亀田一家をほめたたえる
何といっても亀田である。「亀田家」と書くと名門のようで「亀田一家」とすれば博徒に読める。当記事は亀田史郎氏および息子の三兄弟を絶賛するつもりなので「亀田家」で通そう。
『少年チャンピオン』07年11月1日号で板垣恵介氏が「さすが悪ガキ大毅 君は一流の取材対象だ!」とのコメントを寄せている。やはり一流の表現者の目線は違う。その「取材」第一歩となった「史郎&大毅&金平某の謝罪みたいな記者会見」では主に史郎氏の天才ぶりにうならされた。
パフォーマンスなどのこれまでの言動について史郎氏は「今はちょっと分かりません」と発言するもギラッとカメラをにらんでいる姿から「何がパフォーマンスじゃ!」と非言語コミュニケートしているのがアリアリ。ここが「11ラウンド前の反則は指示したのか」との質問に対する伏線となる。史郎氏は「指示はしていません」と明確に否定してしまった。日本ボクシングコミッション(JBC)は反則を促すような指示があったと認めているにもかかわらずである。
もちろん本当に反則を指示していても公の場では認めづらい。だから否定はわかる。だったらパフォーマンス云々の質問に対して「そうです。パフォーマンスが過ぎました」と言っておけばいい。だからあの「指示」もパフォーマンスの行きすぎだと落ち着く。
しかし史郎氏はそれすら事実上認めない。となるとマジであんな指示した上に反則とは認識できない男というレッテルを貼られる。ホンマものの凶暴親子である。そうだと満天下に示した時点ですばらしい。
会見での大毅選手の丸刈り&憔悴無言および翌日の内藤大助選手へのアポなし謝罪と興毅選手の謝罪談話とJBCへの電話での陳謝は合わせ技一本。要するに肉声で「ですます」レベルの丁寧語使用さえ聞かれたくないとの作戦だ。まさか会見で「内藤、悪かったな」とはいくまい。亀田兄弟的には反則は許されても丁寧語はタブーなのだ。それをみごとに貫いた。
金大中韓国大統領(当時)訪朝による南北首脳会談までの金正日北朝鮮総書記をほうふつとさせる。とにかく肉声を封印することで「聞きたい」ニーズを高めるのだ。この兄弟だと「亀田 敬語を使う」だけでスポーツ紙の一面が飾れる。
憔悴は慶応病院での安倍晋三前首相会見を思い起こした。亀田家は荒っぽく、安倍前首相はていねいにと口調に違いはあるが勇ましい言動大好きという点で共通する。それより何より「最後の最後は放り投げる」というポリシーが重なって美しい。
丸刈りというのも深遠だ。そもそも武蔵坊弁慶が関西出身なのにわざわざ「浪速の弁慶」とするのに強いフェイク感を覚えていた上に丸刈りにされると興毅選手と見分けがつかない。事実あの映像を最初にチラッと見た時には「何で興毅の方がいるんだ?」と驚いた。亀田家自体がフェイクの領域にあるなかでのフェイク感。なかなか出せる味ではない。
これだと将来予測される興毅選手のタイトルマッチで反則負けしたらどうするのだろうか。興毅選手はフライ級へ上げるため王座を手放しており、同門対決を避けるならば内藤戦しかありえない。ポンサクレックが王座奪還しても難敵に変わりはない。上記のごとく亀田家は反則との認識なく反則すると認めているのだから反則負けとなろう。すると処分が下る。
大毅選手はフサフサから丸刈りにできたけど興毅選手は元来丸刈り。すると謝罪会見ではかぶり物をしてきて「オレも丸刈りにしたかったけど元々そうやから被ってきたで」となるのか。それとも将来の丸刈りに備えて今から生やすのか。興毅選手の髪の毛から目が離せなくなった。「興毅 長髪決意」「興毅 長髪で挑発?」の見出しをデイリースポーツは待っている。
少し話がそれた。世間では史郎氏を「諸悪の根源」扱いしているも本当は「諸芸の原点」ではあるまいか。1965年生まれの42歳。ほぼ同世代の私は亀田家の練習風景の映像を笑いをかみしめなければ見られない。史郎さん。お互い梶原一騎にハマってたんだね。でもあなたはすごい。それをそのまま息子に当てはめて世界王座まで取らせたのだから。パクリと批判する向きにはオマージュだと言い返されたい。オマージュ?オマージュだって(笑)。
現在進行形で亀田家は協栄ジムとの関係ももめているらしい。解雇されたらボクシング界から事実上追放との報道もあるが何のことはない。亀田ジムを作ればいいのだ。だって興毅選手はすでにして皆が忘れかけているけれど元世界王者なのだから慣例では比較的容易にジム会長へなれるはずだ。その下に大毅選手と和毅選手が属するのだ。
そう!亀田家にはまだ和毅選手がいる。何の根拠もなく三兄弟最強と流布されている和毅選手が。「三兄弟最強」のフレーズに意味があるのかとの論争を論壇で巻き起こしかねない和毅選手が。日本の学齢主義ではまともに通学しなくても中学まで卒業できるのだと証明して悩めるいじめられっ子に希望を与えた和毅選手が。
大毅戦の後で自信喪失との報道もあった興毅選手ゆえ引退してジム会長も悪くあるまい。ひそかにマナーの勉強をして、ある日突然引退会見を信じられないほど丁寧な口調でさわやかに行ったら風向き一挙に逆転だ。
亀田人気は視聴率は取ったがボクサー志望者はかえって減りボクシング人気にはつながっていないとの指摘もあるがとんでもない。亀田家は内藤大助というスーパースターを誕生させたではないか。何しろ「国民の期待」を(ファンの期待ではない)今や担っている。「内藤になりたい」ムードでボクシングブームがやってくる。来るべきポンサクレック戦の興行権は国費で買い取るべきとの国会決議が共産党を除く圧倒的多数で採択される勢いだ。いやはや亀田はすばらしい。(編集長)
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コメント
途轍もなく、おもしろかったです。
編集長さんの独自の視点には
ほとほと感心させられます。
今後も楽しみにしています。
投稿: 巻太朗 | 2007年10月24日 (水) 12時43分