ベアハッグ、侮り難し
1970~80年のプロレスにおいて、ベアハッグは強烈な技の1つだった。古くはブルーノ・サンマルチノ、もう少し後だとアンドレ・ザ・ジャイアントが必殺技として使っていた。
ただ相手の腰に正面から手を回し、空中に持ち上げて締め上げるという単純な技だけに、いまいち派手さがない。アンドレほど大きな男が相手を締め上げると、それなりに痛そうだったが、プロレスが好きだった私もこの技が効くとは思っていなかった。だいたい友達同士でプロレスごっこをしても、まったく痛くない技だったし……。
ラリアートで一世をふうびしたスタン・ハンセンが、この技でドラム缶を潰
したという話を聞いた時は驚いたが、それでもパイルドライバーや卍固めほどはインパクトを持たなかった。
しかしである。
四十を前にして、いきなりベアハッグは大変な技なのではないかと感じた。事の発端は水曜日の昼。地方から出てきた友人と昼食を食べ、さて会社に向かおうと思ったら、徐々に気持ち悪くなってきたのだ。朝からなぜか下が水状だったので(ご飯食べていたらごめんなさい)、悪化したのかなと思ったら、なんだか気持ち悪くて動けなくなってしまった。
少し休めばどうにかなるだろうと、レストランでしばらく待ったが回復しない。皆、予定があるのでとりあえず店を出て解散したが、下はピーピーだし、気持ち悪し、頭痛いしで、わずか数駅なのに電車に乗る自信がない。タクシーなんかすぐ吐きそうで怖くて乗れない。
病院に行こうとも思ったが移動ができないとなれば、救急車しかない。おかしな話だが病院に行くためには、とにかく症状を抑えるしかないという結論にいたった。
しかたなくマンガ喫茶に駆け込み、リクライニングシートで休息を取っていると、数時間して頭痛と吐き気が収まってきた。そろそろ大丈夫かなと思って起きあがると、なんと今度は背中と腹が痛い。しかも胃が痛いというより、周りから締め付けられている感じがする。
これはベアハッグではないか!?
数十年ぶりにいきなりプロレス技を思い出した。腰といわず、脇腹といわず、胴回り全体が痛い痛い! ウエストが10センチほど引き締まったような気さえする。そうこうするうちに痛みに釣られるように、また吐き気が!
ここで思い出したのが友人からのアドバイス。気持ち悪いの吐けないときは、炭酸ジュースを飲んでゲップをするとかなり楽になるよ、と。実際、その数時間前には劇的な効果を発揮したので、身体を引きずってフリードリンクコーナーに行き、コーラを取ってきて個室で一気に流し込んだ。
当然、ガンガンゲップが吐き出され、いくぶん気分がよくなってきたのだが、直後にジュースで腹が膨れ猛烈な激痛に襲われることに。ただでさえ腹に圧迫感があって痛いのに、ガスで膨らませりゃ、そりゃ痛くもなるかと思ったがあとの祭り。リクライニングシートで体をくの字に曲げて悶絶することとなった。もう痛すぎて歩くことすらできない……。
このとき痛みと闘いながら、頭の片隅でベアハッグの効果を見直した次第だ。いや、シンプルだけど、きっとこの技は痛いと。実際、熊にハグされてギブアップしたレスラーがいたとか聞いたこともあるけど、もっともだと。
まあ、そんなことを思い出しても仕方ないのだが……。
その後、少しだけ回復したのを見計らい、マンガ喫茶から編集部に駆け込み、すべての仕事を拒否してイスで寝続けたのでした(ウィルス性かもしれない病人が編集部に仕事しないのに逃げ込むってのも、会社としては迷惑な話だと思うが……)。で、結局、終電まで待っても電車に乗れるほど回復せず、翌日の昼にやっと自宅にたどり着いた。
いや、ベアハッグ恐るべしっていうか、この病気が怖いのか。医者行ってないので、病名は分からんのですが……。唯一の救いは編集部でも家族も同じような病気になってないこと。とりあえずウィルス性ではなかったみたいです。ホッ。(大畑)
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