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2007年5月 2日 (水)

アメリカ民主党は「戦後レジームからの脱却」を許さない?

安倍晋三首相が唱える「戦後レジームからの脱却」。キャッチフレーズのようだからまじめに考えるとした。
まず、ほぼ同義で自民党の議員が「レジーム・チェンジ」というのに驚く。本来この言葉を肯定的に使うのは革命勢力のはずだから。
改めて記すのも気高き読者をからかうようで何だが「レジーム」は「アンシャン・レジーム(旧体制)」に由来するであろう。となるとフランスの大革命を指す。では大革命と比較すると変な部分がある。

第一に「アンシャン・レジーム」は大革命後に「以前」を示す言葉であったが、「戦後レジーム」の方は安倍首相が「からの脱却」を訴えているぐらいだから脱却していない、すなわち今も続いている体制を意味する。
第二に「アンシャン・レジーム」は終着点はほぼ1789年でいいとして始まりがどこからか議論があるのに対して「戦後レジーム」は出発点は「戦後」というくらいだから1945年の敗戦後でよかろう。逆に終わりがわからない。

「第一」で述べたごとく「戦後レジーム」は今も続いているならば、この原稿を書いている2007年5月2日もまた「戦後レジーム」である。安倍首相が継承するとしている小泉構造改革路線も、自民党の存在もまた「戦後レジーム」となる。それらをすべて「脱却」するという使い方でもない。
だいたいの了解事項では敗戦からサンフランシスコ講和条約発効による独立回復までのGHQによる占領期に決まった体制を指すらしい。現に安倍首相は自民党解体も構造改革路線否定もしていないのだから。すると正確な言葉遣いをするならば「占領期に決められたレジームからの脱却」である。となると結構刺激的だ。
なぜならばGHQとはほぼイコール米軍であり、米軍は文民統制を受けているから米国の意思決定下にある。日米は太平洋戦争で戦って日本が敗れて米国に占領された。その結果として日本が「押しつけられた」とか「嫌も応もなかった」とする向きもある政策が指令・勧告などの形で米国の意思に沿うよう実行された。
日本を倒して戦争を勝利したのも、その日本を占領下で民主化したのも米国側からすれば「その通りだ」と定まっている評価である。そこから「脱却」するということはこの「その通りだ」からも「脱却」するという意味になる。それで日米関係は大丈夫なのか。

日米開戦から占領に至るまで米国は民主党政権だった。すなわち戦勝から民主化のプロセスは民主党の誇るべき果実なのだ。現に中間選挙勝利後にわかに米議会でクローズアップされてきた従軍慰安婦問題を言い募るのは同党だ。08年大統領選で民主党が勝ち、ほぼ同一時期に日本側が憲法改正を俎上に乗せた時、強い反発を招く恐れが十分にある。
「戦後レジーム」の頂点が憲法で、そのまたコアが9条であるのは改憲・護憲問わず一致した見解であろう。安倍首相は「ダブルトーク」と批判されたが「ダブルトーク」は米国のおはこでもある。在日米軍再編を要求しながら果実である9条改正を「歴史と平和に反する」と激しい非難を浴びせてきておかしくない国なのだ。
そこで憲法は米国の押しつけだったなんて反論したら火に油を注ぐ。短期間で国の骨格たる憲法を決めたのはおかしいといってもダメだろう。先に挙げたフランスの大革命ではバスティーユの決起から人権宣言採択まで1カ月強。合衆国憲法に至ってはほぼだまし討ちのような形で開催したフィラデルフィア会議で約4カ月で「大妥協」した結果だ。元々「レジーム・チェンジ」を必要とする場面は切羽詰まっているから、暴動・非合法・だまし討ち・妥協・押しつけなどの要素が入り込みやすい。フランスもアメリカもそうだった。

不思議でならないのは「戦後レジームからの脱却」派は、それで米国の意に沿うと、反対派は「アメリカの言いなりだ」と批判するばかりで「戦後レジームからの脱却」で米国が突如怒り出す可能性をほとんど議論しない点だ。
米国とともに戦争ができる態勢を米国の暗黙ないし公然とした要求から整えようとしたら当の米国から非難されるのは私だっておかしいと思う。では戦うか? 中国との関係がよくないなかで米国を反日に追い込んだら「いつか来た道」だ。クリントン民主党政権を思い出せばいい。貿易面で日本を叩き、政治的に中国と接近した。
米国は右手にライフル、左手に人権のたたずまいを自らおかしいと感じない稀な国家である。アブグレイブであんなことをしても日本要人の従軍慰安婦に関する発言は許さない。今は右手が優勢だが民主党政権に交代すれば左手が伸びてきそうだ。そこに米民主党の歴史的果実である日本の「戦後レジーム」を「脱却」しようなどとしたら……空恐ろしい。

これは良い悪いとか右だ左だの問題ではない。良くも悪くも日本は米国とケンカしてはならないのだ。だって中国と組んで米国とやり合おうなどと現実的に考える人は、それこそ「脱却」ご推奨の右にもいないでしょう。左にはいるかも知れないけど到底大勢になるとは思えない。間の悪い話で終わればいいが、それ以上の泥沼に陥る危険は十分にある。米国が突然「護憲」になったらどうする安倍さん?(編集長)

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