書店の風格/第5回 ジュンク堂書店新宿店
2004年の新規開店時の新聞広告では一面に本棚がズラリと並び、ようく目をこらせば一冊の本のタイトルに「閣下ごめんなさい」の文字が・・・という、危ないユーモアが記憶に新しいジュンク堂書店新宿店は、紀伊國屋書店新宿本店の目の前にある。はっちゃけた広告の印象とは裏腹に、店内は粛々とした雰囲気だ。そしてこれは新宿店に限ったことではなくジュンク堂全店の特色だが、専門書の品揃えにこだわりを持った棚構成で、図書館を模している。棚にはベンチが横付けされており、ゆっくり本を選べるスペースが確保されている。読書家、専門家、本マニアにはたまらない空間だろう。
とくに新宿店は開催されるフェアにも客層をずいぶんと反映していて、例えば今なら「岡田光司写真展」「菊地成孔ファッションフェア」「大谷能生・門松宏明の今ここで、フランス革命フェア」など、メディアや芸術に興味のある学生が好みそうなラインナップだ。さすがに隙がない。
さて、小社より新刊『どこかで』が発売のはこびとなって1日目。うきうきしながらお店に入って、棚を探った。歴史、医学、語学と専門棚の並ぶ中、ライトエッセイのコーナーにありました! ケータイ小説、言わずもがなの大ヒット『恋空』や新刊『Bitter』に囲まれて『どこかで』。写真を撮りたいと申し出ると「どのような方でもご遠慮いただいています」粛然としたお答えが。うーん、ハイクオリティ。
それにしてもこの「ライトエッセイ」の棚、異色である。一冊のみ棚挿が基本のジュンク堂において例外的に全て表紙を見せて陳列しているというのもあるが、「モテ本」の類から芸能本、ケータイ小説、ブログ本にいたるまでがずらっと並んでいるのだ。エンタメ系はノンジャンルということか。それとも、この棚から卒業していちジャンルとして飛び立てる日を、じっと待ちながらひしめき合っているのだろうか。そんなふうに考えると、この混沌が生き物のように思えてくる。本すら有機物にしてしまう、ジュンク堂の魔法に魅せられた。(奥山)
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