« テラ豚丼と『ひとり起つ』 | トップページ | 『吉原 泡の園』 第45回/吉原百景 »

2007年12月 7日 (金)

どうして出版したのか?

「どうして『あの頃』を出版したのですか?」とたずねられたことがある。「あれぐらいのことを体験した人は、それなりにいると思うんです」と。あまり考えたことがなかっただけに、その質問には驚いたが、逆にどうしてなのか本気で考えることも、それなりの意味があるように感じた。

 18歳で彼をガンで亡くし、25歳のときには親友も死亡。自暴自棄だった時期もあり、奇妙な宗教に誘われた経験もある。『あの頃』はそんな小林さんの自叙伝である。
 たしかに小林さんの人生はメチャクチャ大変だが、世の中にはもっとヘビーな生き様もあろう。少なくともさらに不幸な人を探すことはできたように思う。もちろんブログで人気が出たことも出版した要素の1つだが、決してそれだけではない。

 いま考えれば、彼女の肝の据わり方が出版を大きく近づけたように感じる。とにかくノンフィクションで本を出版するのはラクではない。過去の事件については当事者の見解や記憶が違っていることもしばしば。もちろん事実と違うなれば、それなりの問題が生じる。裁判までいかなくとも、怒鳴り込まれるぐらいの覚悟は必要だ。
 さらに事実だとしても公表されたくない人だっている。私も既婚女性の恋愛について取材したときには、取材が終わり原稿が上がってから取材した女性に泣きつかれ、仕方なくボツにした経験がある。
 こうした雑多な問題を自身で引き受ける気構えを持って、自身の人生をつづるのは並大抵のことではない。ヘタをすると、書籍に出てくる親類・友人から総スカンを食う可能性がある。

 それでも本を出版したい。実名も顔もさらして、自分の人生から得た教訓を同じ悲しみに沈んでいる人に訴えてみたい。そんな小林さんの気概に編集部の面々がほれてしまったのかもしれない。
 その意味で小林さんの著作は、ネットでの人気を背景にしたとはいえ「事実を基にした」と言いながら著者の正体が全く謎の携帯小説とは一線を画する。

 ノンフィクションの書籍を中心に出版しているためかもしれないが、小社とおつきあいのある著者さんは、皆がっちりと現実と組み合っている。そうした環境で働けていることに、改めて誇りを感じた。

 そんなわけで、ここからは宣伝ですが、小社の出版している書籍も読んでいただければ嬉しく思います。(大畑)

|

« テラ豚丼と『ひとり起つ』 | トップページ | 『吉原 泡の園』 第45回/吉原百景 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

人間ってとかく自分を不幸にしたがるものだと常々、思っています。
人生を幸せと思うよりも不幸だと思う方が簡単だからだと思うんです。
でも、それ(不幸)を自分自身、受け入れられた時に人は光りを放つんでしょうね。

何だか支離滅裂的な事を書いてすみません。
大畑さんの気持ちが凄く伝わってきました。

投稿: うたたん | 2007年12月10日 (月) 01時51分

うたたん 様
コメントをありがとうございました。たしかにその通りですね。けっこう大変な経験をした方でも、「でも、けっこう幸せだからさ」と笑える強さを持つ人に、何だか惹きつけられますから。そんなことを思いながら、自分は日常を小さな不満をグチったりするわけですが……(笑) まあ、精進ですかね~。

投稿: 大畑 | 2007年12月12日 (水) 12時20分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/122338/17292730

この記事へのトラックバック一覧です: どうして出版したのか?:

« テラ豚丼と『ひとり起つ』 | トップページ | 『吉原 泡の園』 第45回/吉原百景 »