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2007年3月27日 (火)

黒川の手帖

ドクター中松氏の東京都知事選立候補の報を聞き、1都民として心からホッとしている。やっと投票できる候補者が出てくれた、と。
前から何度も書いてきたように私に慎太郎はありえない。とにかくマッチョは嫌いである。作家としての石原さんは結構好きなんだけど。

浅野候補もありえないなあ。何が悲しくて宮城県知事を大東京に迎えねばならんのかという了見の狭さは……ある。あるにはあるのだ。私のようなお上りさんは故に大東京住まいを自己過大評価している。だから同じお上りさんが知事になりそうとなると同病相憎む?みたいになる。何だか都心の駅で出身地の方言を聞いたような気持ち悪さ。啄木は欣然としていたけど私は嫌だ。
もちろんそれだけではない。あの役人然がどうしても肌に合わない。「役人独特の四角い感じ」と表現してわかるかなあ。浅野候補に限らず役人は形でいうならば四角いのだ。縦と横の線で直角に空間を区切るのは造形として幼い。浅野候補はそこから脱していない気がしてならない。

吉田候補も諸般の事情で、いや1つの事情で当選がおぼつかなさそうというのがつらい。死に票とわかっていて投じるのも何だかである。だったら中松候補も同じじゃないかと口さがない?批判もありえようが、かつて本当に米国諸都市に「ドクター中松デー」があるのか国際電話(当時は高かった)で確認して本当だったとの取材経験がある私ははじけそうな予感がないでもないのだ。

黒川紀章候補がいるじゃないかとの指摘がここでありました。ないけどありました。結構面白いこと言っているし私のいじけた性格としては入れたいキャラではある。持ち上げて落とすのは節操ないが、中松候補より可能性もありそうだし……。
でも表現の自由原理主義者として黒川候補には絶対に投票できない理由がある。ほとんどどこも書いていないということは皆が忘れているからだろうが、彼にまつわる途方もない問題をここで挙げて気高き読者の批判を待ちたい。

それは『週刊文春』が黒川氏が携わった愛知県豊田市の「豊田大橋」について2000年4月6日号に「黒川紀章『100億円恐竜の橋』に市民の大罵声!」との見出しで打った記事だ。『週刊文春』は橋周辺の住民などに取材して否定的なコメントを載せた。氏はそれを名誉棄損として訴えたのだ。
訴え自体は憲法の保証した権利だからいいとしよう。ただ氏ほどの著名人が本業でなした作品に対して批判を受けるのはむしろ当然ではなかろうか。しかも『週刊文春』は取材している。橋が欠陥品などと報じたのではなく、橋についての論評を掲載したのだ。
驚くべきは最高裁で氏の訴えの多くが認められ、600万円もの賠償と謝罪広告掲載を命じた二審判決が確定してしまった点だ。氏は記事掲載後、独自のアンケートを施して『週刊文春』の記事は偏っていると主張、裁判所もこれをおおむね認めて「事実に反し、否定的評価が全体の意見であるかのように取り上げた場合は名誉棄損になる」(読売新聞2004年6月22日夕刊)とした。
今さら最高裁に正しい判断などサラサラ期待しないものの、こればかりは驚いた。確かに『週刊文春』が「大罵声」を予断に取材した可能性はある。でも、だったら黒川氏自身のアンケートに予断はなかったとどうしていえようか。そもそも芸術に関わる判断は右から左まで、西から東まであっていい。ピカソはクズだといっていい。それを書いたら「否定的評価が全体の意見であるかのように取り上げた場合」になるのか。としたらオーソライズされた存在はほめるしかない。仮に99%が作品に肯定的だとして1%が批判したら、それをあえて取り上げていけないのか。もしその1%がピカソ本人だったらどうするのか。どうかしそうな気もするから二重に怖ろしい。
判決は「取材は肯定的な意見を軽視したことがうかがえる」(読売新聞同)との一審判断を支持する。そうだとしよう。「肯定的な意見を軽視」した論評があってはいけないのか。最高裁はいけないと決めた。私ごときでなく最高裁が言った。そこが途方もなく恐いのだ。黒川氏の手帖に黒と書かれたら黒になる。

もし黒川候補が知事選で残念な結果となったら全国民にアンケート調査なさって名誉棄損で訴えたらよろしい。そのアンケートに「黒川候補こそ都知事にふさわしい」との「肯定的」意見が多かったらね。黒川候補以外の当選者が紙面を飾った新聞社を相手にだ。都民という「一部の否定的評価が全体の意見であるかのように取り上げ」て黒川氏に「肯定的な意見を軽視した」報道は認められないと。楽しみだ。(編集長)

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