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2007年5月 6日 (日)

奨学金制度の現在に迫る(前編)

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「いざなぎ越え」などと言われる一方で、多くの自治体で生活保護の申請が増えるなど、苦しい生活状況を伝えるニュースが耳に入ってくる。
 生活の豊かさを端的かつ正確に表す指数があるわけではないから一般市民の生活が「豊か」に向かっているのか「貧しい」に向かっているのかどうもハッキリとは分からない。
 今年1月の朝日新聞にこんなタイトルの記事が載った。「奨学金返還、督促を強化 法的措置予告1万件」。記事は奨学金の返済が滞っている人が急激に増え、それを受けて滞納者に対する「取り立て」が強まっていることを伝えている。
 国民全体の生活を表すまでには及ばないが、今や大学生の25%が利用するという奨学金制度に注目することによって、ちょっと変わった角度から現代ニッポンの豊かさが見えてきそうだ。

     *     *     *

 一般的に「奨学金」という言葉が指すのは旧日本育英会、現在の日本学生支援機構(以下、支援機構)が運営する奨学金制度である。先に「大学生の25%」と書いたが、正確には支援機構が奨学金を扱う対象は政令で定められており、列記すると大学、大学院、短期大学、高等専門学校(高専)、専修学校(専門学校)である。旧育英会時には高等学校(高校)の奨学金も扱っていたが、現支援機構の創設時に各都道府県に移管された。ただ、奨学金の制度そのものは基本的に旧育英会のものを踏襲することになっており自治体ごとに特色などは出ないようになっている。

 新宿区市ヶ谷にあり、防衛庁の施設に隣接する支援機構で話を聞いた。
 支援機構の建物の中では人が慌ただしく歩き回っていた。聞いて納得したのだが、支援機構が1年のうちで最も忙しくなるのは新しい年度を迎える3月から4月にかけてであるそうだ。
 平成18年度に支援機構が奨学金を貸与した合計人数は約100万人にのぼる。
 学種別の統計で最新版である平成17年度では、全大学生約272万人のうち59万人以上が貸与を受けている。これは3.9人に1人が奨学金を受けている計算になる。大学院生に至っては2.5人に1人が貸与を受けている。
 さて、奨学金の延滞者だが、尋常ではない増え方をしている。「支払い督促の申し立て」を予告した件数が06年度は1万件を超えたそうだが、これは前年度の2倍、2年前に比べてなんと20数倍であるという。
 支援機構・制作企画部の吉田さんが言う。
「ものすごい件数の滞納なので驚かれるでしょうね。支援機構では返還を送らせることができる返還猶予制度がありますが、この制度を利用しようとしている人たちから、返済が滞る理由について01年と06年にアンケートを行いました」
 アンケートの結果を見せてもらいすぐ気付いたのは、01年度に比べて06年度では「無職・失業」を理由としている人の割合が6.5%から20.3%へ格段に上がっているということだった。
「私たちは社会の状況について語る立場の者ではないですが、奨学金を利用された人に限って言えば、社会に出た後でもなかなか生活が厳しいという実態が浮き彫りになったのではないかなと思います。滞納している人たちが悪いと決めつけるのではなく、返したくても返せない人たちにしっかり話を聞いて、その内容に基づいて返還の猶予をとりながら返していただきたいと思っています。ただ、返せるのに返せないという場合。それはこちらとしても厳格な態度で臨んでいかなくてはいけません」。 支援機構内部には返還促進課という取り立て専門の部署がある。ただ、約500人の所帯である支援機構だけではすべての返還を管理することはできない。なにしろ返還中である人は現在200万人にも達する。
 滞納金を集める業務は民間のサービサー(債権回収会社)に委託している。電話で催促をする業務や口座引き落としができなかった人のデータをまとめたりする業務である。クレジットカード会社の手法とほぼ同じだと考えていい。
「支払い督促の申し立ての予告を聞いて慌てて連絡してくる人は多いですよ。実際に督促手続きで裁判所で会ったとき、支払い能力があるという人もいます。でも、ほとんどは返還金を支払うことができない人が多いんです。厳しいんです」
 日本中の所帯のフトコロ事情が透けて見えるような何とも重苦しい結果と吉田さんの言葉である。(つづく)

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