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2007年3月

2007年3月31日 (土)

『吉原 泡の園』 連載第12回 「あるボーイの朝」

■少しずつ明らかになってきたR店と従業員の姿。日々の仕事と比類無き圧力でボーイたちを支配するマネジャーに追われ、今日もイッセイは目覚める。一日の始まりである。

      *      *      *

  朝、11時に目覚ましが鳴る。下で寝ているEちゃんも、僕につられて起きる。
「おはようございます」
 一応先輩には元気よくいっておくものだ。厳しい運動部でそう教えられたものだった。それに、先輩という生き物は、とにかくそう挨拶されると、急に態度が大きくなり、
「おおっ」
 などとなるものだった。が、Eちゃんは仕事で疲れ果て、そんな格好つけなどうんざりなのか、それとも愛想が無い人なのか、とにかく挨拶しても、
「フンッ」
 としているのだった。
 7.3に分けた髪の毛が寝癖で乱れ、それを直し、色つきのシャツに、少し洒落た色とつくりのスーツを着て、店に行く準備をしている。
 僕も、それに負けじと必死に着替えをする。誰のか分からぬシャツ、ネクタイがクローゼットに山とある。
 Eちゃんは水で寝癖を直すが、僕は当時坊主だったので、そのまま出かける。寒いときは暖房をつけっぱなしで行く。熱いときは冷房ガンガンで出かけてしまう。どうせ支払いは店側なので、Eちゃんも僕も、それくらい贅沢してもいいだろうと思っていたのだった。
 寮から店まで、歩いて1分かからない。走れば、25秒くらいだろうか。休みたいとき仮病が使えないのはいたい。
 隣の部屋にはマネジャーが寝ているのだTさんと共に。それだけに大騒ぎもできないし、こそこそクーデターの準備も出来ない。まあ、出来てもやらないが。
 Tさんなどは、もう笑い話にもならない。店で顔を合わせ怒鳴られ、殴られ、寮に帰れば、同じ2段ベッドの上と下で寝る。寝ない間、彼らの部屋は狭く、テレビが1つあるのみである。Tさんは、少しでも気に入られようと話しているが、それでも逆効果なのである。なぜか、うまくいかないのだ。
 鼻持ちならないというか、何か話すと、お前ら知ってるか、みたいな感じが伝わり、それでマネジャーも面白くなくなり、逆に嫌われてたりする。まあ、マネジャーと同部屋なので、精神に異常が出ても不思議ではないが。
 ライオンのいる檻に、人間が放り込まれたようなものである。
 店に着くと、後からTさんが来るが、普通寝て疲れがとれるはずなのに、なんだかマネジャーとともに過ごしているせいか、やつれて疲れがとれていないようだ。
 店に11時30分に皆が集まる。マネジャーは緑色のパンチパーマで、起きたばかりの顔で朝礼をはじめる。
 ボーイはきちんとした格好である。もし、ボタンのとめ忘れがあると、厳しく注意される。また、ボーイは白いシャツが基本で、僕ら新入りは当然白だが、白いTシャツは下の着物が透けてしまう。柄つきのTシャツを着ていることが多かった僕は、
「シャツが透けてるぞ」
 とよく注意された。それでも、
「はい、すいません」
 といい、それだけで何もしなかった僕も、今考えれば自殺ものであった。

「昨日は客も少なかったし、売り上げも悪い。このままじゃRは店の存続もやばい。皆気合い入れてくれよ」
 マネジャーが言うことといえばいつも決まっている。みんな毎日同じことに、適当に頷いている。マネジャーもそれが気に入らなく、だんだんヒートアップしてくるのだ。そして、終いには1人でキレて、1人で暴れ出す。
 それを止めるのは僕の役目になっていくのだった。
 絶対に朝礼と言えないような、ただのマネジャーの独り言を終え、掃除に入る。
 毎日忙しい忙しい。もっと早く終わらせようと思いながら、自分はフロントに入りインターネットを見始める。
 マネジャーが急げボケが、と言うから必死に動いていると、
「イッセイ、コーヒー作ってくれ」
 と言われるのだ。専用マグカップに、砂糖とミルクの量が決まっていて、それをフロントにドンと置くと、また掃除に戻る。
 はじめはTさんが、僕に掃除というものを教えてくれた。
「おいT、イッセイに掃除おしえたったれや」
 Tさんが疲れながらも精一杯の笑顔で僕に教えてくれるのだ。
「まずね、3階の備品庫に行って鍵を開けるのね」
 フロントのマネジャーに、
「備品庫の鍵をください」
 というと、マネジャーはこちらを見もせず、ただ鍵を投げた。投げるというよりも、もっと正確にはぶん投げる。つまり乱暴なのだ。
「まあ始めは覚えることが多いけれど、覚えてしまえばいつも同じだからさ」
 Tさんはなんて優しい人なんだろう。僕は説明を聞きながら、そんな思いで返事をしていた。(イッセイ遊児)

