冠婚葬祭ビジネスへの視線/第14回 秘密の花園★セレモニーレディのお給料
葬儀式場に立つ一輪の(菊の)花、それがセレモニーレディ。通夜や葬儀ホールや火葬場に行くと、黒系のスカートやパンツスーツでひっそりと姿勢良くたたずんでいる複数の女性がいるでしょう。彼女らのことです。
石のように立ってるだけに見えるセレモニースタッフ、果たしてあなたたち、おいくらまんえんもらっているの??
それが葬儀屋在職中、小松が持った一番の疑問だった。田舎の葬儀屋だからこそ、セレモニーレディなんてめったに使うことはないが、たまに大型葬儀で派遣されてくると、彼女らはなかなかにウザい存在なのである。
美しく保たれた姿勢、慇懃な敬語、取り澄ました表情、誰に対しても態度を変えずとりあえず「人に会ったらお辞儀」。やりすぎだ。
それで仕事ができるならまだいい。しかし大半はただその場に佇んでいるだけである。こちらとしてもお飾り用に呼ぶわけではないからあれこれと指示はするけれど、忙しいから呼ぶという面もあるからそうそう面倒を見てはいられない。とにかく動いて気づいてそして働けプロならば! と言いたいところをグッとこらえ、大抵は見限って一人で仕事をする。彼女らには神妙な顔でお辞儀だけしておいてもらう。認めたくないところだが、同じ性だからこその敵対心もあるのかもしれない。こちらは遺体や棺も運ぶし化粧もするし祭壇組むしテントだって一人で立てなきゃならないときもあるのに、あんたらは突っ立ってるだけで金がもらえるのかよ! という気持ちがあったことは否定しない。そこを「いやいやこの仕事を選んだのは私だから」と心の中で首を振り、「でも、あんたら幾らもらってんのよ?!」という突っ込みは消えないのであった。
話が私的方向にブレすぎた。セレモニーレディのお給料の話だが、今回は
・求人情報に待遇を明記してある法人のサイト
・個人ブログ
・コミュニティ
以上の3点からサンプルをとって調査することにした。ネットでの個人的な発言が含まれるため信憑性には欠けるけれど、調べてみたらじゃんじゃん出てくる。とくにSNSのコミュニティサイトは大変参考になった。
総合してみると、時給でもらっている方とひと現場幾らでもらっている方と2種類いる。セレモニーホールのスタッフとして雇われれば時給、セレモニーレディの派遣会社から派遣されるのであればひと現場幾らというパターンが多いもようだ。
で、気になる結果は、平均時給およそ1000円(小松調べ)。
へっ!!
や、安い!
急にかわいそうになってしまった。「葬式系は給料が高い」というのは定説ではなかったのか? まあ、彼女らの仕事量からしてみれば多すぎる感もあるけれど、しかし驚いたのは「依頼する側」だったことがあるからだ。セレモニーレディの派遣料金は高かった。ひとつのお葬式で一人頼めば10000~15000円がとんでしまう。だからあまり歓迎したくなかったが、いるだけで店が華やかになるキャバクラのお姉ちゃんのように、いるだけでその場の空気が粛然とするのだからやはり大きな葬儀には欠かせない。大企業会長の葬儀に立ち会ったのは汗ミドロで駆けずり回っている現場社員だけでした、ではお客さんに申し訳ないだろう。仕方ないのだ。ないの、だが…平均時給が1000円だとすると、大きな葬儀では準備をあわせて4、5時間程度は立ち会ってもらうので彼女らの取り分は多くて5000円。支払額が10000円。マージンが半分って取りすぎなんじゃ…え? どこも一緒? う~ん、そうだろうか。他の業種についても調べてみないと判らないが。
にしても、憎むべきは彼女らではなく、派遣会社のほうだったということがわかりちょっとした収穫。
今までごめんなさい、麗しきセレモニーレディのみなさま。(小松朗子)
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コメント
流石に慧眼だな~、と思いました(編集長さんのご指導かもともですが)。だがしかし、最後の一文の、悪気オンリー100%のダメ押しには、私的にはユーモアがかんじられました(リスカやペニカ志望の、ことに十代の自殺志望者を救うのは、或いは、ジャーナリストかもしれないですね。ただひたすら「記録」次号読みたさに……。否この芸術論は、山口瞳オリジナルそのままなんですが、念のため。あと<汗ミドロ>の表記には、感心させられました)。
「マリリン・モンロー、ノウ・リターン」
http://www.youtube.com/watch?v=d4HiKH9dzIo&feature=related
自戒を込めて、日本のジャーナリストは、せめて野坂以上でしょう。
投稿: 巻太郎 | 2008年4月20日 (日) 03時01分