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2007年11月17日 (土)

『吉原 泡の園』 第42回/電話で客を呼べ!

 突然Rグループの打ち出したバスツアーという企画の客集め担当を命じられた僕は、上がった客にバスツアーの話をすることから始めた。上がってきた客には、まずアンケートをしてもらう。
 アンケートは初めて来店された、あるいは、その娘にはじめて接客を受ける客にたいして用紙アンケートをしてもらうのである。
 冷たい麦茶を飲みながら、アンケートを書いてもらう。それが終わると、日々変わる金の値段や築地の魚のように変わるRグループの娘のアルバムを、その日のアルバムとして客にみてもらい、次に繋がるようにするのであった。
「ほー。こんなコもいるんだ」
 客はアルバムを見るときはそれこそ真剣で、結婚相手を探すかのような眼差しでもある。綺麗なドレスを着ての撮影では、実物よりも数倍は綺麗に見える。
 毎日見ているボーイの僕ですら、
「こんなかわいいなら」
 と思ってしまうほどだ。ただ、現実はまた違うのだが。
 アンケートの内容は他愛の無いものだった。
 即サービス、すなわち即尺はあったか、即ベッドはあったか、などというものであった。
 もちろん、そこで無かった、に○があれば、マネジャーに呼ばれ再教育と減給である。であるから、娘達は一生懸命にもなるのであるが、客の第一印象とイメージが違った。などという中々合点というわけにはいかないのも現実なのであった。普段の名刺を渡し、また自分に電話を入れてもらえるように営業をする。同時に新しく作った派手な名刺も渡し、バスツアーの話をする。
 結婚している人なども結構話しだけは聞いてくれたり、またはしばらく考えてから返事をするといったことをいってくれるのだった。
 銀座、横浜、海外など、流行の発信地を職場にする客も多かった。
 昼間など電話をして、
「新しい娘が入りましたよ」
 などと電話もする。その時のポイントは
「まずは新人情報を○○さんに1番にお知らせしようと思いまして」
 というのがポイントである。客も、1番に教えたかった、といわれれば悪い気はしないのである。
「R店と申しますが」
 とほぼ毎日電話する。それも100人くらいの自分の客にである。
「え、R?」
 始めは仕事モードの客も、すぐにR店を思い出し、本来のドスケベ親父の本性をあらわす。
「ああ、ごめん、はいはい」
「今、大丈夫ですか、電話?」
 などと聞くと。
 「ゴメーン。今会議中」などと断られることがほとんどだ。が、ここで諦めたり、ショボクレル暇はないぞ。そんなことをしているとマネジャーの怒鳴りが飛んでくる。店長の怒りの言葉が飛んでくるのだ。
 とにかく電話電話なのだ。そして、毎回電話するのは金もかかる。そんなときは店長直伝のやりかた。
 ズバリワン切りである。
つまり、ワン切りで番号だけ相手の履歴に残る。それを見た相手がかけてくる。もちろん電話代は向こう持ちになる。これを直伝した店長はなんとずるがしこいのだろうとつくづく感じだ。また、これに似たことで、気に食わないボーイがいると、給料日数日前にいじめにいじめて、給料を払わせることなくボーイを飛ばせるのだと豪語していた。その浮いた給料はもちろん自分の懐にはいるのだ。もちろん、これは犯罪である。
 が、もともとが指定暴力団山○組の関係店なのだ。それをいうのは野暮というやつだった。
 1日100軒に電話をする。そのうち1人来てくだされば良しという感じである。
 まあ、下っ端ボーイはそんなものである。
 とはいってもマネジャーですら呼びたい客を簡単に呼べるものではなかったが。つまり、意外と難しいのである。
 そんな激しい電話合戦の中、Eさんなどはほとんど自分の客もなく、またあっても呼べない、電話もしないで、かけるふりを演じるのだった。
 義理もいかない、客も呼べない、要は使えないEさんの肩身は、日に日に狭くなっていったのだった。
 娘自身も営業電話するのだが、これがいかんせんダメであり、やはり頼りになるのはボーイといった感じだった。キャバクラはキャストが命と言うが、ソープだってそうだ。ただ、それを支え、客をうまく騙すのもボーイの仕事で、ようは騙せるかどうかなのだ。僕は半分詐欺師になり、半分清掃員であり、ウエイターの仕事をするような感じであった。
 そこにバスツアー、面接官助手、店の代表代理としての公的機関での付き合い、夜逃げやもどきなどと、次から次へと人手不足ゆえにどっと僕の肩に荷が押し寄せてくるのだった。(イッセイ遊児)

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