« 毒入りギョーザ事件で本格化するフードデバイド | トップページ | 冠婚葬祭ビジネスへの視線/第6回 仏教葬儀屋―仏教家族葬の会 »

2008年2月 9日 (土)

『吉原 泡の園』第54回/そして自己破産へ

 Tさんが飛んだ後、仕事の多くを僕1人でやらなければならない日が続いた。Tちゃんにしても、他の先輩方にしても一向に手伝ってくれる様子はないからだった。
 グループ幹部が集まり、グランドオープンに向けて打ち合せをしている日が続いた。僕は、この頃が1番つらかったかもしれない。

 忙しい毎日に追われ、自分の事まで手が回らないようになると、借金をしていた数社から、いよいよ督促を受け始めた。
 ときに女性からも電話があるが、女性だからといって甘いわけではなかった。
 今までの人生観を180度変えられた。女性は甘いから、ある程度のことは許してくれる。それが僕の甘ったれた持論だった。ところが吉原では女性が花形スターであり、ボーイは影の存在なのだ。許してなどくれない。それにくわえて借金取りの女のキツイ言葉遣い……。
 もう、女性というものに対してかなりの失望感を味わい、現実の、生身の女のいやらしさを知った。今まで男同士で騒いでいた猥談など、一体なんだったのだろう、と思うくらい価値観が変わったのだった。

 借金の相談に四谷三丁目まで行くと知った店長は
「俺も随分そこの弁護士会の連中には警察に連れていかれたもんだよ」
 などと笑えない冗談を言ったりしていた。
 厳しい金銭からやりくりした30分で5000円。とにかく弁護士に相談するだけで、相談料がかかるのだ。スターやアイドルとお話しをするような感覚だった。
 壁で仕切られた部屋の入り口に名札があり、僕はF弁護士の名札を探した。ノックして中に入ると、背の小さな、温厚なおじさんが座っていた。
「どうも」
 F弁護士はそう言って僕を椅子に促がした。
「で、カード何枚お持ちで、いくらの借金があり、現在の収入はおいくらくらい」
 冷静沈着、すごい腰の据わりようだ。僕のように、理解できなくなるととりあえず騒いぐタイプとは違うみたいだ。
「え、えっとですね…」
 僕はありのまますべてをお話しした。すると、即決と言おうか、考える前に。
「うん、自己破産しかないね」
と言われた。
「あのぉ、債務整理とかの法的措置の余地はありませんか」
 僕は恐る恐る聞いてみた。
「ないです」
 これまた即決だった。
 肩を落としたと同時に、これで借金地獄から開放、いや、返済地獄というのが正確だろう、返済地獄からの開放だ。と安堵する部分もあった。
 弁護士が入れば、ほぼ裁判所の免責はおりるが、万が一おりなかったら、と少しは不安もあった。

 2002年度の自己破産者数は実に21万5000件以上である。これには驚いた。
 これだけ多くの人が借金で苦しんでいたのかと。
 もちろん不順な動機での借金もあるだろうが、1回だけは国の制度でいわいるチャラになる。

 そしてまた、その制度に目をつけた悪質業者がいることを忘れてはならない。
 破産をした当の僕でさえ、広告などを見ているとあたかも破産するのは危険だから、この制度を利用して。などという謳い文句を目にする。それは更なる泥沼化を引き起こす要因である。
 例えば破産すると障害者扱いになり、戸籍に登録される。などまったくのデタラメであり、そうした不安を煽ることで、一本化の融資を持ちかける悪徳業者がいる。
 オレオレ詐欺が横行しているが、久しぶり詐欺、私私詐欺など、あの手この手で悪徳業者はあなたを狙っている。そしてその中には恐らく僕のような人間もいるだろうし、Tさんのような人間もいるだろう。しかし、バックには暴力団という傘があることを忘れてはならない。

 ただ、一概に暴力団だからダメ人間という簡単な問題でもない。そこでしかいきられない人種もいて、それらに助けられる吉原の人種もいたりするのだ。
 問題は詐欺などの凌ぎをする人種ではあるが、僕がマネジャーに逆らえなかったように、暴力団同士でも中々言えないこともあるようだ。ならば、自分の身を守ることができるのは、そうしたさまざまな知識を得て、広げ、関わるか、関わらないかを判断する力を養うことが必要ということだろう。
 自分の価値観だけの世界で奢らずに、多くの世界を知り、知識を広げ、考えることが想像力として思いやることに繋がるのではないかと、悪徳業者の広告を見ていて感じたのだった。(イッセイ遊児)

|

« 毒入りギョーザ事件で本格化するフードデバイド | トップページ | 冠婚葬祭ビジネスへの視線/第6回 仏教葬儀屋―仏教家族葬の会 »

『吉原 泡の園』」カテゴリの記事

コメント

体を鍛えると同時に知識も大切だと思いました。いくら力あっても詐欺に騙されるんじゃ話しになりませんからね。知識も武器の一つだと思います。私も知識を高めるため本を読むようにしてます。最近は歴史物にはまってます。

よかったらブログに来て下さい。

投稿: ゆうた | 2008年2月 9日 (土) 23時17分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/122338/40057107

この記事へのトラックバック一覧です: 『吉原 泡の園』第54回/そして自己破産へ:

« 毒入りギョーザ事件で本格化するフードデバイド | トップページ | 冠婚葬祭ビジネスへの視線/第6回 仏教葬儀屋―仏教家族葬の会 »