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2008年5月12日 (月)

セレブバラバラ事件の現場を歩く

Img_1246_2   自宅マンションから500メートル、徒歩にしてわずかに5分。そんな空き屋に、彼女は夫の下半身を捨てた。先ごろ、東京地裁が懲役15年の判決を言い渡した「セレブバラバラ事件」である。
 三橋歌織被告は2006年12月12日午前6時ごろ、自宅である渋谷区富ヶ谷のデザイナーズマンションにおいてワインのビンで夫・祐輔さんをめった打ちにして殺害した。彼の頭には8ヵ所の挫創と亀裂骨折が刻まれていたという。

 この12日、彼女が何をしていたのかは明らかではない。ただ殺された夫の会社では無断欠勤した祐輔さんを心配し、携帯に次々と連絡を入れていた。そして殺害翌日の13日には、彼を心配した同僚が「自宅を訪ねたい」と歌織容疑者に電話をかけている。
 ドメスティック・バイオレンスで自分を苦しめた夫は死んだ。しかし死体は残る。彼女は、その当たり前の事実に恐怖した。そのうえ冬の12月とはいえ、殺害2日目にして遺体は少しずつ腐臭を放ち始める。葬式で使うドライアイスを用意していたわけではないのだ。同僚の訪問と遺体への恐怖と臭い。3つの問題が彼女を追いつめていく。
「怖くて家に帰りたくないが行く場所もない。そのときに遺体を運び出すしかないと考えた」
 裁判の被告人質問での彼女の言葉だ。だが遺体を運び出すのが容易でないことを、彼女は殺してから知る。
「遺体は予想以上に重かった。一刻も早く目の前から取り去ってしまいたかった」
 身長170センチ、「背が高く、スタイルが良くモデルのよう」と評された歌織被告だったが、180センチの大男だった夫の遺体を1人で運べるはずもない。選んだ方法は遺体の「分割」だった。
 彼女は遺体を処理するために、14日から精力的に動き始める。まず土・ブルーシート、台車、キャリーケース、ノコギリを買い込み、倒したクロゼットに土を詰め、血が流れでないようにしてから遺体を切り刻み始めたのである。頭・胴体・下半身・左腕・右手首。携帯に便利な5つのパーツが土の盛られたクロゼットに並んだ。当時、被告のノートには、「フット、ヘッド、ハンド、バラバラ、完了……」と書き残されていたという。

 15日の深夜から16日の早朝にかけて、彼女は廃棄にかかる。
 まず、胴体をゴミ袋で梱包し、キャリーケースに入れてタクシーで新宿に向かった。「よく出かけていたので土地勘はあった」と供述した場所だったが、タクシー運転手から「においますね」とキャリーケースの臭いを指摘され、慌てて車を止めて降り、西新宿の路上に投げ捨てたとされる。
 すでに殺害から5日がたとうとしていた。葬儀に詳しい友人は「湿気がなく寒い東京の12月は遺体にとって理想的な環境。でも2日目からは相当に臭い。3日目以降ともなれば耐えられない状態だったでしょう」と説明してくれた。歌織被告自身、自宅の腐臭に日々おびえていたはずだから、この運転手の指摘はかなり恐ろしかったに違いない。
 だからこそ彼女は自宅に取って帰し、下半身の運搬にかかる。しかし彼女が選んだのは、キャリーバックに入れて台車で運ぶ方法だった。
 指紋からの発覚を恐れ、左腕と右手首は生ゴミに。人物の特定につながりやすい頭部にいたっては、翌日電車に乗って町田の公園に持っていき35センチの穴を掘って埋めている。人の特定につながらない夫の体など、彼女にとって生ゴミぐらいにしか思っていなかったのかしれない。
 だからだろうか。彼女は下半身を捨てた現場について、「自宅近くだが、知らない場所だった」と供述している。つまり気の向くままに台車を走らせ、適当に捨てたわけだ。

 マンションのエントランスを出ると、方向は2つ。軽い坂を上がり、井の頭通りを沿いを歩いて行くか、坂を下り井の頭通りを横切る交差点に出るかである。すでに新宿に胴体を捨てためかなりの体力を消耗していたとすれば、彼女が坂を下ったのもうなずける。また坂を上がるなら、夜でも交通量の多い片側3車線の大通りの脇を歩くことになる。これは遺体を持つ者にとってはマイナスだろう。

 だが、次の方向選択は少し不思議だ。彼女は駅に向かう商店街はもちろん、マンションが建ち並ぶ高級住宅街も避け、さらに代々木公園の方角も避け、渋谷東急本店に向かう遊歩道へと台車を向けたのだから。
 この選択を考える上で1つヒントになるのは彼女の殺害直後感想である。
「自宅の目の前に広がる代々木公園が、とにかく真っ暗に見えた」
「代々木公園だけが真っ暗で、世界中に自分ひとりしかいないように思えた」

※ここから先の記事は…

『あの事件を追いかけて』(本体952円、アストラ刊)にてご確認ください。

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コメント

すごく誠実で地を這いずり回る乾いた文章で、無料公開させるにはというクオリティでした。最後の一文に他全てが殺到していますし。この事件はヒッチコックやロメールが生涯かけて描こうとした美女という記号の、被虐的な孤独感を地にオシャレっぽく描き損なってしまった感がありますよね。端的に、坂口の生涯の失敗作はこれは筆頭「堕落論」であって、戦後焼け跡闇市派や満州引き揚げ派からすれば、全くの観念論であって、なんなんだこの糞作品はってとこ有ったんじゃないかとおもいます。多分ここがクライマックスなんでしょうけれど、坂口も殺人の動機を描きたかった、即ち音楽的なジャンルを目指していたひとであって、文章というのはほんらい殺人後の倦怠を論理で表現するのに、端的にそのためだけのジャンルを表現するのに適しているのではないでしょうか。あと先輩風を吹かせるのはカラオケ風俗以上の快楽なので僭越承知で申しあげますが、「台車を転がしても(後略)」のクダリは、大畑さん特有の絶対余人にはマネのできないハッスル&バンプ感の発露が生き生きと、露呈していました(念のため私、六回音読で読み直したのですが知らず、勘弁してよクロマティーなどと独白していてた有様で……つまり妬みそねみを上手く削れる資質がジャーナリスとして成功できる才能なんでしょう元もと一家をなしていた人なのかもとも文章に関しては敬愛していますが、とまれ職業意識を感じました)。

投稿: 巻太郎 | 2008年5月13日 (火) 00時36分

スティーブン・キングは「22世紀は猟奇一色に殺到する」と喝破しましたけれど、そうか? ジャーナリスト以前のマーケッティストの発想なんだよな。町田や野坂は己自信の文体の重力自体でおちる、不死鳥墜つをそのままでいったひとたちで、猟奇なんて結局、幼稚園児が熱狂するウンコそのもの、三島が最期に嗅いでやっぱこんなもののってな世界ですよ恥を知れといいたい、むしろ三島ではなく野坂に対して。なんか今、強烈にムカっ腹がたってしました。

投稿: 巻太郎 | 2008年5月13日 (火) 04時37分

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