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2008年1月 6日 (日)

冠婚葬祭ビジネスへの視線/第1回 僧侶派遣のもたらすもの

 9月にドラマ「死化粧師」が始まってから毎日曜日に連載させていただいていた「死化粧師」を見る」も、ドラマの終了とともにその役目を終えた。これからは皆様に葬儀の実際を少し知っていただきたく、初回は最近話題の「僧侶派遣業」について書いてみたいと思う。

 僧侶派遣とは、葬儀や法要の際に僧侶や寺院を宗派・予算にあわせて紹介し、菩提寺のない方でも一般的な仏式葬儀・法要ができるよう場と人材をととのえるものだ。儀式を施行する僧侶とはその場限りでのお付き合いとなるため、葬儀後に檀家としてお付き合いをする必要がない。ただ、これが横行すれば寺院が葬儀屋の下請けと化してしまう恐れがあると、眉をひそめる向きもある。
 とある派遣業者のホームページを見ると、戒名が与えられず俗名で通夜葬儀一式を執り行うと20万円。戒名料は5万円からご相談。通夜のみ、告別式のみ、火葬場のみ、法事ではそれぞれ3万円。他の業者では火葬場にて葬儀を済ませる炉前葬儀も行っており、これが6万円。
 地域や宗派によってお布施の相場が違うので安いかどうかの判断は差し控えるが、かりに菩提寺がなく更に俗名葬儀で良いというならそもそも仏式で葬儀を執り行う必要性がどこにあるだろう。たぶんどこにもなく、「葬式と言えば仏式かと思って」なんとなく仏式葬儀をみんな選んでいるのではないだろうか。結婚するときは神様に永遠の愛を誓い、死んでいくときは仏様によろしくねと言うのが宗教にこだわりのない一般的な日本人のスタンダードである。僧侶派遣はそんな流れの中で自然に生まれたビジネスであろうが、これが全国に広まってゆき、日常に浸透すると「葬儀イコール仏式」という図式が日本人に完全に根付いてしまうかもしれない。それが良いとか悪いとか言っているのではない。ただ、不思議だな、と思うのだ。宗教を儀式のみもしくはそのもののように扱い、コードに変換してしまうというのは面白い性質だな、と思うのだ。

 かつてその宗教性というよりはファッション性によって結婚式のスタンダードは神式(実はこれも100年くらいの歴史しかないのだが)から教会式になった。まさか「子孫繁栄を氏神やイザナギに誓うよりも二人の愛を神様に誓ったほうがいい」と考えて教会式にすることはなかなかあるまい。大概はウェディングドレスを着たいから、お洒落な教会で式を挙げたいから、ということに依っているだろう。なおリクルート社「ゼクシィ」など婚礼雑誌の登場によって様々な挙式の種類、披露宴の方法が一般人にもたらされ、自分たちらしい結婚式の形を探すことが可能になった。披露宴で言えば少し前に流行したレストランウェディング、ハウスウェディング、ガーデンウェディング。挙式で言えば海外でのリーガルウェディング、教会でのブレッシング式など、いろいろありすぎて決めるときにかえってわずらわしいほどだ。
 葬儀にも婚礼と似通ったことが起こらないだろうか。
「今年こそ親父が逝きそうだから今月号の「フューヌ」(架空葬儀雑誌)を買って帰ろう」
「やっぱお葬式は海外で身内だけで、がいいよね」
 今はまだギャグにしか聞こえないけれど。(小松朗子)

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コメント

新年とっくにあけていますが、昨年よりこちらを拝見することができ、今年も楽しみ&学びに参りました。今年もロムらせていただきたくヨロシクお願いいたします!
ドラマを地域がら映りが悪く見ることが出来ずにいたのを、小松さんが毎回ドラマからの見解や経験を綴ってくださり、最終話に近づきシリーズがなくなってしまうのを寂しく感じていました。
がしかし昨今老いを感じ始めてきた私にとってためになるシリーズ、いつか訪れるであろう身内の法事のためにも、語りによって知る現実もあるかもしれないと今後とも期待しています。

投稿: ぶんぶん | 2008年1月 8日 (火) 03時57分

ぶんぶんさん
あけましておめでとうございます。
早速お読みいただきありがとうございます!
こちらの記事を書くことで、いつもは葬儀から遠くにいる一般の方々にも参考になる情報を届けられたらと願っています。
今年もなにとぞご愛顧のほどよろしくお願いいたします。

投稿: 小松 | 2008年1月 8日 (火) 09時42分

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