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2008年5月25日 (日)

冠婚葬祭ビジネスへの視線/第19回 葬儀講習会レポ

 5月23日、朝日カルチャーセンターで行われた「納得できる葬儀」という講義に出かけてきた。講師は「木霊と凪」代表の葬儀コンサルタント、吉澤武虎氏。せんだって「葬送の自由をすすめる会」主催の「春の合同自然葬」に参加したとき、お会いした方だ。このたびは取材ではなくあくまで一般の個人として、講義を受けてきた。
 よって個人として感じたことをここに書いてみたい。

 集まったのは40人程度。講義の定員が40人なので満員御礼だ。テーマがテーマなだけに受講生はご年配の方が多い。男女比は、やや女性が勝っている。一番前に20代から30代と思しき女性が二人座っていて、なんだ、若い人もいるじゃない、と思っていたらスライドショーを操るお手伝いの方々だった。あとは私を除けば60代は下らない方ばかり。ということは、みなさん「自分の葬送について」学びに来たのだ。しかし「納得できる葬儀」という名の講義なのだから、ぜひ喪主になる立場の方にも受講していただきたい。葬儀について思いをめぐらすのは死者となりゆく人々でも、それを実行するのはひとつ手前の世代たちであるのだから。

 おじいちゃんやおばあちゃんが講師の言葉に合いの手を入れながら、というアットホームな授業が始まった。講義の流れはわかりやすく時系列を追っている。つまり死から始まって葬儀屋が登場し、葬儀・火葬が行われ納骨までの一連の流れに沿って講義が進んでいった。とくに、もと葬儀屋として印象に残ったのは「葬儀屋に言ってはいけない3つの言葉」。いわく、

1、「初めてです」(または、「何も判りません」)
2、「普通でいいです」
3、「おまかせします」

 とのこと。実はこの3つの言葉、葬儀屋にも「あとでクレームをつける客が言う危険な一言」として認識されている。この3つを発するお客様に限って、デートで「食べるもの? なんでもいいよ」と言いながら具体的な提案をすると「それだけはイヤ」と拒否するワガママ娘のようなことを言い出すのだ、しかも注文したあとに、だ。
 要するに、消費者として商品知識を予めつけておかないと双方不幸な結果になるということであろう。講義にうなづきながら必死でメモを取る受講生にも、消費者として強くあろうとする意気が見える。

 さらに講義は今当たり前となっている仏式での葬儀について詳しく切り込む。「葬式仏教」といって評判の悪い昨今だが、仏式葬儀で実際何がなされているのか理解している人は一体どのくらいいようか。理解されようとする努力がお寺のほうに足りないのではという主張もうなづける。しかし正しく理解しないで批判するのも、まごころがないというもの。吉澤氏は批判されがちな戒名料、何を言っているのかよくわからないお経、仏教と葬儀との関係などについて詳しく解説していく。時々漏れる受講生の「知らなかった」というつぶやきやため息などから察するに、こういった講義に関心を持つような人でもやはり正しくは知らなかったのだろう。「知らされない」ということは不安につながって、「良く知らないから納得できない、だから仏教で葬儀はしない」ということになりかねないところを、受講生は今一度深く考えるチャンスを得たのだ。

 「納得できる葬儀」--。そう、受講生はただ葬儀を簡素にしたいから講義に来たわけではない。そんな貧乏根性ではなく、納得できる送り方、送られ方をしたいと思って来たのだ。そのためにはいろいろな送られ方を知らなくてはならない。ただ簡素にしたいというのでは、「住職は呼ぶけれど戒名は要らない」などというへんちくりんな葬儀になってしまう恐れもある。仏式も、ほかのあり方も知った上で自分の「本当にやりたい葬送」を見つめなおす。今回の講義は、その起点となりうるのではないだろうか。(小松朗子)

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