深夜のマル秘編集部レポート
深夜3時。ネオンはきらめかないが、一部だけ眠らない街・神保町。その一角に月刊「記録」編集部がある。 そしてそこに、男と女が二人きりで泊まっている。
男の方は、不惑も近い最近は徹夜も辛い大畑。そして、女の方は仕事が終わらずやむなく泊まりの奥津。
これまで何度も一夜を共にしてきた二人。彼は私の寝相やいびき、麻呂のような顔も知っている。そして私は彼のいびきや、少し薄くなってきた頭皮のことも知っている。
狭い編集部内で男女二人きり。二人きりといったら起こることはただ一つしかない……だがここは職場である。 二人とも既婚者でいい大人だ。モラルもある。にもかかわらずアクシデントが起きてしまったのだ。
* *
奥津が大畑に誘いをかける。手には銀に光るポーチ。中から出てきたのはニンテンドーDS。
そう、奥津は大畑の邪魔をするべくゲームを出してきた。ソフトはぷよぷよ。
ぷよぷよしたものに目がない大畑は、奥津の目論みどおり興味を示した。しかし、彼にはやらなくてはならない仕事がある。「うぅ……どうしよう」小声でつぶやきつつ、結局は「ぷよぷよ弱いから早く終わるかもー」と喜んでエサに食いついてきた意志の弱い大畑。
そして二人のぷよぷよプレイが始まった。
「おじゃまぷよを相殺してフィーバーにするんですよ」「ふっふっふっふ。フィーバーだー!あーっはっはっは」
と二人はプレイにのめり込む。
早く終わると言っていたにもかかわらず、なかなか終わらない。あっという間に5ラウンド。奥津も、「さすが大トリをつとめる人は格が違いますね~」と感嘆の声。 しかし、でかぷよにやられてしまいフィニッシュ。それにしても不惑に近い男にしてはすごいスタミナである。 クリアという目標の前に倒れた大畑の意志を継ぎ奥津が続きをプレイする。
しかし、7ラウンドで撃墜。やはり若輩者には偉大なる大畑先輩の足下にも及ばないということを改めて思い知らされた。
思う存分プレイしたあと、急に「ビリーやろう」と言い出した大畑。まだスタミナは切れていなかったようだ。肉体年齢は若いのだろうか。
そして二人でビリーをやり始める。やり始めるといっても、DVDはみていない。二人で適当にやっているだけだ。しかし、ビリーのあの無駄なテンションと、軽快なダンスミュージックがないといまいちノれない二人は早々にやめてしまった。
ふと二人の戯れから現実に戻った大畑は、「やばい、仕事をやらなければ! ……でも、まずはお菓子を買いに行こう」とまたしても欲望の渦の中へ飛び込んでしまった。
そして二人で近くのコンビニへ行き、プリンとお菓子を買う。帰りがてらおもむろにお天気占いを始める大畑。 仕事でせっぱ詰まっているはずなのに、「あー、明日は晴れだー」と無邪気な声。
そして、「奥津さんの履いているサンダル。投げ心地よさそうだね」という声に、やはり先輩の言うことは聞かねばならないと思った奥津がサンダルを投げた。
その瞬間、サッカーボールのように大畑に蹴られてしまった。なんて嫌な先輩。
「ひどいわ……オヨヨヨヨ」と泣く奥津。なんていたいけな女なんだ。「いじめるなんて僕ちんが許さないぞ!」という声など、夜中の神保町にはあるはずもなく先輩に虐げられる奥津と、お天気占いプレイに満足した大畑は無事に帰社し仲良くプリンとお菓子を食べましたとさ。 おしまい。ちゃんちゃん。
後日談。ブログをアップした直後大畑は寝てしまった。そして私は帰ることにした。(奥津)
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