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2007年3月28日 (水)

■実録・コールセンター 最終回 「未来につながらない」

「詐欺だ、サギ、サギサギ!!」
 電話の向こうでおばさんがヒステリックに叫ぶ。プロバイダとの契約について納得できないのが発端だった。基本契約に含まれている事項について納得ができず、「聞いてない」との一点張りで次第に激高してしまったおばさん。手がつけられない。「少々お待ちください」とムリヤリ保留にしてからSV(スーパーバイザー)に指示を仰ぐため手を上げる。手の空いているSVが文字通り駆けつけてきて「対策」を練ってくれる。
 怒った客がよく言うのは「上司を出せ!」とか「おまえはバイトだろ、社員を出せ!」とった台詞だ。しかし、「上司を出せ!」には「申し訳ございません、電話に出た者で対応させていただいております」という対応、「おまえはバイトだろ、社員を出せ!」には「申し訳ございません、私は社員でございますがまだまだ至らない点がございます」という対応、というようにマニュアルができている。だから怒ってもお客が望むような結果にはならないことが多い。

 とにかく、様々なお客から絶え間なく電話がかかってくる。オペレーターの考えることは、次にかかってくる電話の相手が、穏やかな人で、かつ簡単な内容の案件であることだ。1日に電話を取った件数が少ないとそのオペレーターの評価もいいものにはならない。
 それでも僕がときどき思うのは、まだインバウンドはマシなんじゃないだろうか? ということだ。インバウンドとは受信業務のことだ。反対に、アウトバウンドとはこちらから電話をかける発信業務のこと。今、アルバイト情報誌を開くと、必ず載っているのがアウトバウンドのオペレーターに関する求人だと思う。某、アヒルのマスコットを登用した保険会社や教材販売の業務である。知り合いには、教材の販売のアウトバウンドは1日に5件契約がとれればいいほうだということを聞いた。1日中電話をかけまくって5件。しかも、その5件以外ではほとんど人間扱いされず一方的に切られる。一方的にこちらからかけているのだが。これを1日やるのはキチガイ沙汰のようにも思える。飲食店に比べて給料が若干いいとはいえ、僕がアウトバウンドをやっていける自身はちょっと、ない。

 企業規模が大きくなれば必然的にそうなるのだろうが、ただただ単純な、細分化された業務を延々とやっているセクションがあり、アルバイトや派遣がその業務にあたっている。僕がやっているオペレーターは時給が1500円とわりといいとはいえ、それでいつまでも生活していけるのかと言われれば、どうなのだろう。契約なので、時給1500円という時給がアップすることはまずないだろう。しばらくすると違う仕事に当たれるのか、ということは派遣にはまったく分からない。
 アルバイト情報誌などには、コールセンターの仕事について「スキルが磨けます!」などと書いてあるのを目にするが、コールセンターをやめた後、ここで得た「経験」がどこかに活かせるとはハッキリ言って思えない。研修にはけっこうな時間があてられたが、そこで学んだのはどこでも通用するスキルではなく、このコールセンター内でだけ必要な知識がほとんどだった。例を挙げればプロバイダのサービス内容を事細かに覚えたり、センター内でのルールを覚えたり、というように。
 中には、40代前後の男の人もいる。好きでやっているのならいいのだが、明らかにそうは見えない。NさんやKさんは、電話の向こうの客に怒鳴られながら、このコールセンターでずっと働くのだろうか。

 コールセンターで働いていて思うのは、経験や職場でのポジションなど、積み立てていけるものが何もないということだ。未来につながるものがない。

 コールセンターに限らず他の仕事でもある程度はそうなのかも知れないが、「割り切って」仕事にあたる人の割合は、やはりコールセンターでは多いと思う。
 4年働いているSVが言った。「お客に怒ってもしょうがないでしょ。淡々と終わらせるだけ」。淡々と終わらせても、またその次を終わらせても、やはりどこかに繋がらなければやってられないと個人的には思う。中にはこの仕事にストレスがたまらない人もいるそうだ。実際、「あんま苦じゃないよ」と言う人もいた。けれど、コールセンターに漂うあの閉塞感が、働いてる人の心情を反映している気がしてならない。

 コールセンターのルポは今回で終わりです。わずか5回でしたが、連載を通してコールセンターという仕事と働く人たちについて何か思うところがあったりしたかと思います。何かあればコメントなど書いていただけると嬉しいです。(浅野)

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