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2007年3月30日 (金)

「元モー娘。」加護が矢口になれない理由で落ち込んだ

 さて、加護亜依問題である。

 17歳でタバコを吸っていることが発覚し謹慎中だったアイドルが、18歳年上の男と温泉に行って未成年なのにまたタバコを吸ったと。で、事務所のアップフロントは契約を解除した。
 二十歳前にタバコを吸った。そりゃ確かに法律違反ではある。ただし、そんな人は山ほどいる。おそらく芸能人にも。19歳なら相手の男性も淫行条例にふれることもない。立派な交際である。例えタレントでも19歳なら恋人の1人ぐらいいてもおかしくはない。
 結局、事務所側が問題にしたのはイメージだったのだろう。もともとアイドルと芸能事務所は異性交際を禁止する契約を結んでいるものらしい。2005年に男性との交際を報じられた矢口真理さんが「モーニング娘。」を脱退させられたことからも分かるとおり、けっこう男女問題に神経を尖らせている事務所でもあるのだろう。
 
 しかし、そもそも加護さんのイメージは守るべきものだったのか!?
 まず第一に彼女のロリロリのイメージが、すでに賞味期限切れだった。小学生のようなファッションと一九歳という彼女の実年齢はかなり開きがある。
 幼さや不思議さをセールスポイントにしたタレントは年齢の壁をいずれは越えねばならない。36歳の酒井法子さんはもはや「マンモスうれピー」などとは言わない。デビュー当時に使っていた「のりピー語」は事務所が考え出した販売戦略だったが、年齢を重ね、女優としての地位を築いていくなかで霧散霧消していった。小倉優子さんが「こりん星」について語らなくなる日もきっと近いだろう。
 つまり加護さんも、もう「あいぼん」でもあるまいってことだ。

 次にモーニング娘。をはじめとするハロープロジェクト(ハロプロ)の面々に往年のアイドルのようなイメージ戦略が必要なのか、という問題である。
モーニング娘。の画期的な点はアイドルを記号化したことだった。年齢とともにアイドルとして活動しにくくなるタレントに依存するのではなく、記号化されたモーニング娘。のイメージに合わせて人を変えていく戦略。おかげでモーニング娘。として活躍できない年となれば「卒業」し、ソロや別のユニットで新たなイメージを付加されることになった。
 巨乳タレントを抱えることで有名な事務所・イエローキャブは新人を水着で売り出し、売れるにつれて服を着させるといわれる。グラビアアイドルから司会業などをこなすタレントにステップアップしていくための戦略だ。両事務所の方法とも芸能界での生き残りを目指す点は一緒だが、ハロプロの手法は量産が利く点で合理的で機械的といえる。

 こうしたハロプロの手法をおそらく消費者も受け入れていたと思う。恋人との写真をフライデーされた矢口さんがモーニング娘。を脱退後も人気を維持し、テレビなどによく出演しているのは、その証拠だろう。ファンは「モーニング娘。」というコスプレを着ている矢口さんを楽しんでいるのであって、「モーニング娘。」と完全に一体化している矢口さんを求めているわけでもない。実際、彼女が脱退させられた時、「恋人ぐらいいるだろ」という擁護の声も少なくはなかった。
 その意味で、現在のアイドルのファンは大人になったのだと思う。どうせコスプレなんだから、実態は厳密には問わないよというわけだ。キャンディーズの時代ならこうはいくまい。

