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2007年8月13日 (月)

西巣鴨・子ども置き去り事件の現場を歩く

Nishi  1988年7月18日の朝、東京都豊島区のあるアパートの大家から巣鴨署に「家賃が滞納になっている部屋に子どもだけが住んでいる」との届け出があった。
 巣鴨署員と福祉事務所の母子相談員が訪れた後、この「西巣鴨置き去り事件」が発覚する。母親(40歳)が同年1月から家を空けたまま行方知れずになって帰らず、長男(14歳)、長女(7歳)、次女(3歳)の3人の子どもだけがマンションの1室で暮らしていた。巣鴨署員が家の中を見てまわったところ、押入の中からは1歳ごろの赤ん坊の腐乱死体が発見された。赤ん坊は母親が家にいたころに死んだが、死亡届けも出生届けもされないまま押入に入れられていた。子どもたちは出生届も出されておらず、当然学校にも通ったことはなかった。

 母親は生活費約20万円を置いて去ったあと半年以上、このマンションに帰っていなかった。生活費は現金書留などがたまに送られてくる程度だった。
 発見された兄弟は全部で3人だったが、赤ん坊以外にもうひとり2歳の女の子がいた。女の子は4月、「おなかがすいた」と騒ぎ出したため長男と中学1年生の友人3人に殴られるなどしているうちに意識を失い、その日か次の日あたりに死んでいる。遺体は長男が埼玉県秩父市の羊山公園にある雑木林に埋めていた。

 発見されたとき、2人の女の子はキッチンで毛布にくるまって眠り、長男は電熱器でみそ汁を作っていたところだった。ガス、電話は止められていた。部屋は異常な臭気で満たされ、トイレのドアの外まで大便が転がっていたという。
 生肉や生米を食べ、電気・ガスも止められ、水風呂に入って生活していた。3歳の次女は栄養失調状態だった。
 母親は高校時代から歌手を目指していて1966年にはデビューもしている。しかし人気が出ることはなく約2年で辞めている。20歳のころ駆け落ち同然で一緒になった最初の結婚相手は事件発覚の10年ほども前に借金を作って蒸発していた。実家とも絶縁状態だった。その後はデパートで洋服の販売をしていた。
 失踪後は新しい男のもとにいて子どもを見捨てたことになるが、保護・逮捕された後、長男は「おかあさんはどうなるのだろう」と言うなどして母親をかばったという。

 発覚当時は隣人のことさえ分からない、興味がないという「大都市の病理現象」などと報道された。
 同じマンションに住みながらなぜ気付かなかったのか、という非難やいやがらせが他の住民に押し寄せられ、引っ越していった世帯もあった。その一方で子どもたちへの励ましの手紙やおもちゃ、送金も全国から相次いだ。

 この事件は04年公開の映画『誰も知らない』(是枝裕和監督)のモチーフになった事件としても知られる。
 映画の中で長男役を演じる柳楽優弥が、川沿いを歩いてコンビニに買い出しに行くシーンが頻繁に見られるが実際にはコンビニは彼らが暮らしたマンションの1階にある。
 JR大塚駅から10分も歩けばそのマンションにたどり着く。かなり車通りが激しい通りに面している。マンションの中に入るとすぐステンレス製のポストと階段がある。建物の中は薄暗く、通路のリノリウムを歩くと急速に温度が下がったのを感じた。
 置き去りにされた子どもたちがいた部屋の鉄製のドアの前に立つが、中に人はいないのか廊下には物音ひとつ届かない。現在は有限会社が部屋を使っているようである。
 1階のコンビニは事件当時から現在までずっと「ミニストップ」である。部屋の配置からするとコンビニの真上に彼らの住んだ部屋がある。当時のコンビニの店長と長男は顔見知りだった。どんな頻度で店を訪れていたのかなどは分からないが、買出しで訪れる店の店長と顔見知りであるのはなんら不自然ではないように思える。事件発覚当時の新聞記事を見ると、男の子とは顔見知りだったが子どもだけで状態で暮らしているとは知らなかった、という店長のコメントが載せられている。このコメントを読んで、本当だろうか、と私は首をひねった。置き去りにされていた期間は半年以上なのだ。半年あれば髪が伸び、洗濯機も使えない状態で衣服はよごれていったはずだ。まったく少年の置かれた境遇の「異変」に気づかなかったとは少し考えにくい。

※ここから先の記事は…

『あの事件を追いかけて』(本体952円、アストラ刊)にてご確認ください。

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コメント

私は、なぜこの事件を映画にしたのか、正直腹ただしいです。
当事者達は、忘れているはずなのに。。
長女、次女はもしかしたら、自分たちの事かもって、気づいてしまったかもしれない。
自分たちの金もうけの事しか考えていないと、腹が立ってます

投稿: くま | 2007年11月 9日 (金) 16時00分

確かになぜ映画化したのかわかりません。

ただ映画化した監督の方には、この事件を知った時、わかる所があったのではないでしょうか。
この映画について『シネマ坊主2』では、その著者松本人志さんが、目線が低い感じの撮り方から、監督自身、あまり裕福ではなかったんじゃないか、というようなことを述べていたと思います。
彼女たちが知ったときどう感じるのかは、わりません。

投稿: あさ | 2008年6月 8日 (日) 16時19分

是枝監督に実際にお会いしたことがないのでどういう人柄なのかは分かりませんが、この監督はこれまでの作品を見ても一般的に言う「社会的」な視点に重点を置く方のようなので、単に金儲けのために制作したとは思えません。

くまさんやあささんがいうように、長女、次女、次男については考えるところはあるでしょう。が、それを考慮したうえでも世に問う価値のある作品と思えたから題材として取り上げたと思われます。
創作とはそういうものではないでしょうか。

公式サイトに映画を観た方からのメッセージが掲載されています。
一度フィルタリングされているかもしれませんが、基本的に賞賛も批判も載せられているようです。
http://www.kore-eda.com/daremoshiranai/messages.htm#

公開後に視聴者のメッセージを集めて掲載できるようなところは、ウェブ時代の賜物ですね。

投稿: 宮崎 | 2008年7月12日 (土) 11時22分

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