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2008年4月 9日 (水)

巨人軍が弱いのは新興・零細企業並の補強だから

プロ野球の読売巨人軍は栄光ある伝統を持ち、球界では最も豊かな球団である。だからカネにあかせて他球団の主力選手を補強するのだと一般に見なされている。でもそうして強くなるとは到底思えない。
これが新興企業だったらわかる。右も左もわからない状態では取りあえずその世界で実績をなした選手を取れば他の選手のランドマークの役割を果たすだろう。零細も同じ。ただ零細の場合はカネがないので一点豪華主義で拝み倒してくるのだ。サッカーJリーグ開幕前に住友金属がジーコを連れてきたような例である。

新興企業は自由である。なぜならば栄光をつかむのはこれからであり、栄光あってこそ伝統が生まれ、伝統がその会社独自の「作法」を生ぜしめ、時間とともに作法は複雑化し、縛りとなっていくという経緯を持つから。
零細もある意味で自由である。零細であり続けるとは栄光にいつまでもたどり着けないのと同義だ。栄光がなければ伝統は生まれない。生まれたとしても「零細であり続ける」伝統だからチャンスをものにする際にはかなぐり捨てるべき対象である。また零細の多くには独裁者がいて不自由だろうとの憶測もあろうが、現実問題としてちょっと違う。例えば小社の回りには小社も含め多数の零細があり、小社における私のごとくたいていは独裁者が存在する。しかしこの独裁者は零細を維持する程度の能力はあっても、それ以上に発展させる力がない。だから零細のまま低空飛行を続ける。またカネもないので社員をカネで縛り付けることもできない。いわば弱い独裁者である。
したがって安い給料ならば適当にやろう(=自由)という社員のモチベーション?を抑止する力はない。また逆に零細から脱出するすべを独裁者は知らないので「脱出するにはこの方法があります」との提案を社員がしてきたら、その誘惑に負けて許してしまうのだ。
こうした「自由」からおそらく偶然に商機をつかみ、脱出していったのが現在の大企業である。大きくなって過去を振り返ると、その偶然があたかも必然のように思われ、行き当たりばったりだったり風に乗っただけだったというのが真相の発展もまた整然たる物語として企業文化として、伝統として根付いていく。いったんそうなると伝統自体が人を育てるようになり、最後は誇りにまで昇華する。朝日新聞社員が自らを朝日人というように、電通社員が自分を電通人とするように。もう通常の人類とは違うというところまで来るわけだ。

冒頭に述べたように読売巨人軍はそうした会社である。「巨人軍は紳士たれ」の合い言葉の元でヒゲ面を許さない。ヒゲが生えているか否かで打率や防御率が変わるわけじゃないだろうとの発想は私のごとき零細ならではであって、栄光が生んだ作法を伝統ある会社はことのほか重視する。ヒゲ禁止に類する作法はおそらく100を下るまい。その多くは暗黙知である。ほんのちょっとした違いが伝統企業にとっては驚くべき不作法となり、そうした掟破りを白眼視する。新人や実績のない移籍選手ならばその冷たい視線に気づき、次第になじんでいくしかない。だが大物移籍選手はどうか。
彼らはいうまでもなく高い打率や防御率などを求められて招致されている。本人もそれを果たすが役割と心得る。現在のところ巨人軍以上に歴史と実績を有する球団は国内にはない。したがって彼らが前にいた球団は巨人ほどの作法はなく、場合によっては相当に自由であったろう。
となると結果はみえている。大物移籍選手はわけのわからん作法をわけがわからんゆえに時々破っては白い目を向けられる。いちいち覚えていくだけの柔軟性が彼らにあったとしても第一の使命である「数字を残す」に集中できない。受け入れる側に以上のような理解があって配慮をしたとしても今度は作法が身にしみている生え抜き選手が腐ってしまう。生え抜きが伝統を重んじる度合いは以前「『TOKYO』を『YOMIURI』にした罰」というタイトルで(http://gekkankiroku.cocolog-nifty.com/edit/2005/10/tokyoyomiuri_b900.html)松井秀喜選手の述懐を紹介した。大変なことなのである。

したがって読売巨人軍は自らの伝統を信じて、多少の低迷は覚悟して生え抜き主体のチーム作りをするしかないのである。今のような方法をとっていたら純粋に戦力が巨大だから優勝ぐらいできるかもしれないけれど、巨人を愛するファンには愛想を尽かされ、新たな野球ファンは訳のわからないチームとしか映らず思い入れようもない。それができない言い訳として「優勝が宿命づけられている球団だから」がある。でも宿命づけられているとの思い込みは過去の伝統に発するのだから、そこを損なっては論理矛盾である。私は密かに今の巨人軍の編成に携わる人たちに伝統への懐疑が生まれているのではないかと心配している。
そうでなければいったん伝統なり何なりをリセットして新興球団としてやり直すのだ。そのために最大の障壁は「監督は生え抜きでなければならない」という伝統だろう。初代の藤本定義監督は彼の現役中にプロ野球がなかったから生え抜きではないのは仕方ない。その後の全監督は今に至るまで現役時代は巨人一筋だった(注:監督兼選手だった中島治康はその時点まで生え抜き。辞任後に他球団でプレー)。藤田元司氏など現役こそ巨人一筋だったものの後に他球団のコーチを務め、それが監督就任の際に問題となった。それほどの純血主義である。ここを変えない限り「一から出直すぞ」とのメッセージはかけ声だけとなろう。最も効果的なのは巨人以上の伝統があるアメリカ大リーグのチームで監督を務めて実績を残した人物を招くことだ。巷間挙がっている次期監督候補は星野仙一氏を除くと一筋組ばかり。これでは何も変わらない(編集長)

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