 さて、ここで加護さんの今回の問題に戻る。
 「もうアイボンって年齢でもないから、喫煙やお泊まりぐらいいいんじゃない」てな雰囲気になるかと思ったら、そうでもないようなのだ。加護さんの大手ファンサイトが閉鎖されたとの報道も流れているし……。

 まあ、謹慎中ということもあったろうが、何より相手が悪かったのだろう。私と同じ歳のオヤジですから。やっぱ私も含めてオヤジが写真に写ると小汚いッス。
 しかも雪ちらつく温泉宿でしっぽり一泊。渋すぎッス。いや、同年代だけに気持ちは分かるけどね。やっぱり、この季節は温泉でしょう。草津は湯もいいしさ。ただ写真で見ると「演歌」かと。

 37歳ともなると、タレントの相手としてマイナス材料にしかならないのですね。写真を撮られたときの相手が若手俳優とかだったら、加護さんへの同情票がきっと集まったはずだから……。
 今回の騒動で改めて自分の歳を恥じた大畑でございました。まあ、タレントと知り合う可能性も皆無なんで、小汚くても誰にも迷惑かけませんけどね……。(大畑)

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2007年3月29日 (木)

安倍機長、これでは胴体着陸です

 3月26日に毎日新聞の内閣支持率が発表された。支持率35%と先月の調査から1ポイント下がり、不支持率は1ポイント増の42%だった。安倍内閣支持率としては過去最低、不支持率としては過去最高だそうだ。
 面白いのは年代別の支持率。20代が5ポイント減、30代が6ポイント減だが、70代以上には8ポイント増!

 わからん。
 私も30代だからなのか、先月より今月の方が支持したくなる理由をどうしても探せない。毎日の分析によれば、「衛藤問題」と「松岡問題」が「政権浮揚を妨げていることをうかがわせる」(3月26日)らしいが、70歳を超えるとここらへんの問題が気にならなくなるのだろうか……。仲間だから復党すればいいし、生きていれば光熱費もかかるよなってな感じか。
 たしかに、これぐらいの問題で目くじらを立てるのこそ、若さ故の性急さかもしれんとも思えないこともない。泰然と政治家を捉えるのも悪くないかも……。

 23日は政権発足から半年を迎えた安倍晋三首相が「飛行機が飛び立って、水平飛行、安定飛行にいくためには、一番エネルギーが消耗するのは離陸だと思う。なんとか離陸することはできたかな」と語った。
 これもまた、なんと泰然としたコメント。
 飛行機だと考えるからこんな発言ができるが、実際の彼はグライダーである。北朝鮮問題で名をあげた若き政治家(つうても52歳ですが)で選挙にも強い。そんな幻想から期待ふくらみ支持率70%という異常な数字に。
 で、そこからゆっくり下降。
 残念ながら離陸したのではなく、牽引する飛行機から切り離されて半年間というわけだ。上昇気流を捕まえることなく順調に着陸に体勢に入っているようだが、当人はボンバルディア機なみに車輪を出すのを拒んでいるらしい。体勢を立て直そうと必至に「安倍カラー」を強調している。

 このむやみに強気な姿勢が言葉に表れているらしい。それが逆質問。
「衛藤晟一前衆院議員の復党問題でも9日、記者団から『党内に不満がくすぶっている』と指摘され、『そんな不満くすぶってませんよ。誰かいます? 特定の人物?』と切り返した」(『毎日新聞』3月23日)
 同新聞によれば、「首相がぶら下がりに逆質問など『疑問形』で応じた回数は、政権発足後の3ヵ月では11回だったのに対し、最近の約2ヵ月半(1月5日~3月22日)で25回と倍以上に上る」
 いたいた、小学生のとき。注意されると、「何時何分何十秒に、どこでやったんだよ」とか言い返すヤツ。
 強気の発言を貫いた「衛藤問題」と「松岡問題」が低空飛行の原因になっているのだから、普通に考えれば悪い方へ悪い方へ手を打っていることになる。もっとも70代以上には統計上はウケているらしいが……(私は「違う」と怒っている70代以上方々。心中お察しいたします。あくまでも統計上とお考え下さい)。
 
