冠婚葬祭ビジネスへの視線/第11回 和婚主義!(後編)
前回、結婚情報誌「ゼクシィ」最新号にて、最近の結婚トレンドとして語られている「和婚」を確認した。 「和婚」って具体的に何なのか、そして本当に「流行っている」のか? もちろん聞いたことはあったが正体が漠然としているこの結婚スタイル。素朴な疑問を追おうとしたところ、結婚情報誌の種類の多いこと! 販売雑誌から無料誌、地方限定版とほいほい出てくる。関連サイトも星の数ほど。さすがに全てを閲覧するのは難しく、「和婚」という言葉の初出を求めるのは容易ではない。でも流れでみてみると、どうやら「和婚」という言葉が出始めたのは2004年前後。どうりで巫女バイトをしていたころ(2002年まで)は聞いたこともなかったはずだ。
そして気になるスタイルの詳細はというと、必ずしも神前式とは限らないようだ。日本の伝統を重んじる、という意味での「和」で、大正天皇(当時は皇太子)の結婚式以降に普及した神前式はもとより、それ以前の一般的な挙式スタイルであった人前式も対象となっている。
人前式。確か90年代から良く聞こえるようになったと把握しているが、私の記憶にある人前式は「伝統を重んじる」というよりも「キリストや神様ではなく親しい人々に愛を誓うあり方」としての挙式スタイルだ。一般にウェディングドレス型だったと記憶している。そのまま披露宴会場にもなる洋式施設で、新郎・新婦は洋装に身を包み、テーブルに置かれた誓約書にサインを交わす。立会人は書類にサインしたり、拍手したりとさまざまな方法で結婚の承認をする。しかし「和婚」の場合は、同じ挙式スタイルでも「宗教的なこだわりのなさ」ではなく「日本の伝統」を前面に出してアピールする。衣装が洋装から和装にひっくり返っただけでそうなってしまうのは面白い。確かに人前式の洋装を和装にし、テーブル席の会場を座敷に変えただけで、時代劇に良く出てくる武士の祝言の出来上がりだ。
なるほど人前式をも対象としているとすると謎が解ける。最近お馴染みになってきた人前式は洋装のイメージだけど、和装でもできるよ、しかもそれって日本の伝統に即しているよ、という流れで持っていってるのか。とすると伝統への回帰というよりは古さを匂わせながらも全く新しい方法の提案と考えられる。挙式スタイルのアウフヘーベンは「和婚」によって成就されるとでも言うべきか。…自分で言っておきながら、「なんか違う」と思うが。
さて本当に流行っているのか、という面に関しては、これまた「ゼクシィ」の調査資料がある。読者に対して行い、2007年10月にまとめられた資料によると、首都圏にて06年に行った挙式形式の一番人気はキリスト教式で68.7パーセント。人前式は14.2パーセント、神前式は14.9パーセント。一番新しい07年のデータは(ただし3月までの3か月間)キリスト教式69.8パーセント、人前式15.3パーセント、神前式12.4パーセント。ちなみに04年はどうか。キリスト教式74.2パーセント、人前式15.2パーセント、神前式8.2パーセント。地味に追い上げてきているといえるのかどうか。いずれにせよ、キリスト教式人気はまだまだ健在。
ただ、この数値では「今」流行っているのかどうかが、実はわからない。実際に挙式として目立ち始めるのはブームが来ておよそ6か月後から。そう、式場予約から成婚まではじつに半年の歳月が流れるのである。さらに神前式で話題を呼んだ藤原紀香の結婚式が2006年12月。それに触発された花嫁たちの結婚式は2007年6月以降。結婚式場に直接取材しに行ってみようか。とりあえず今度結婚する3組の友人カップルがどんなふうに挙式するのか見てみよう。本当に身の回りが結婚ラッシュである。そんな年頃なのか。ちなみに誰も関心を持たないだろうが私自身はたぶん結婚をしない。第一に面倒だから。第二に苗字が変わるのが嫌だから。私の本名は左右対称でデザインとしてとても美しいのだ。(小松朗子)
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