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2008年1月11日 (金)

大ヒット『白豪主義オーストラリアと反捕鯨』の恐怖

 ここ数日、インターネットの動画掲載サイト「You Tube」で公開された『白豪主義オーストラリアと反捕鯨』が大きな話題となっている。「家畜を育てることは他の何よりも地球環境を破壊する」と書かれた日本語と英語の字幕で始まる映像は、とにかくウマくつくられている。撃ち殺され木の柵に吊されたディンゴの死体や子どものカンガルーを踏み殺す映像などを、効果的な字幕と音楽に合わせて見せつけるのだ。

 捕鯨問題にかんしてはクジラを神様のように奉る欧米諸国の反応にゲンナリだし、科学的な数字をいくら示しても話し合いにならない国際捕鯨委員会(IWC)にも、私は呆れている。そのIWCさえ、毎年10%に生息数が増えている鯨を、どうして捕まえていけないのかはサッパリ分からない。
 またミンククジラ捕獲に反対して、「(捕鯨)監視の必要があれば、軍を派遣して追跡する」などと、国会議員が物騒な発言をすることも許せない。

 だから食べるためでもなく、絶滅危惧種であるディンゴを殺戮するオーストラリア人の行為を、捕鯨と比べてどちらが残酷なのかと映像で主張するのは大賛成だ。
 しかし「人種差別を正当化するために鯨を使ってもいけない」と字幕を映し、捕鯨反対の根源にあるのはオーストラリア人の「白豪主義」だと主張するのには反対だ。まして、その証拠であるかのように、有色人種を殴りつける同国の人種差別暴動の写真を並べるセンスが信じられない。

 ミンククジラ捕獲に彼らが反対するのは、ミンククジラのホエールウオッチングが同国で盛んであることも大きな理由の1つらしい。クジラの個体識別までしてウオッチングしている彼らにとって、自然で暮らしていようがクジラはペットだと。

 かつて東京ディズニーランドのシンデレラ城前にいた鴨を見て、思わず「おいしそう」とつぶやいてしまい、同行した女性から冷た~い目で睨まれたことがあった。彼女も青首鴨は大好物だったが、ディズニーランドの鴨は「別モノ」だという。季節は冬でまるまると肥えていたというのに……。

 まあ、これと同じような感覚を、オーストラリア人はクジラに抱いてるってことだ。自然相手の勝手な「お友達ゴッコ」と食文化なら、食文化に圧倒的なアドバンテージがあると考える私は、それでも捕獲すべきだと考える。だが、人種差別が反捕鯨の根本原因だとは思えないし、重ねて言うが、捕鯨問題に人種問題を絡めようとは思わない。

 それは人種問題が非常に危険だからである。どんな問題であっても人種問題に結びつけることは難しくない。実際、あらゆる差は人種問題と結びつく。

 セルビアで取材をしたとき、僕ら一行にお茶をごちそうしてくれた陽気な老人はゲリラ兵だった。彼は夕日に照らされた緑の丘を眺めながら、隣人のアルバニア人を攻撃したと躊躇なく語った。
 戦争前は挨拶を交わした時間もあっただろう。同じユーゴスラヴィア人として互いの差が気にならなかった時代もあったはずだ。しかし、その「差」が強調され、人種問題として認識され、互いの緊張感が増せば、あっさりと殺人が起きる。

 「かつて殺人とは人を殺すことではなく、仲間を殺すことだった」という認識は現代でも通用する。だからこそことさらに人種を強調し、互いを敵だと煽るような行為はやめるべきだ。(大畑)

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コメント

大畑様 こんにちは
久々に家に帰ったところ、手紙がきていて返事が遅くなり、まずはコメント欄にて、お返事いたします。
後日改めて新住所等送ります。

投稿: イッセイ遊児です。 | 2008年1月11日 (金) 16時12分

既に改訂版(Ver1.1)が出ています。二重基準や偽善をやめよというメッセージがより明確になっていると思います。
人種差別の指摘は、それが差別CMのルーツだと主張するために不可欠だからです。
豪州人は差別CMについて釈明せよというのが作者の本意だと思います。

投稿: おせっかい | 2008年1月15日 (火) 10時26分

主張の是非はともかく、これは結局、日本人は捕鯨問題を人種問題に曲解しやがった「クソ野郎ども」と思われるだけでしょうね。これで日本に理解を示す人よりも反感を示す人のほうが増えるんだろうなあ。

投稿: うーん | 2008年1月15日 (火) 21時13分

日本にも人種差別はある等々の結構穏健な書き込みを私は幾つかしました。
二重基準などは厳しく追求すべきかと。屈服は逆に国際信用をなくすと捕鯨協会も警告しています。
「窮鼠」は「猫」を噛まないと助からない気がします。

投稿: おせっかい | 2008年1月18日 (金) 20時18分

>「人種差別が反捕鯨の根本原因だとは思えないし」
。某動画に寄せられたオージーと思われる方からコメントを見るとどうもそうは思えないんですが。日本以外でも捕鯨をしている国はあるのに、なぜ日本だけを相手にするのでしょう?人種的偏見を持っていなくて、どうして日本人串刺しCMを作れるんでしょうね。

投稿: ささ | 2008年1月20日 (日) 15時43分

 皆様、コメントをありがとうございました。
 オーストラリア人の中に強烈な人種差別主義者がいることは知っています。普段は温厚な南米系アメリカ人の友人が、「どうしてもオーストラリア人だけは許せない」などと、彼らの差別意識に怒っていたのも聞いてますし……。ただ、全員がそうではないし、その部分を強調して捕鯨問題を論じるのは賛成できないのです。
 ここのコメントのようにきちんとした意見が出されるなら、二重基準についてこのビデオのような形での批判もありでしょうが、おそらくこのビデオは感情的な反感を増大させると思うのです。「あなたのしていることは人種差別的ですよ」という指摘と、「あなたたちはもともと人種差別主義者でしょ」という指摘はかなり差があると思いますので……。
 おせっかい様の指摘された改訂版(Ver1.1)も見てみました。以前よりは人種問題に対して抑制の利いた表現でした。でも、やはり怖いなと感じました。
 捕鯨問題がここまでこじれているのは、クジラに対する欧米人のゆがんだ感情が発端であり根源でしょう(そこから二重基準に発展したとしても)。だから理屈が通じない。そこに、さらに理屈の通じない人種差別問題が強烈に被さったら、とめどもなく対立は先鋭化します。
 そんな危険な臭いを、僕はかいでしまうのです。

投稿: 大畑 | 2008年1月27日 (日) 23時24分

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