靖国神社を訪れる中国人
2002年から月刊「記録」誌上で『靖国神社』という連載を続けている。
靖国と聞くと、今でこそ「戦争で亡くなった人が祀られているところ」とか、「A級戦犯が祀られているところ」と答える人が多いかもしれないが、私が連載をはじめたころは小泉前首相が靖国へ参拝すると言い始めた(言い始めたというより、8月15日靖国参拝は選挙公約だった)ときで、さほど靖国に対する関心は高くなかった。 中曽根元首相の公式参拝以来、8月15日の首相による参拝は、中国との外交関係にひびが入るということで見送られてきた。
とはいえ、参拝をしないからといって反日感情がなくなるわけではなく、かといって煽られるわけでもない。小康状態が続いていたのがこれまでの靖国に対する双方の接し方だった。
しかし、小泉前首相在任期間中の靖国参拝は年を経るごとに注目されるようになり、国民からの関心が寄せられるようになってきた。
その一番のピークが、2005年の中国各地における反日デモと、日本の若者による嫌中感情と愛国心がぶつかったころだ。
当時は日本ではなく香港に住んでいたため日本での状況や反応はあまりわからなかった。しかし、一時帰国をしたときは必ず靖国へ取材に行っていたが、反日デモ以降の靖国参拝人数が明らかに増えていたのだ。
靖国をテーマに書き続ける私にとって、靖国神社がどのようなところなのか積極的に知ろう(動機はなんでもいいが)とする姿に、歴史を知ることはよいことだと思う反面、複雑な気分になった。
それと同時に靖国問題に触れた書籍が山のように出版され「靖国問題ブーム」が起こった。
ここで靖国問題について書くと非常に長くなるので書かないでおく。
以降、小泉元首相の任期終了まで「靖国ブーム」が続くが、安倍政権発足後は中国との関係正常化を優先し、靖国参拝は見送った(安倍元首相自身は、首相になるまで8月15日に参拝をしていた)。
以降の中国との関係は安定していたが、先の重慶で行われたサッカー東アジア選手権でのブーイングやラフプレーを見るとあまり変わっていないようにも感じる(重慶という場所がよくなかったのかもしれない)。
靖国に話を戻すと、靖国ブームも過去の話になった現在、平日でも多かった若者の参拝客が減り、代わりに意外な人たちの参拝が増えて来たのである。
ある日、いつものように取材へ行くと団体参拝者がいた。近くを通ると、聞き覚えのある言葉。
そう、中国語。中国からの参拝客が度々訪れているのだ。
初めて見たときは驚いた。あれだけ騒ぎ立て日本大使館にペットボトルを投げ入れていた国の人たちが靖国にいる。あれだけ騒がれたのだからどんなところか興味が沸いたのだろうか。靖国神社ってどんなところだ、と。 とはいえ彼らは境内で騒ぐわけでもなければ、爆竹を鳴らすわけでもない。おとなしく参拝している。
彼らにどのような意図があるかはわからないが、自分たちの同胞を殺した人々が神として祀られているところへ自ら赴くという姿勢に民族の違いを感じた。
ただ勘違いされては困るが、そういう面だけを見て、中国人はフトコロが広いと援護をしているわけではない。どのような感情を持ってにせよ、自ら進んで見に行くというところは日本人にはない意識である。これは中国が戦勝国だから…っていう理屈は抜きにしてね。そろそろ日本も過去の呪縛から解き放たれてほしいと切に願う。(奥津)
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