« ■月刊『記録』6月号発売! 《特集・テキ屋日記》 | トップページ | イタリアのダンボール少女 »

2007年5月28日 (月)

東京のイスラム・雑居ビルのモスク

「雑居ビルの中にモスクがある」
 誰に、どういった話の流れでそれを聞いたのかは完全に忘れてしまった。けれど、モスクのことだけはずっと気になっていた。
 代々木上原の東京ジャーミィ、大塚にあるマスジド・モスクといった専用の建物がある規模のモスクではなく、ごく普通のビルの中にあるモスク。それも、東京だけでも30箇所近くはあるという。
 私が持つイスラムについての映像的なイメージは、主にニュース映像や『記録』で連載中の白川徹さんが撮ったアフガンの写真から手がかりを得て形作られている。しかしそのイメージは、当然だが日本からはるか離れた異国の地でのものだ。
 どうもイスラム教徒の像と東京の街の像がうまく結びつかない気がするのだ。イスラム教徒は全世界で10億人以上とも言われるのだから、彼らのうちのごくわずかが東京に移り住んでいてもなんら不思議ではないともいえる。だが、今やいたるところにあるカレー店や「IT技師」として認識されているインド人や中国人・韓国人に比べ、「東京のイスラム」はまだどこか輪郭がぼんやりしている気がする。

 動機は十分だ。自分の目で見てみればいい。しかし、本当にビルの中にモスクはあるのか。
 手がかりはない。ガセかもなあ、などと思いながらネットで調べてみると、こんなページにたどり着いた。

http://web.kyoto-inet.or.jp/org/gakugei/kanren/gaikoku/no12/ga12009.htm

 池袋! 家から近いので買い物などでたびたび訪れる場所である。こんな近くにあったとは。記事が97年のものであるということに若干、というかかなり引っかかるものはあるが手がかりにはなる。地図で示されている池袋の西口・北口あたりは確かにどこか雑然とした感じで、ああ、あの辺りだったらなんかありそう、簡単に見つかったなあ、などと「一気に楽観的男」になってしまっていた。

 次の日、地図にある場所を訪れた。何度も歩いたことのあるあたりだったので目的地の一角までは行くことができた。が、地図にはものすごくアバウトに「モスクのある雑居ビル」が示されているので、どの建物かが変わらない。
 いくつかの商店に入り、モスクがどこかをたずねて歩くうちに、「モスク」という言葉が何を意味する言葉か分からない人が多いことに気づいた。若い人ばかりに訪ね歩いたわけでもないのだが、40代あたりと思しき旦那さんでも分からない場合があった。その一角にあるにしろすでに引越しした後にせよ、地域の人たちからはほとんど存在が知られていなかったということになる。
 一角の雑居ビルの中まで入り探してみるが見当たらない。
「モス? ハンバーガーの? え、もすく? もすくって何?」
 と、こんな間の抜けた反応が続いたので、これはダメだと思った。どうせダメだろうな、と半ば思いつつも交番で聞いてみると、以外な答えが返ってきた。
「ああ、モスクね、あのイスラムの……。ええと、ちょっと待ってね……」
 オマワリさんがビニールでコートされた大きな地図を持ってきてある地点を指した。それまで探してきた場所とは違うが、やはり駅から歩いて2、3分ほどの一角だった。住所は西池袋である。
 住所をメモし、その足で向かった。その建物はそれほど迷うこともなく見つけることができた。その一角には他に、古本屋、ソープランド、大手予備校、個人経営の古着屋、韓国料理屋、マンション、と怖ろしく脈絡のない店などが出ていてそれがなにか独特の猥雑な雰囲気を生み出していた。
 ビルの入り口にはたしかに4階にモスクが入っていることの手がかりになるプレートが備え付けられてあった。特に名前は記されていないのだが、「am5:00~pm11:00」と白ヌキの文字で記されている。これは朝の礼拝から夜の礼拝までの時間を示しているに違いない。

 外見も玄関を入ってからも殺風景なビルで、雑居というよりは入居者がいないように思われる4階立てのビルなのだった。
 4階のドアの近くにはひっくり返ったゴキブリの死骸がある。本当にここにイスラムの人たちが出入りしているのだろうか。相変わらずまったく人の気配がない。どこにでもあるクリーム色の鉄製のドアで、表札は出ていない。インターフォンがあるだけだ。
「おし、」などとひとりで呟いてから、インターフォンを押した。3度押したが誰も出てこない。物音もない。ドアの向こうにいるのがイスラム教でもかなり過激な一派で、中で異教徒禁制の儀式が行なわれていたらどうしよう、「見たからにはもう帰れぬ」などと言われ袋に詰められたらどうしよう、と極端な想像が一瞬アタマをよぎったけれど、意を決して一気にドアを開けた。■つづく(宮崎)

|

« ■月刊『記録』6月号発売! 《特集・テキ屋日記》 | トップページ | イタリアのダンボール少女 »

経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 東京のイスラム・雑居ビルのモスク:

» グーグルマップ衛星写真 [グーグルマップ]
グーグルマップの上手な活用方法について調べてみました。衛星写真、航空写真、グーグル地図の使い方、グーグルマップサイトの見方などお届けします。 [続きを読む]

受信: 2007年5月28日 (月) 09時46分

» ジョギングやウォーキングでダイエットするには [ジョギングやウォーキングでダイエット]
ダイエットの定番といえばジョギングやウォーキングですが、やはりこのダイエット方法はどんなに様々なダイエット方法が色々出てきても現在なおやはり効果的と言えます。ジョギングやウォーキングのような効果的に痩せる方法はいつになっても効果的です。blog(ブログ)の体験談や日記でも痩せた、成功したと書いている方にはジョギングやウォーキングをしている方が多いです。桂のジョギングダイエットというブログが人気があるようです。ではジョギングやウォーキングでダイエットするには時間はどれくらいすれ...... [続きを読む]

受信: 2007年5月28日 (月) 20時30分

» 表札 [表札 - 個性を生かす為のワンポイント]
自分の家の入り口にはこだわった表札を飾りたいという人のために、変わった表札の種類をいくつかご紹介します。 [続きを読む]

受信: 2007年6月 1日 (金) 00時31分

« ■月刊『記録』6月号発売! 《特集・テキ屋日記》 | トップページ | イタリアのダンボール少女 »