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2007年5月 4日 (金)

米国を働きかけられない安倍首相

 よく言われることだが、かつて米大統領はヒーローだった。正義を貫き、スーパーマンのように強い。そんな大統領像に陰りが見え始めたのがクリントン大統領だろう。モニカ・ルインスキーとの「不適切な関係」が米国民から許されたことは、古き良き米国の価値観を大統領が体現する必要がなくなったのだとも報じられた。
 それでもまだ大統領は特別の存在であることには変わりがない。クリントンは取材した記者を必ずファンにしてしまう人物として知られていたし、ブッシュでさえ演説ともなれば大歓声で聴衆に迎えられる。
 2003年11月のブッシュ大統領のバグダッド電撃訪問でも600人の兵士が大歓声をあげたという。

「鳴りやまない拍手に、大統領も感無量の面もち。『君たちがイラクでテロリストをうち負かしているから、母国は(テロに)直面しないですむ』などとたたえた。(『読売新聞』03年11月28日)

 で、安倍晋三首相である。
 1日にクウェートの空軍基地を訪れ航空自衛隊を激励した。この視察に首相はかなりこだわっていたようで、日程が過密になるとの周囲の心配を振り切って駆けつけたそうだ。

「イラクにおける治安情勢は依然として厳しく、特にバグダッドをはじめイラクへの運航は予断を許さない。500回近くにのぼる運航を無事故で達成できたのは、全隊員が一丸となった努力のたまものだ」と訓示した。(『朝日新聞』07年5月2日)

 なるほど「訓示」だ。前職で月に1回聞かされた社長の訓示を思い出した。ブッシュ大統領が感謝祭のディナーに登場し、兵士と一緒に夕食を食べたのとはえらい違いだ。自衛隊の士気ははたして上がったのだろうか? 
 ブッシュ大統領のバグダッド電撃訪問はパフォーマンスだとして批判も起こったが、逆にいえばパフォーマンスとしての意味はあった。一方の安倍首相の激励は本人以外の誰が喜んだのだろうか。

 安倍首相が考える「成果」と世間の「評価」との間に、かなりの開きがあるのではないかという不安を抱くのは私だけではないだろう。
 例えば次の発言。

「官房副長官、官房長官として築いた私の広い米国人脈は、米国との関係がブッシュ大統領だけだった小泉さんにはなかった」(『読売新聞』07年5月1日)

 本当か!? 

 今回の首相会談で懸案とされた北朝鮮の拉致問題への対応について、確かに大統領はテロ支援国指定解除について「拉致問題を考慮に入れる」と語っている。
 しかし首脳会談3日後に発表された06年の国別テロ報告書では、日本人拉致問題への記述は3分の1に削られた。
 読売新聞はこの記述の縮小について、「今回の報告書の拉致の記述が簡素化されたのは、北朝鮮に対し柔軟路線をとっている米政府が、テロ支援国指定解除に踏み出す一歩との見方もある」とも分析している。

 こうした見方を裏付けるような報道もある。
 6者協議の初代米政府代表を務めたケリー前米国務次官補への取材した朝日新聞は、彼から次のような言葉を引き出している。

「ただ、北朝鮮の核の脅威に最もさらされているのは韓国でも中国でもなく日本だ、という現実も直視する必要がある。非核化の実現には日本の貢献が欠かせないだけに、拉致問題で日本の政治家が厳しい決断を迫られる時期が来るかも知れない」

 ブッシュから叱られた軍事機密情報の管理には躍起になって取り組もうとしている安倍首相だが、日本側の懸念である拉致問題などさして真剣に取り組む気がないようだ。

 趣味の悪いピンバッジをおそろいで着けて笑っている場合じゃないかと思うが、「広い米国人脈」が自慢の首相は気に掛けることもないのだろう。
 
 毎週、彼の報道を一気に目を通すたびに本気で気分が暗くなる。日本は大丈夫だろうか……(大畑)

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