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2008年3月17日 (月)

駒込・幼女殺人事件の現場を歩く

 1979年9月朝から取り調べを受けていた犯人は、午後5時過ぎに「申し訳ありません。私がやりました」と泣き崩れたという。

 事件が発生したのは逮捕の1ヵ月半ほど前となる7月28日。母親と駒込駅周辺のパチンコ店に来ていた3歳の幼女が行方不明となり、約200メートルほど離れたマンションの茂みで遺体となって発見されたのだ。母親が子どもがいないと気づいてから1時間半後の悲報だった。
 犯人はパチンコ屋の常連で被害者の子どもとも顔見知りだったらしい。彼女に声をかけて300メートルほど離れた自分のアパートに連れ込み、いたずらしようとしたところで悲鳴を上げられ、とっさに絞め殺したと自供した。しかも彼は10年前にも山口県で7歳の女の子を山林に連れ込み、同じように騒がれ絞殺していた。無期懲役の判決を受けたものの、犯行の5年ほど前に仮出所していたのだ。

 この事件の不思議さは犯行現場と死体遺棄現場の近さにある。連れ出したパチンコ店から絞殺したアパートまでが300メートル。その自室から遺棄現場までは200メートルしか離れていない。
 新聞報道によれば幼女を殺してから1時間ほど「死体を部屋に置いて始末を考えた」(『読売新聞』1979年9月10日)とのことだが、少なくとも逃げるために頭を使ったとは思えない。
 彼がこの地で幼女にイタズラしたのは初めてではない。近所では「小さい子どもにイタズラする中年男」とマークされていた。前科を考えれば、死体が発見された時点で容疑者になることは当人も分かっていたはずである。しかも前科は無期懲役。次捕まれば確実に死刑である。

 犯人が住んでいた住所に建つ古いアパートから死体遺棄現場まで歩いてみた。アパート前の細い路地を抜け、左折。右折すれば、すぐ本郷通りにぶつかる。午後9時半という時間を考えれば、まだ交通量の多いであろう本郷通りを避けたことは理解できる。

Img_6619_3  そこで寺を左に見ながら坂を下る。坂下の十字路をまっすぐ数メートル進めば、夜でも通行量の多い谷田川通りにぶつかる。ここも行けない。だからだろうか? 右に折れて10メートルほど進み、谷田川通りと斜めにぶつかる角のマンション脇の茂みに、犯人は死体を置き去りにした(写真参照)。
 近所に住む住民は当時の植木の様子について、「そういえば事件のときも今と変わりないわね。木もあまり大きくならなくて」と振り返る。写真に掲載したとおり、茂みと言っても容易に地面が見える。死体を隠すのに向いているとは思えない。事実、夜にもかかわらず遺棄から90分後に死体が発見されている。その時、死体には体温が残っていたという。

 死刑が嫌ならば、死体が発見されないようするしかない。そこまで余裕がなく、とにかく手元から見えなくしたかったならばアパートから数十メートル離れた旧古川庭園の奥に置く手もあったはずだ。アパートの荷物をまとめて逃走する時間ぐらいは稼げる。一応、石垣と柵はあるものの石垣は1メートルほど、柵も厳重ではなかった。3歳女子の平均的な体重13~15㎏を抱えていたとしても、入り込むことは難しくなかったろう。

 ところが犯人は死体を隠す努力さえせず、アパートから逃げることもせず、逮捕された。事件翌日の新聞は、近所に住む「幼児好き」を警察がリストアップしたとも報じていたから、自分への包囲網が狭まっていることは分かっていたに違いない。仕事も月10日ほどのアルバイトのみ。死刑を覚悟してまで続けたいものだったとは思えない。もちろん家族と同居していたわけでもない。
 結局、彼が事件隠蔽のためにした行動は、女の子を連れ出したパチンコ屋に出入りしないようにしたこと。犯行時に履いていたサンダルを使わないようにしていたこと。たったそれだけだった。

 犯人が死体を前に考えた「始末」とは、結局、自分のことだったのではあるまいか。欲望を止められない自分への始末を、座して待つことで手に入れたように思えてならない。
 重要参考人として警察に呼ばれたとき、彼はしばらく履いていなかったサンダルを身につけていたという。犯行現場に残された靴跡とサンダルが一致し、犯行の動かぬ証拠となった

 1999年9月死刑が執行され、彼は62歳の生涯を終えた。逮捕から20年がたっていた。

 事件現場周辺で2時間ほど声をかけまっくったが、彼を覚えている人など誰などいなかった。ただ死体発見現場の記憶だけを数人の老人が語った。それは29年の時間の重みというより、子どもの気しか引けなかった犯人の社会性を表しているような気がした。(大畑)

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