テレビ界のヤラセ体質は直らない
ブログの更新をサボっているうちに、『発掘!あるある大辞典Ⅱ』のやらせ問題がえらく盛り上がっていたようだ(そして収束しつつ……)。おそらくこの問題に最も戸惑っているのはテレビ局と番組の制作会社に違いない。
なんでこんなのが問題になるの? と。
煽るつもりはないが、テレビ番組に「やらせ」が横行していることはテレビ業界に近い人は誰でも知っている。10年近く前の話になるが、私も知人から海外を舞台にした番組でのヤラセを制作会社社員から聞いた。
アフリカだかパプアニューギニアで取材に出掛けたら、原住民がジーンズにTシャツを着ていたという。民族衣装で派手に彼らを出迎える様子を撮るつもりだったが、先進諸国と同じような衣服では絵にならない。仕方なく村民を民族衣装に着替えさせた。
ところがさらなる問題が発生する。歓迎の踊りを頼んだら「そんなものはない」と断られてしまったのだ。これもテレビではお決まりシーン。放映しないわけにはいかない。仕方なくディレクターが振り付けを考えて村民に教え、カメラの前で踊ってもらったという。
刀も提げず、着物も着ていない日本人に驚いた海外メディアが町中の人を着替えさせ、殺陣まで教えて立ち回らせたようなものだ。
当時はこんな話も社外秘ではなかった。むしろ笑い話。ただ「演出」が行き過ぎただけ。制作者側に罪悪感などあろうはずもない。この話をしてくれた当人はこのヤラセに関与していなかったが、別の実験検証番組で数値をごまかしたと話してくれた。今なら新聞で叩かれまくりだっただろう。
結局、こうした体質が嫌になり、彼はテレビ業界を離れることになったが……。
繰り返すが10年も前の話である。昨日今日の問題ではない。テレビ番組の「ヤラセ」はすでに体質である。
では、どうしてここまでヤラセがはびこったのだろうか?
テレビ局が制作会社に丸投げし、番組をチェックできないからだとの声もある。確かにそれもあろう。しかし、もっと大きな問題はテレビ局の予算配分ではないか。
キー局の年収は30歳で1000万円を超えるともいわれる。しかし制作会社は30代中頃で、その半分をもらっているかも怪しい。これが番組の下準備をする制作会社のアシスタント・ディレクター(AD)ともなれば、状況はさらに悪化する。寝るヒマを惜しんで働いて雀の涙。
いくらADが「大宅図書館」で関連の雑誌記事を集めても、時間がないから万全な調査などできない。仕方ないから「現場処理」となる。ところが取材で予定通りのコメントが返ってくるわけではない。それでも撮り直す時間や経費がない。結局、構造的にヤラセをするしかないのだ。
おかげで誰もヤラセが悪いと感じなくなってしまった。時間的・経済的に不可能な改善など実施されるはずがない。キー局の社員の給料を下げ、制作会社にカネを回せばヤラセもかなり少なくなるだろう。
じつはテレビ業界と同じような矛盾を抱えていると感じるのが原発産業だ。2002年に東京電力の自主点検データ改ざんが発覚してしばらくたった頃だろうか、原発の検査を担当していた会社の上層部の奥さんから旦那さんの愚痴を聞いた。
「あんな改ざんなんて大したことない。全部バレたら原発なんか動かせないよ」
構造的な矛盾が業界全体を覆っているとき、内部の人間がその根源に手を突っ込んで改善できるはずがない。「あるある」と最近の原発のデータ改ざん問題で、そんなことを改めて考えさせられた。(大畑)
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