 で、首相が力を入れている教育再生会議では、児童に教えるべき行動規範を5月に打ち出すらしい。「卑怯なことはするな」とか。ついでに23日付けで「美しい国づくり」推進室が内閣官房に設置される。こちらは新しい日本の理念を検討して発表すると。
 その行動規範やら理念やらを、松岡センセイをはじめとする安倍内閣の皆様に理解させることが重要そうです。言うことを聞いてくれないなら、中川秀直幹事長にまた言ってもらうのも手だ。

 たまには首相を褒めてやりたいと新聞を探した、今週もそんな記事はなし。
 岡山で落書きを消している青年団体を視察したときも、「目に見える形で行動すると、落書きしにくくなるだろうね」と話したらしい。小泉前首相は嫌いだったが、言葉にキレはあった。少なくとも、こんなヌルい発言はしない。せっかく若者と会っても、首相の言語センスだと若年層にはアピールできそうもないな。
 何だか好き嫌いを別にして、あまりの首相の情けなさに日本人として落ち込んできたッス。(大畑)
 

 

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2007年3月28日 (水)

■実録・コールセンター 最終回 「未来につながらない」

「詐欺だ、サギ、サギサギ!!」
 電話の向こうでおばさんがヒステリックに叫ぶ。プロバイダとの契約について納得できないのが発端だった。基本契約に含まれている事項について納得ができず、「聞いてない」との一点張りで次第に激高してしまったおばさん。手がつけられない。「少々お待ちください」とムリヤリ保留にしてからSV(スーパーバイザー)に指示を仰ぐため手を上げる。手の空いているSVが文字通り駆けつけてきて「対策」を練ってくれる。
 怒った客がよく言うのは「上司を出せ!」とか「おまえはバイトだろ、社員を出せ!」とった台詞だ。しかし、「上司を出せ!」には「申し訳ございません、電話に出た者で対応させていただいております」という対応、「おまえはバイトだろ、社員を出せ!」には「申し訳ございません、私は社員でございますがまだまだ至らない点がございます」という対応、というようにマニュアルができている。だから怒ってもお客が望むような結果にはならないことが多い。

 とにかく、様々なお客から絶え間なく電話がかかってくる。オペレーターの考えることは、次にかかってくる電話の相手が、穏やかな人で、かつ簡単な内容の案件であることだ。1日に電話を取った件数が少ないとそのオペレーターの評価もいいものにはならない。
 それでも僕がときどき思うのは、まだインバウンドはマシなんじゃないだろうか? ということだ。インバウンドとは受信業務のことだ。反対に、アウトバウンドとはこちらから電話をかける発信業務のこと。今、アルバイト情報誌を開くと、必ず載っているのがアウトバウンドのオペレーターに関する求人だと思う。某、アヒルのマスコットを登用した保険会社や教材販売の業務である。知り合いには、教材の販売のアウトバウンドは1日に5件契約がとれればいいほうだということを聞いた。1日中電話をかけまくって5件。しかも、その5件以外ではほとんど人間扱いされず一方的に切られる。一方的にこちらからかけているのだが。これを1日やるのはキチガイ沙汰のようにも思える。飲食店に比べて給料が若干いいとはいえ、僕がアウトバウンドをやっていける自身はちょっと、ない。

 企業規模が大きくなれば必然的にそうなるのだろうが、ただただ単純な、細分化された業務を延々とやっているセクションがあり、アルバイトや派遣がその業務にあたっている。僕がやっているオペレーターは時給が1500円とわりといいとはいえ、それでいつまでも生活していけるのかと言われれば、どうなのだろう。契約なので、時給1500円という時給がアップすることはまずないだろう。しばらくすると違う仕事に当たれるのか、ということは派遣にはまったく分からない。
 アルバイト情報誌などには、コールセンターの仕事について「スキルが磨けます!」などと書いてあるのを目にするが、コールセンターをやめた後、ここで得た「経験」がどこかに活かせるとはハッキリ言って思えない。研修にはけっこうな時間があてられたが、そこで学んだのはどこでも通用するスキルではなく、このコールセンター内でだけ必要な知識がほとんどだった。例を挙げればプロバイダのサービス内容を事細かに覚えたり、センター内でのルールを覚えたり、というように。
 中には、40代前後の男の人もいる。好きでやっているのならいいのだが、明らかにそうは見えない。NさんやKさんは、電話の向こうの客に怒鳴られながら、このコールセンターでずっと働くのだろうか。

