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2007年9月 8日 (土)

『吉原 泡の園』 第33回/義理風呂を堪能した男

 僕には行く場所がない。辛抱するしかほかに道がなかった。それはほかのボーイも同じだったのである。ただひとり、マネジャーを除いては。
 この人は、まるでキレまくることにより、自分を奮い立たせているかのようでもあった。 
「この世界はなぁ偉くならなぁ意味がないんや、そして、偉いもんが絶対の世界や。金だってそうや。ボーイではたかがしれとるが、社長になれば、月何百、何千だって夢じゃあねえ」
 それがマネジャーの理論だった。
 事実、僕のいた店ではないE店の社長クラスでは月数千万という金を懐に仕舞い込むことが出来た。
 店長クラスでも500万である。
 E店の幹部達は、天狗になり、歩き方もどこか肩で風を切り格好よい。
 乗っている車もベンツのトップクラスのものである。靴から服、時計にいたるまで、すべて高級品である。きっと、マネジャーも金で妻と子を失う人生を歩んできただけに、金に対して執着心も強かったのだろう。くわえて在日韓国?か朝鮮だった彼は、その親がパチンコ屋の経営をしていたそうだ。そしてやはり金で苦労したその姿を見てきたのだろう。
 学校も普通の学校では先生が、
「私には手に負えない」
 とさじを投げ、とうとう通信教育で義務教育の過程を過ごし、そのまま愚連隊的な事をしていてここにたどり着いたのだ。だから、迷うものなどなにもないのである。
 そんな彼を生かしてくれるのが暴力団員だった人で、だからマネジャーの会長に対する思いは半端ではない。
「ええか、吉原のソープのボーイ。それは人生の終着駅や、今までいろいろやって、最後に辿り着くのがここや」
 と言いきったのである。
 僕はここはあくまでも社会勉強でしかなかった。いや、社会勉強というと聞こえはいいが、楽して稼いでさよならしようという考えだった。マネジャーとは対極の思想なのである。

 さて、義理風呂はそのようにとても厳しい決まりの中、慎ましく、ボーイ達にとってはまさに罰ゲームでしかないのである。
 堅気の世界で生きている、男にも女にもあまり相手にされない諸君よ、義理を羨ましがってはいけない。
 時間が少しでも長いと、どつきまわされる勢いで怒られるのだから。僕の場合、言葉でどつきまわされているし、事実、大の大人が頭をパチンと叩かれたりするのだから。

 そんな厳しい中でも、唯一そんなことに屈しない男がいたこともいたのだが。
 先輩のEちゃんである。彼は密かに泣き虫Eちゃんと揶揄されていた。
 店長の甥がR店でバイトをしていたことがあるらしい。店長も甥には甘く、マネジャーも店長の甥だから下手に怒れない。
 いつも二人はつるんでいた。
 ある朝、Eちゃんがトイレに入って大をしていると、その甥が
「おい便所まだかぃ」
 と我慢しきれずドアをドカンドカン叩き、Eちゃんは恐れおののき、泣きながら出てきたそうだ。それから泣き虫Eちゃんという渾名が、密かなEちゃんの呼び名になった。
 マネジャーも、その甥とはよく店が終わった後、送迎者で近くの上野などのネオン街に繰り出したそうだ。もちろん、店長の甥である。随分おごってやったそうだ。いつか自分に帰ってくることを信じて。
 ところが、その甥はやりたい放題騒いで、またやりたい放題大威張りし、最後には飛んだそうである。
 さんざん金を使ってやって、最後裏切られた形になったマネジャーの部屋は、そんなことが理由で、穴ぼこだらけなのである。
 つまり、殴ってあいた穴なのだ。それも恨みや妬みというスパイスも効いている。実に恐ろしい穴だった。
 そんな泣き虫Eちゃんも、義理風呂にいかされるわけだが、Eちゃんは泣き虫という渾名ではあるが、意外と大胆でもある。
 義理は先述のように遅くても50分くらいから60分で帰るものである。所がEちゃんは、きっちり90分、風呂に入ってくるのであった。
 これにはマネジャーも姉妹店のボーイも開いた口がふさがらないのだった。
 女の子には、清純派、学生風、癒し系、サービス派、ビジュアル系などさまざまなその女の子を形容する肩書きがつけられる。
 だが、男だっていってみればいくつかのタイプに分かられる。その中でもEちゃんはいわゆる“好き者派”なのである。要するに、Hが好きで好きでいつもポコチン全開野郎なのである。とにかく育った環境なのか、遺伝子からうけつがれたものなのか、Eちゃんは暇さえあればポコチンをいじっていた。
 それはスーツをビシッと来て、高級店である我が店内で客をじっと待っているときなども、Eちゃんをチラッと見ると、やっぱりポコチンをさわっている。
 もちろん、いやらしくすごいスピードで擦ったりはしない。だが、指先2本くらいを駆使して、触れるか触れないかの微妙なタッチを堪能しているのだ。その顔は変態そのものである。が、どこか憎めない変態顔なのだった。(イッセイ遊児)

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