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2007年6月30日 (土)

『吉原 泡の園』 第23回/ソープ店・Rグループ内での駆け引き

 さて、店を創り、盛り立てていくのが男たちスタッフ、つまりボーイであることは分かってもらったと思う。
 ソープランドでは女の闘いが裏で繰り広げられてボーイたちは無視されがちだが、実はボーイの闘いはもしかしたら女の闘いよりもドロドロネチネチしていて、そんなボーイたちを、“女の腐ったの”と店長などは罵倒していたほどだった。
 店内だけの闘いならば、マネジャーの喝で全てが治まる。が、Rグループ全体の話になるとそうもいかない。 R店内では天下を取ったかのようなマネジャーも、姉妹店では駄目駄目R店で通っているし、そもそもここRはRグループで使えないと判断された者が最後に送られる所だと、ある女性が笑っていった。言った後、僕がそのR店のボーイだと気づき、
「いやいや、そういう意味じゃないよ」
 と励ましてくれたのだった。
 Rグループ内でも、それぞれの社長、店長が我こそが1番の社長、店長である。と黒幕の会長さんにアピールしたくて仕方がない。

 売上が全て物を言う世界で、故にE店の社長はいつもニコニコしていた。それも無邪気なニコニコではない。どうよボーイども、俺みたくならないといかんぞ。と言わんばかりだ。
 靴は常に5万以上のものを、ベルト、服、にもこだわり、社長だが絶対にネクタイはしない。白いベンツを転がしいつも声が小さいのである。
「俺なんか、あんたのその靴1つの金で、1ヶ月豪勢に暮らせる自信がある……」
 いつもベンツの話をしている姿が、どうしてもまぶしかったのだ。
 俺なんかなぁ、冷凍たこ焼きの話を死ぬ思いで考えているのに、彼はタバコも外国のブランドものを吸い、少し吸って捨ててしまうのだ。あれでおにぎりが食えたのに。
 マネジャーも自分の店がジリ貧である、そう悟られたくはないらしい。
「どうでもいいじゃん、こんな店、契約内容とまるで違うでー」
 と思うが、マネジャーは必死である。
 個人の背広屋でオーダーした銀色をベースにしたスーツ。たしかにカッコイイ。が、それは金を払える人がやればいいのだ。
 背広屋は、いつもいつも来ていた。そう、マネジャーからのスーツ代をもらいに、でもいつもいつも断りつづけていた。白髪で、禿げていて、背の小さな背広屋さん、かわいそうに、いくら位したのか知らないが、恐らくその代金はいつか踏み倒されてしまうのだろう。
「え、それこの前払ったやん」
 ととぼけられて。

 RD、B、D、E、R、G、K、と7店舗を抱えるRグループ。これほどまでに急成長したグループもない。そして、それにもかかわらず、あまりにも風俗関係者に知られないのだ。 知られないように展開しているからだ。そこには、知られざる経営のノウハウがある。
 決して大學では教えてくれない裏の経営学である。それは日本有数の暴力団直々に学んできたからこそ出来るとも言える。
 この7店舗はそれぞれ電話でやりとりし、常に相手方の現状を興味深く観察している。同じグループといえども、隙あらばよその店舗を乗っ取り、社長としても収入面での大幅アップをもくろんでいるのである。
 それぞれが織田信長といったところか。そして僕ら下っ端が足軽である。
 姉妹店から店に電話が来るときは、たいていアリバイとして立ち上げている会社用の電話にかかってくるのだが、
「はいHです」
 とマネジャーがアリバイ店の会社名をいう。
 相手が姉妹店の社長などだと、
「今どうや」
 などと聞いてくる。
「まだ口開きません」(口開きませんとは、風俗用語でまだ客が1人も来ていません。ということ)
「そっか、キビシイのぉー、何人でとるんじゃ」
 と姉妹店の社長。
「現在5名です」(待機している女の子の数)
 そしてこの時言う女の子の数も他人との駆け引きの1つであったりもするのだ。
 たとえば、ここで2名です。などと本当の事を言ってしまうと、(そうか、なら情報喫茶にそう言い、うちに客をぎょうさんまわしてもらおっと)となりかねないし、だいいち、舐められる。(フンッ、欠勤かいな、会長が必ず7人は出勤させとかなぁいかんいうとるがな)となるのだ。
 我がR店のマネジャーはKと呼ばれていた。そして姉妹店の社長さん方は、嫌味も込めてこう言うのだ。
「じゃあ、K専務。がんばってください」
 そしてガチャリと電話を切るのである。

 マネジャーもさすがに会長のような男には頭が上がらないというか、事実尊敬していた。
 それも普通でないのである。神というくらいにあがめている。しかしそれは非常に危険な思想に発展しうるし、それがいじめを引き起こす引き金にもなっていたのだ。
 マネジャーは実の親には恐らくあまり愛を受けなかったのではないか。だから、金もくれ、時にほめてくれ、叱ってくれる会長が好きなのだ。
 たまたまそれが暴力団だった。そういう感じだった。(イッセイ遊児)

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