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2007年10月22日 (月)

『私は偽悪者』・ 山崎晃嗣と堀江貴文と/牧野出版代表・佐久間憲一さんに聞く

「もし偽善者という言葉に対して、偽悪者という言葉があるならば、彼こそ真の偽悪者だと思います」
 牧野出版が去年4月に出版した『私は偽悪者』の冒頭に置かれている文言だ。
 文言の主は1950年に『私は偽悪者』(青年書房)を編集した佐藤静子、「彼」であり同書の著者である山崎晃嗣の愛人だった人物だ。つまり、牧野出版が今年出した『私は偽悪者』は、50年以上前に出版された同書の“復刻版”。
 著者の山崎晃嗣は1922年生まれ。東京大学在学中の1948年に高利貸し会社「光クラブ」を設立し、派手な広告、「人より数字を信用せよ」の信念で会社を爆発的に成長させた。しかし、当時の法定利息を上回る金額を貸しだしていたことで逮捕される。保釈は得たが信用を失い、債権者に約束した金を工面できず会社の自室で青酸カリ自殺を遂げた。
 なぜ今になって彼の著作が“復刻”されたのかと疑問に思われるかも知れない。答えは牧野出版が出した同書のオビを見れば一目瞭然だ。
「元祖ホリエモン!? 劇場型人間、山崎晃嗣の問題作復刊。」
 今回の“牧野バージョン”では底本(オリジナル)にプラスして、書の終わりにライブドア元社長・堀江貴文と山崎晃嗣との共通性を検証する項が設けられている。つまり、時代は違えど同じく金が飛び交う舞台で、一瞬ではあるが異常な輝きを放った2人の人物に焦点を合わせた1冊なのである。
 山崎晃嗣の「自伝」的な要素も含む本書のメーンは50年以上も前に姿を消した光クラブの興亡なのだが、読み進める間にもその背後に現代を生きる堀江貴文が見え隠れするような気がしてくるのだ。

 本書に企画段階から携わった牧野出版代表の佐久間憲一さんは、派手な買収劇を打ち、「既存のメディアを殺していく」というハッキリした物言いで世間の耳目を集める堀江貴文を見て、「これは山崎だなぁ」と思ったという。
 構想を練りだしたのは05年の秋頃。もともと光クラブ事件や山崎晃嗣という人物には興味があったが、青年書房刊の『私は偽悪者』を読んでみようと思い、国会図書館に足を運んだ。
「とても面白かったんですよ、実際に読んでみて。ホリエモンと山崎には何とはなしに類似性を感じていて気になってはいたんですけど、読んでいて確信は深まりましたね。後は、読み物として単純に面白かった。これは出すべきだろう、と。確かに法定金利をオーバーしてたことはありますけど、頭脳を駆使して独力で立つ姿勢、『他のいまだ成し得ざりしことをなさん』という信念は良い悪いではなく興味深い人物なんですよ」
 メディアでは「拝金主義者」などの大バッシングを受けた堀江貴文だが、佐久間さんの中には「彼がやっているのは本当に叩かれるべきことなんだろうか?」という思いもあった。
「確かに、粉飾決算という形で一線は越えてしまった。これは叩かれてもしょうがないでしょう。ただ、それ以前に彼がやってきたことは、逮捕以前では“ラインギリギリの創意工夫”でもあったわけです。面白いのは、新聞なり雑誌なりのメディア媒体として出されるものには『堀江許すまじ』といった色合いが濃かったんですけど、個人個人でメディア関係者に話を聞くと、案外彼らも『本当にそこまで叩かれるものなのかな』といった感じなんです。」
 しかし、結果的にほとんどのメディアは堀江を悪者として断罪した。見方によってはただ、バブルのように堀江叩きが盛り上がっていっただけのようにも見える。粉飾決算よりもこっちのほうがずっと恐ろしい、と佐久間さんは言う。

 冒頭で佐藤静子が書いているように、山崎は『偽悪者』なのだろうか。確かに山崎自身が「おれは悪党だ」と言っている下りが本書にもあるが、その真意は今となっては確かめようがない。
 過激な発言と、違法と合法の間で輝きを放った両者だが、こんな存在にどこかあこがれを抱いてしまう人は少なくないだろう。堀江の後に、山崎を彷彿とさせる人物は必ず現れるだろう。
 そのとき、私たちメディアはどのようにして「偽悪者」を受け入れるべきなのか。(宮崎)

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