 コールセンターで働いていて思うのは、経験や職場でのポジションなど、積み立てていけるものが何もないということだ。未来につながるものがない。

 コールセンターに限らず他の仕事でもある程度はそうなのかも知れないが、「割り切って」仕事にあたる人の割合は、やはりコールセンターでは多いと思う。
 4年働いているSVが言った。「お客に怒ってもしょうがないでしょ。淡々と終わらせるだけ」。淡々と終わらせても、またその次を終わらせても、やはりどこかに繋がらなければやってられないと個人的には思う。中にはこの仕事にストレスがたまらない人もいるそうだ。実際、「あんま苦じゃないよ」と言う人もいた。けれど、コールセンターに漂うあの閉塞感が、働いてる人の心情を反映している気がしてならない。

 コールセンターのルポは今回で終わりです。わずか5回でしたが、連載を通してコールセンターという仕事と働く人たちについて何か思うところがあったりしたかと思います。何かあればコメントなど書いていただけると嬉しいです。(浅野)

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2007年3月27日 (火)

黒川の手帖

ドクター中松氏の東京都知事選立候補の報を聞き、1都民として心からホッとしている。やっと投票できる候補者が出てくれた、と。
前から何度も書いてきたように私に慎太郎はありえない。とにかくマッチョは嫌いである。作家としての石原さんは結構好きなんだけど。

浅野候補もありえないなあ。何が悲しくて宮城県知事を大東京に迎えねばならんのかという了見の狭さは……ある。あるにはあるのだ。私のようなお上りさんは故に大東京住まいを自己過大評価している。だから同じお上りさんが知事になりそうとなると同病相憎む?みたいになる。何だか都心の駅で出身地の方言を聞いたような気持ち悪さ。啄木は欣然としていたけど私は嫌だ。
もちろんそれだけではない。あの役人然がどうしても肌に合わない。「役人独特の四角い感じ」と表現してわかるかなあ。浅野候補に限らず役人は形でいうならば四角いのだ。縦と横の線で直角に空間を区切るのは造形として幼い。浅野候補はそこから脱していない気がしてならない。

吉田候補も諸般の事情で、いや1つの事情で当選がおぼつかなさそうというのがつらい。死に票とわかっていて投じるのも何だかである。だったら中松候補も同じじゃないかと口さがない?批判もありえようが、かつて本当に米国諸都市に「ドクター中松デー」があるのか国際電話(当時は高かった)で確認して本当だったとの取材経験がある私ははじけそうな予感がないでもないのだ。

黒川紀章候補がいるじゃないかとの指摘がここでありました。ないけどありました。結構面白いこと言っているし私のいじけた性格としては入れたいキャラではある。持ち上げて落とすのは節操ないが、中松候補より可能性もありそうだし……。
でも表現の自由原理主義者として黒川候補には絶対に投票できない理由がある。ほとんどどこも書いていないということは皆が忘れているからだろうが、彼にまつわる途方もない問題をここで挙げて気高き読者の批判を待ちたい。

