加護亜依さんはそんなに悪い子なのか
タレントの加護亜依さんがおおよそ18歳から19歳の時期、2回にわたって喫煙をしていた光景が週刊誌に報じられ、1度目で謹慎、2度目で所属事務所からの契約解除となった。
1900年成立の未成年者喫煙禁止法は第一条で未成年者の喫煙を禁じる。だから法律違反ではある。だが同法は喫煙した未成年本人の罰を定めていない。他の刑法または特別刑法にも見当たらない。すると刑罰を科すと定められていないとの一点で加護さんは「犯罪」行為をなしていない。
周知のように少年法61条は公訴を提起された少年の氏名など本人であることを推知することができるような記事又は写真の報道を禁じている。実際には公訴提起の恐れが出た時点でメディアは同法にしたがっている。だが未成年者喫煙禁止法の定めにより加護さんに公訴提起の可能性はまったくない。だから報じてもいい……そういうことなのか。
だが少年法は非行のある少年の保護を目的の1つとする。未成年の喫煙は「非行」なのか。おそらく最も近い概念は「虞犯」であろうが、そうなのか。それでいいのか。納得いく論説を私は知らない。
いずれにせよ加護さんが受けた社会的制裁は逮捕を実名で報じられるのと同等かそれ以上である。だとしたら彼女がした行為が、そうされても仕方ないほどでなければなるまい。喫煙とはそれほど悪いのか。
まず報道している側に問いたい。あなた方は加護さんのような未成年の有名人が喫煙している光景を黙認した経験が一度もないのか。後輩に囲まれている中で一服している有名高校野球選手、テレビ局の控え室でバンバン吸っている加護さんがかつて属していたアイドルユニットに似た存在を知らないとはいわせない。
加護さんは不特定多数が目撃できるような場所で吸っていたから撮られた。その点でうかつである。ただあえて「犯意」という言葉を用いるならば、うかつをもって犯意が高いとはいえない。むしろ薄いとみなすのが適当であろう。
要するにマスコミ関係者のテリトリーで行われている喫煙を、それゆえに報じず、そうでない場所だったから報じるという構図の、特に前段はおかしいといいたいのである。
次に未成年者の喫煙をことさら個人を特定して叩く意味である。道路交通法は七条で道路を通行する歩行者が信号機の表示する信号などに従う義務を科し、怠った場合は百二十一条で「二万円以下の罰金又は科料に処す」。罰則が付されている分だけ「赤信号無視」は未成年者喫煙よりも犯罪に近い。
では有名人が赤信号を渡っていたら「激写」されて該当者が謹慎だの事務所との契約解除などへ追い込まれるか。おそらく「激写」そのものにバリューがないと報道側は判断して掲載しないだろう。「その程度で悪しざまに報じても価値がない」と。もちろん報道の価値は罰の重さに比例しなくてもいい。賄賂罪の最高刑は窃盗罪のそれよりも軽いが、万引きよりもずっと大きな紙誌面が割かれる。その理由は罰の軽重以上に社会的制裁を受けるに価するからだ。
だったら加護さんは赤信号無視よりずっと重い社会的制裁を受けるべきだとなる。それが未成年者の喫煙だ。ではなぜそうなのか。喫煙に対する社会の目が厳しくなっている背景があるのは間違いない。だとすれば未成年者喫煙は信号無視よりいけない理由があるはずだ。それは何だ。私にはわからない。
赤信号無視は皆がやっているからニュース性がないが未成年者喫煙は珍しいからという点からバリューを探るのもおかしい。報道している側、それを提供されている側で未成年で喫煙した経験がないという人がどれほどいるか知りたいものだ。私は意外と法令遵守の気持ちが強く、大学に入るまで喫煙はしなかった。でも大学に入ってからは吸った。加護さんと同じ時分である。そんな人は多数いるに違いない。
高校のトイレ(「大」の方)でモウモウと煙が上がっていたので生徒指導の教師が有無をいわせず強行突破したら便器にしゃがんで一服中の同僚(教師)がいた……なんて笑い話はどこにでもあった。成人式に禁煙を誓った剛の者も珍しくなかった。私は未成年の喫煙を推奨する気なぞ毛頭ない。一方で以上のような経緯から単に喫煙していたという理由で未成年の少女を叩く風潮にも強い違和感を感じる。
国籍法は十四条で「外国の国籍を有する日本国民は、外国及び日本の国籍を有することとなつた時が二十歳に達する以前であるときは二十二歳に達するまでに、その時が二十歳に達した後であるときはその時から二年以内に、いずれかの国籍を選択しなければならない」と定めるも、実際には22歳以降も外国籍を持ち続ける日本国籍の日本人が多数いる。それを摘発したという事実を私は把握していない。それどころか誰もがペルー国籍と信じて疑わなかったフジモリ元大統領が実は日本国籍を持っていたとしてわが国は保護さえした。加護さんへの社会的制裁は明らかに行き過ぎである。
もっとも、喫煙者として……というより近年の禁煙ファシズムに対抗して喫煙を続けている私としては「加護さん。後1年我慢できなかったの?」という気もある。20歳の誕生日に記者会見して「これで堂々と吸えます」と一服したら日本中にうっ屈している愛煙家を一挙に引き寄せるアイドルになれたのにね。(編集長)
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