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2007年12月15日 (土)

『吉原 泡の園』 第47回/生き方の流儀

 人生で大切なのは何か、金にしても、名誉にしてもその人が大切だと思ったものが1番なのだろうか、たとえ東大を卒業しても、食うに困る人生では仕方がない、東大のような名誉ある大学にいかなくても、普通よりも金を得て、楽しく暮らせることが大切と思えばそれが大切か。吉原流。
 吉原の価値観で言えば、人生カネ。そのためには人の意見や噂などお構いなし。という後者の考え方が当てはまる。
 僕は基本的には吉原にどっぷり漬かって生きてきたわけでもなく、これからも上(社長)を目指すつもりも無かった。そこらへんの考えの違いが、マネジャーの怒りをかう原因にもなったのだろう。
「あれやったか?」
と頼まれごとを聞かれ、
「一応終わりました」
 などというと、その一応という言葉が大嫌いで、非常に怒り出す始末。
 今、金があり、これからも恐らくそれは変わらないという人生は、それなりに不安もなく、深く物事を考えないでも済んでしまう。
 あまり考えないとは恐ろしいことである。まず人の気持ちを考えない。
 フロントには会長の5か条なる、人生成功の大事な言葉が掲げてあり、そこには人の気持ちを考えろ、とある。
 しかしマネジャーはそんなもの微塵もない。俺が嫌ならやめろ。ただそれだけだ。
「今まで、こんな風にキレまくって、怒鳴りまくったし、喧嘩も売りまくった、けど、ここに来るボーイは誰も言い返さないし、喧嘩にもならねえ」
 とマネジャーは僕に言った事があった。が、この人とは確かに喧嘩にもならないのだ。要するに、自分の考えをしっかり持つのは良いが、それを強要する所があり、議論の余地もない。それにああ言えば暴力で、そこに付け入る話し合いの余地はない。
 しかしそれはマネジャー1人ばかりがわるいのではないと思ったのだった。
 在日韓国、朝鮮の親の元、温かい親子関係とは言えない日々と、日本社会での偏見、差別、学校の先生すら放棄したマネジャーという人間の存在。それらが帰結した形として、吉原ソープのマネジャーがいたのだ。
 だから、有名一流大学よりも、友達よりも、家族よりも、このマネジャーにとって1番大事なのは金だったのである。
 金があればNOとはいえない、言わせない。それが日本という国では、あるいは差別の中では大事なもんだと感じていたのだ。
 学校教育ですら金でどうにでもできる。家族が無くとも金があれば腹も満たせる。
 知り合いが無くとも、金があれば結婚までこぎつける。それがマネジャーの価値観なのだった。
 所が、金を得るためのソープで金も手に入っていない。金で思い通りにしようにも、ボーイはマネジャーを恐れ距離を置く。そうしたことが小さな言動ですらマネジャーを刺激し、すぐにキレさせるという風な人格にさせていったのだと思った。
 つまりは大人達のつくった社会やシステムの被害者でもあるのだ。
 その被害者はさらなる被害者を生む。それが下っ端の末端ボーイであり、社会底辺の掟のように定着してしまっているところに問題があったのだった。
 それでもここ吉原には次から次へと人が寄ってくる。
 それは客として寄り、従業員としてでもあり、花魁という立場としてでもある。
 従業員はこれでもかというくらい出入りが激しく、これでもかというくらいにどこかから沸いて来る。
 ただ、ここは吉原ソープである。一筋縄ではいかない者が最後に辿り着く、まさに人生の終着駅と考える者も少なくない。
 ヤクザすら勤まらないヤクザ者、刑務所を出たら、まずは吉原と考えるものが来るのだ。僕のようにレンタカーに揺られて、のん気に陽気に来るものなどみむである。後にして考えれば、刑務所などを出てくる人などに対しても、僕の態度はかなりふざけて見えたのではないかと思う。(まあ、僕はかなり真剣だったが)
 つまり、その世界のルールなどこれっぽっちも知らないで来たのだから、どう思われても仕方が無いのだった。
 僕と同じ出身の日本最大の暴力団の元組長が、関西を生活の拠点にした際、劣等感だったのが、
 1 関東出身者という後ろめたさ
 2 刑務所の経験が無いという事
だったという。
ならばその当時の僕も、やはり刑務所も少年院も経験が無く、周りの人間は実にそうした出が多く、ひそひそ話しを聞いてみれば、 
 どこどこの刑務所の刑務官とやりあった。などという馬鹿げたものだった。
 馬鹿げたものではあるが、話しが出来ないのは何だか牙をぬかれた男、という感じもして非常に居場所が悪かったことを思い出す。(イッセイ遊児)

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