「おフランス」的文化の壁は高し
『ちびまる子ちゃん』の漫画を英語に翻訳していた知り合いが、キザな花輪くんの雰囲気を伝えるためにセリフの一部をフランス語にしたと話してくれた。なるほど英語圏でもフランス語はキザな印象を与えるんだと感じたものだ。
じつはフランス料理も、この「おフランス的」高級イメージに頼っていた時代が長かった。典型は結婚式などの演出としてフランス料理を食べることだろう。ただソースに使う野菜や料理用のワインの問題もあり、1980年代のホテルのフレンチでさえ本場の「まかない飯」クラスだったとも聞く。まさにイメージ先行である。
これがバブル時代となると、高級イメージが女性を口説くための道具に変わる。バブル期はイタリアンがブームだったが、クリスマスなどはフランス料理を食べて一流ホテルに向かうというコースが絶大な人気を誇っていた。ホイチョイプロダクションの『東京いい店やれる店』にも、けっこうフランス料理店が入っていた記憶がある。
しかし、ここ5年ほどの間にフランス料理は大きな変化をとげた。その要因となったのは安価なプリフィクス制だ。前菜2品、メイン、デザートあたりを、何品もの皿から選べるシステムでありながら、計3000~6000円の値段。
庶民感覚からほど遠い値段を請求されないし、ちょっとおしゃれ。しかもうまい!
もう、うまくないフレンチに5万円も払うようなことはなくなった。ただ、もっとカジュアルでおいしい、いわゆるビストロのようなフランス料理店はさすがに少ない。
特に居酒屋クラスの気軽なサービスを提供する店がない。なんとなくフレンチというだけで敷居が高くなってしまう国民性によるのだろう。その点、フランス人シェフがオーナーの店「ル・プティ・トノー」はスゴイ。サービスを担当する2人の外国人はまるで漫才師のよう。皿を置いては奇声をあげたり踊ったりしてくれる。とにかくお客を笑わせたいようだ。
袖が触れそうなほど詰め込まれた席で、このサービスを受けると、もしかしたらパリの街角のビストロはこんな感じかもと思えるから不思議だ。もちろん料理はおいしいが、この店の雰囲気も楽しみの1つではある。
で、ふっと思ったのが、このサービス、日本人にできるだろうか?
なんとなく無理そうな……。鴨のコンフィーの皿を運びながら、客いじりする給仕。客が引くかも……。
居酒屋の大将がそんなんでも楽しく笑えると思うのだけど。
つまり、ここ数年の価格破壊でいくらフレンチが身近になったようでも「おフランス」そのものはまだまだ遠いわけだ。だからどうしたと言われても困るのだが、ちょいとそんなことを感じてしまった。(大畑)
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