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2007年6月11日 (月)

ルポ・第116回日商簿記2級検定試験

 日商簿記2級の試験を受けた。日本商工会議所が主催する検定試験である。
 簿記とは簡単に言えば、企業や商店の経営活動をお金の計算による面から整理し、損益計算書や財務諸表を読み解き、作成する手続きのことである。事務・経理のための資格だと思われがちだが、それ以外にもコスト感覚を養うために営業や経営管理など広い分野の人が受けるそうだ。
 3級、2級、1級の順に難易度が増し、06年度の受験者数は全国で50万人に達する日本最大規模の検定試験である。
 私は事情あって今年の4月から大原の夜間の講座に行きながら2級の勉強を始めたのだが、始める前は「たかが簿記」と思っていたものである。しかし取り掛かってみるとそれなりにボリュームはある。3級は独学でとりあえず「抑えた」つもりだったが、3級の商業簿記の内容がより深くなる。学習内容としては、現金預金や売掛金の仕訳など初歩的なことから、繰越利益剰余金の配分、複数仕分帳制、手形の不渡り、社債の発行や償還などいよいよ実務的な内容に踏み込んでいるという感じである。それに加え、2級からは工企業における原価計算などを内容とする工業簿記が入る。
 この工業簿記の最初の講座で「仕掛品」という用語が出てくるのだが、工業簿記では空気のように当たり前の存在であるこの「仕掛品」の意味が分からずに「え、仕掛品て何? なんでみんな平然としてるの? それって一般用語なの?」とひとりで焦っていたものである。
 そんな感じで暗中模索でありつつも、なんとか本試験1週間前には合格点をクリアできるかどうかの境界線上にまではこぎつけることができた。

 そして昨日6月10日に第116回、簿記検定試験が行なわれた。
 私が割り当てられた受験場所は大きな体育館のような場所。集合時間30分前には到着したのだが既にびっしり並べられた机にはほとんど人が座って最後の追い込みをかけている。机の数からすると300人は入りそうである。男女比はおよそ5:5。二十歳前後から60代のおじさん、おばさんまで本当に幅は広い。その中でも最も多い層はやはり20~30代の女性である。
 自分の受験番号の机は前から3列目だった。隣にはすでに良きお父さん風の受験者が問題集を広げて追い込みに入っている。受験場には緊張感が漂っていて、いたるところから電卓を叩く音が聞えてくる。
 集合時間である1時30分になると注意事項の説明が始まり、問題用紙と計算用紙の配布がはじまった。問題用紙を開けてはならない、とは言われなかったがなんとなく皆開かずにいる。が、お構いナシにペラペラめくる者も遠くで見られた。
 開かなくても問題用紙の中が透けて見えた。部門別原価計算と標準原価計算の差異分析が問われている。得意分野だ。いけるかもしれない。試験は100点満点で70点合格。20点の配点が5問である。そのうちの2問が工業簿記なのであるが、工業簿記のほうが難しいと一般的には言われる。その工業簿記に得意分野が出ているのだ。
 ただ、私には「地雷」があった。復習の時間が足りず、「本支店会計の内部利益計算」と「伝票会計の変則パターン」という2つの項目を「捨てた」のだ。「地雷があるかないか、それが問題だ……」などとハムレットにかけてクフフフと忍び笑いしてるうちに試験が始まった。我がマシンガンでこの簿記戦場を生き抜けるだろうか?

 問題用紙をめくった。駆け出してすぐに、恐怖の対人地雷・クレイモア(伝票会計の変則パターン)が仕掛けられているのが分かった。すでに避けるできない体制になっていた。

「あ、終わった」

 イセエビのヒゲのようなセンサーに右足が触れてクレイモアが弾けたように見えた瞬間、中に収められた小さな鉄球が爆散して、わたしは蜂の巣になってしまった。(つまり解答用紙に穴が空いてしまった)
 70点以上を取れば合格。そのうちの1問で蜂の巣になってしまえば残りの80点のうちで70点を取らなければならなくなる。もはや絶望的だ。それでもなんとか他の問題に取り掛かる。20分過ぎには早くも隣のお父さんの手が止まり、ため息が聞えてきたのだった。
 会場中に電卓の音が響いている。30分経ったが途中退室する者はほとんどいなかった。
 2時間の試験時間終了後、5枚の解答用紙を1枚づつ集めるという効率の悪い作業の後、ようやく解散となる。安堵の表情、失望の表情、再チャレンジを誓う表情などがみな一緒になって出口に向かったのだった。

 付け加えておくと、私の自己採点は60点だった。言い訳無用、次は受かるぞ。(宮崎)

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