『吉原 泡の園』 第20回 我がソープの黒幕
さて、R店の主力スタッフの話の続きだが、ここで黒幕の会長と呼ばれる人に触れておこう。
「普通のおっさん」とEさんに言われていたので、興味は抱いていたが、いつ来るのだろうと頭のどこかにはありながらも仕事(といってもドリンク運びが主だが)を始めると、中々そんな余裕もないのである。
ある日、僕が1階でいろいろ仕事をしていると、マネジャーがおっさんと話をしていた。
うるさい客が、何か言っているのかな、と思っていた。本当にぱっと見は普通のおっちゃんだったからだ。
しばらくして、Eさんが、さっきいたのが会長だよ、と教えてくれた。
「ええー普通のおっさんじゃん」
眼光は鋭いが、少し禿げかけている髪型はシチサン気味で、黒い皮パンを好み、ダイヤモンドの指輪をはめている。左小指がないものの、ぱっとみ普通のおっさんだった。
当時、僕も指輪2本、髭を伸ばしていたが、店長にそれは駄目と釘を押されたのだった。会長を凌駕する恐れのある分子は、すぐにつぶすのだ。
しかし、たまに着て来る薄手のシルクシャツなどから、桜吹雪の袖近くまである立派なモンモン(入れ墨)を見ると、やっぱり山○組だ。と怖くなる。
当時僕は太っていた。それを普通の人はデブと言う。でも会長などは「ええ体しとるのぉ」と喧嘩に利用できるものは利用しようとするのだ。よって、僕が会長に好意的な態度を示すと、きっと何か利用できるものはないかと、利用されそうだったので、できるだけそっけない態度をとろうとしていた。
7店舗のソープランドを有し、そのほかにも浅草通りの方に闇金の事務所をもっている。よって、年間黙っていても1億は固いという。そんなだからこの方、海外によく出かけるのだ。そして、その自慢話をする。
さすがにこのR店は、この会長さんの原点の店で、7店舗を持とうとも、なぜかよくR店に顔をだす。来るたびに僕はベンツのドアをあけるドアマンにされていたのだ。
「この前ハワイで3Pしたで」
そっけなくしていなければ、と思っていた僕も、それを聞いて思わず「わはははっ」と思いきり好意的に笑ってしまった。
会長は何人もいる中から笑い声の僕をパッと見て、
「ほほーっ、ワシの話で笑うとは、ええ。ええボーイやないかい。んで、名前はっと」
といわんばかりの視線を僕に浴びせていた。
(やや、やばーい。僕の馬鹿。なんで笑うの)
僕はひやひやしてしまった。
ベンツのほぼ最高クラスベンツブラバス。半ドアも自動的に車が直すというすばらしい車で、数千万するそうです。
もう一台はブルーのフェラーリでした。たまに女性を乗せて、吉原の店の前を疾走していくのです。ああ、あの車一台で、恐らく僕の夢は全て叶うのだろうな。そんな思いで見ていました。
その会長のありがたいお言葉が、フロントの中には堂々と掲げてあった。
1 人のことを羨むな
2 やる気の無いものはされ
3 まずは行動しろ
4 人の気持ちを考えろ
5 人生は賭けである
僕はその全てをまあ実行しているつもりではいた。それでも一向に暮らしはよくならない。
どんなにがんばっても報われない人生の人もいるのだ、とひがんだものだ。
人生は賭け。まあそうだけど、僕にはヤクザになってまで人生を物にしようというまでの思いもない。そんな当時の心理の僕では会ったが、信じられるのはやはり本であったし、松山千春だった。
ところで、街を歩いていて、若い男で指に緑色で指輪のように色のついた人を見たことは無いだろか、実はあれ自分で指に墨をいれているのだ。
少年院にいった子が、お互いに友達などとの誓いと称して行うちょっとした儀式らしいが、ヤクザのおっさんなどは、刑務所でやることがない。暇なので、大事な大事な男性のシンボルであるお○○○んに真珠を入れ、加工する人もいる。もちろん、刑務所に本物の真珠はない。代用品を使うのだ。
会長さんはやはり本物の真珠をいれていた。
体中加工されていて、肌の色なども真っ青で、人間のものとは程遠く、正直気持ち悪いと思った。
しかも、その入れ墨は体には当然よくはない。皮膚呼吸の妨げになり、どうしても早死にするケースが多いそうだ。
また、上半身のみでも、全体を色濃く墨をいれると、実に700万以上もかかるという。
改造費700万。自分で払うものもいるが、中には組が立て替えてくれるところもあるらしい。(イッセイ遊児)
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