのは、まあ普通のこととして受け止めることができる。しかし、「競馬のある日は100円引き」「10%引き」「飲み物1杯サービス」の看板が異常に多いようなんだが気のせいだろうか。裏通りに一歩足を踏み入れれば立ち飲み屋がズラリと並び、店の庇をはみ出してイスとテーブルが公道に押し出されている。そこに座ったおじさまたちが上機嫌で競馬のテレビ中継を見ながら、そしてラジオ中継を聞きながら一喜一憂し、店のおかみさんは手作りのおつまみを差し出す。夢のような楽天地だ。私も早くおっさんになって仲間に加わりたい、と思ったが如何せん女なのであった。そして競馬は見たこともないのであった。
失格!
錦糸町の街を紹介したかったわけではない。本日紹介するのは錦糸町駅からすぐ、駅ビルとも言えるだろう立地にある「テルミナ」4階にある書店、ブックストア談錦糸町店だ。1階から3階まではヨドバシカメラ、4階からは専門店が並ぶ。4階上りエスカレーターを降りてすぐ、目につくのは売れ筋商品を並べた棚だ。コミック、サブカルの要素が強い本が目立つ。かと思いきや、ノンフィクションあり、文芸書あり、シブめの社会系ありのにぎやかなラインナップ。本好きの店員さんがのびのびと品をそろえていることがわかる、風通しのいい書店である。中に入ると左がコミックフロア、中央が文芸書や話題書、続いて右に文庫、新書、語学や参考書、雑誌と続いていく。ひととおり回った後、ふとコミックフロアのほうに目をやると、すごいものを見つけた。
「見ないで描いてみよう!」
とのタイトルが振られたコルクボードに、いくつもの絵が鋲で貼ってある。良く見ると、アンパンマン、アトム、サザエさん、ちびまる子ちゃんなど日本人にはなじみ深いキャラクターの数々。だが…全部、なんか違うぞ! そう、ここはお手本を見ないで描いたキャラクターの展示スペースなのである。うろ覚え選手権を彷彿とさせるが、すごいのはこれら全てをお客さんが描いているということだ。展示スペースの脇には鉛筆と紙、そして投票箱のようなものが置いてあり、思い立ったらすぐ描いて投稿できるようになっている。
人間関係が冷え込んでいる現代日本において、こんな心温まる交流があろうとは。いや、大げさに書きたてるまでもなく、企画があっても適当にスルーしてしまうのが昨今のオトナ子ども事情。なのに、こんなに投稿してくれる人がいるなんて。よく見れば自分のお母さんや知り合いの顔を描いているものもあり、笑いを誘う。こんなふうに楽しいコミュニケーションを地元内外のお客様と取れる書店はもはやここ以外にないのではないだろうか。もちろん、絵本の読み聞かせなど完全に幼児向けのイベントを行っている書店は数多くあるだろうが、より年上の年齢層に働きかけて成功しているお店をなかなか見ない。そんな中での好例。きっと、趣向をそのまままねしてもなかなか成功しないだろう。このお店のキャラクター、そして地元への確固たる根付きが成功を招いたのだ。
一度立ち寄ったお客さんが、確実にまた来たいと思う書店。
私も次の投稿貼出がとっても気になる。(奥山)
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