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2008年3月29日 (土)

『吉原 泡の園』第61回/童貞たち泡の園

 お客はソープが初めての人もいる。それは、ともすればその人の風俗人生を左右する一大事ともいえるのだ。笑い話でも大袈裟でもなく、男にとって初風俗は非常に大切である。まして童貞ならアイデンティティーを揺るがす問題といっても過言ではない。

 もし、初めて高級ソープで女のコに馬鹿にされたら、おそらく童貞君は性風俗はもとより女にも深い怒りを心の奥底に持つようになるだろう。かなり悲惨な人生を送ることになりかねない。また、初めてでイケなかった場合、女のコもそうだが、男にも相当な自信を失ってしまう。
 イクとはアクメの事だ。いわゆる絶頂に達することであり、生命をつなぐ生命の根源的行為ともいえるが、普通イクとき、わざわざそんな事を考える男もいないだろう。
 しかし世の中にはさまざまな理由でアクメに達しない人もいる。風俗に来た緊張かもしれないし、女の子の技術の問題かもしれない。あるいはお客自身の問題なのかもしれない。特に童貞の場合は、普通以上に緊張するので注意が必要な場合もある。

 ときに一見温厚そうにみえる青年が、アクメに達しない自分に苛立ち、豹変して女のコに暴力的に接する場合だってある。女のコからSOSが出れば、当然、ボーイが助けることになるが騒ぎが収まったからといって、すべての問題が解決するわけではない。女のコがイカせられなかった事は、女のコ自身にとっても性風俗店としても大変な問題だからだ。こうした事件の「後遺症」を女のコも引きずるし、店も女のコの「技術」に不安を感じるようになる。
 こうしたケースは問題としてかなり深刻だが、初風俗の緊張がほほえましい形で表に出ることもある。

 ある日、サングラスをかけた男が客として訪れた。第1待合室に案内しオーダーを伺う。フリーでふらりと店に入ってきたので、すぐにいける女のコの写真数枚を持って伺った。
「ただいま、すぐに案内できるコはこちらになります」
 そう言ってテーブルの上に数枚の写真を並べる。
 サングラスをかけているので目が見えず、どのコを見ているのか、どんな目をしているのかさっぱり分からない。ただ、真剣に唸って考えている。
 そして突然、
「お兄さん」
 とボーイの僕をそう呼んだ。
「はい」
「僕には女のコとこんな所で遊ぶ権利があるのでしょうか」
 突然そう言ってサングラスを取った。どんな瞳が隠れているのかと思っていたのだが、意外と普通の青年だった。
「答えてください、お兄さん。僕は、こんなふうに遊んでもいいのでしょうか。風俗譲は辛い過去をもった人が多いと思います。僕にそこな場所で遊ぶ権利がありますか?」
 男は真剣だった。
「もちろんです。お客様は遊んでもいいんですよ」
 僕は微笑んで答えた。男は少し安心したようだった。
「じゃあ、このコで」
 そういって指差した写真のコは長身のスレンダー美人Fだった。
 サングラスの下の瞳は、結構しっかりと選んでいたのだ。

 店が改装中だったため、姉妹店の部屋を借りる事になった。たかだか数百メートルしか離れていないが、車でお客さんを姉妹店まで案内する手はずを取る。車を店の前に停めドアを開けてスタンバイする。

「お客様、お部屋の改装のため、姉妹店のお部屋に移動いたします。お車の準備が整いましたので、どうぞ」
 そういって車まで案内しようとしたのだが、サングラスをかけ直した男が言う。
「いや、走って行きます。はい。走りますから」
 そう言ってきかない。まさか、高級店ともあろう店が、客を走らせるわけにはいかない。だが、客は走る気満々の様子で、準備体操なぞし始めている。
 困り果てたマネジャーやボーイ達だが、結局、そのお客の意見を尊重してプレイルームを借りる姉妹店まで走ってもらうことにした。
「それではあそこになります」
 姉妹店を指差して教えると、男は猛ダッシュで吉原のメーンストリートを走り出した。他の店のボーイは目が点。なんだあいつは、といった感じだ。
 姉妹店で案内を受ける際も、サングラスをしたままで、一瞬、舘ひろしか、と思うくらいのポーズをとったまま固まっていたそうだ。

 ソープ初体験などの人など、緊張からこうしたビックリの行動に出る人もたまにいる。ただこのお客、その日ついた女のコにぞっこんになり、本指名客になってしまったという。
「遊ぶ権利があるのでしょうか」などとほざいていても、いざ遊んでしまったら肉体以上に精神的快感に酔いしれてしまったのだろう。固定客になったらしい。

 ソープでは、今まで誰にも相手にされなかった人間でも、大枚を投じることで、ヤクザ風の男どもや、綺麗な女のコが自分の意のままに動かせる。もちろん女のコは優しい。こうした精神的な快楽にはまる人は少なくない。特に友達が少なかったり、女のコとの付き合いがない男性は精神的にハマる場合が多い。
 このお客の私生活は知らない。ただ、金だけは貯めていたようで、本指名客となってしまった。ここで甘い思いをすると骨の髄までしゃぶられることなど、店は説明しない。おそらく貯金がすっからかんになる運命をたどったことだろう。そうした底無し快楽地獄も、吉原の側面であるのだ。

 綺麗な花には刺がある。くれぐれも遊びということを忘れないように、本気で好きになったときは、財産の保証は出来ない。それこそ「吉原泡の園」であり「泡の底」でもある。(イッセイ遊児)

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