それは『週刊文春』が黒川氏が携わった愛知県豊田市の「豊田大橋」について2000年4月6日号に「黒川紀章『100億円恐竜の橋』に市民の大罵声!」との見出しで打った記事だ。『週刊文春』は橋周辺の住民などに取材して否定的なコメントを載せた。氏はそれを名誉棄損として訴えたのだ。
訴え自体は憲法の保証した権利だからいいとしよう。ただ氏ほどの著名人が本業でなした作品に対して批判を受けるのはむしろ当然ではなかろうか。しかも『週刊文春』は取材している。橋が欠陥品などと報じたのではなく、橋についての論評を掲載したのだ。
驚くべきは最高裁で氏の訴えの多くが認められ、600万円もの賠償と謝罪広告掲載を命じた二審判決が確定してしまった点だ。氏は記事掲載後、独自のアンケートを施して『週刊文春』の記事は偏っていると主張、裁判所もこれをおおむね認めて「事実に反し、否定的評価が全体の意見であるかのように取り上げた場合は名誉棄損になる」(読売新聞2004年6月22日夕刊)とした。
今さら最高裁に正しい判断などサラサラ期待しないものの、こればかりは驚いた。確かに『週刊文春』が「大罵声」を予断に取材した可能性はある。でも、だったら黒川氏自身のアンケートに予断はなかったとどうしていえようか。そもそも芸術に関わる判断は右から左まで、西から東まであっていい。ピカソはクズだといっていい。それを書いたら「否定的評価が全体の意見であるかのように取り上げた場合」になるのか。としたらオーソライズされた存在はほめるしかない。仮に99%が作品に肯定的だとして1%が批判したら、それをあえて取り上げていけないのか。もしその1%がピカソ本人だったらどうするのか。どうかしそうな気もするから二重に怖ろしい。
判決は「取材は肯定的な意見を軽視したことがうかがえる」(読売新聞同)との一審判断を支持する。そうだとしよう。「肯定的な意見を軽視」した論評があってはいけないのか。最高裁はいけないと決めた。私ごときでなく最高裁が言った。そこが途方もなく恐いのだ。黒川氏の手帖に黒と書かれたら黒になる。

もし黒川候補が知事選で残念な結果となったら全国民にアンケート調査なさって名誉棄損で訴えたらよろしい。そのアンケートに「黒川候補こそ都知事にふさわしい」との「肯定的」意見が多かったらね。黒川候補以外の当選者が紙面を飾った新聞社を相手にだ。都民という「一部の否定的評価が全体の意見であるかのように取り上げ」て黒川氏に「肯定的な意見を軽視した」報道は認められないと。楽しみだ。(編集長)

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2007年3月26日 (月)

新型ゲーム・冬の陣

Game  06年末、ゲームのハード機(本体)がメーカーから相次いで発表され、年末商戦は決戦の場となった。
 11月11日にソニー・コンピュータエンタテイメント(SCE)から「プレイステーション3(PS3)」、12月2日には任天堂から「Wii」が発売された。11月2日にもマイクロソフト(MS)が「Xbox360」の低価格版となる「Xbox360コアシステム」(以下「Xboxコア」)の発売に乗り出しており、三つ巴の争いとなった。

 MSの「Xbox360」は06年末までに全世界で1000万台以上を売り上げているが、日本では売り上げが伸びず、今回の「Xboxコア」で日本市場での掘り起こしを計る。
 SCEと任天堂が席巻する家庭用ゲーム機市場にコンピュータ企業の巨人・マイクロソフトが初代「Xbox」を掲げて割って入ったのが2002年。「Xbox」を中心としたエンターテイメント事業はいまのところ赤字とはいえ、潤沢な資金を有するMSが先行する企業にとって脅威となっていることは間違いない。

 さて、「プレイステーション2」に続く大成功を収めることができるか注目された「PS3」だが、発売前からSCEの混乱ぶりが伝えられていた。
 量産体制が整わず日本とアメリカでは大幅な初期出荷台数の縮小を余儀なくされ、欧州にいたっては発売が延期になったほどである。
「PS3」が搭載する、次世代DVD規格であるブルーレイディスク(BD)を読み取る装置の生産が遅れているのが原因だ。
 当初の計画通りであれば、日米合わせた年内出荷は400万台のはずだったが、実際には200万台程度にまで減少。発売前に希望小売価格の値下げを発表するという波乱もあった。ハードディスクの容量が20Gの低価格版は税込み6万2790円の予定だったが、「Xboxコア」の登場やユーザーからの「高い」との声を鑑みた結果、4万9980円まで値下がりした。
 発売直後こそ店にPS3を買い求める客が殺到したが、それも初回出荷台数が10万台のみだったこともあるようだ。

 対する任天堂の「Wii」は「遊びの原点立ち返ったゲーム機」と言われている。
「ファミコン」が90年代半ば、「プレイステーション」にハード機No.1の座を奪われた後、任天堂も「プレイステーション」の特徴である高機能路線で対抗することを目指し「ゲームキューブ」を発表。しかし結果的に敗北したという過去がある。
「Wii」では、高機能性や高いゲーム性を追求した「PS3」や「Xbox」とは別の「遊びやすさ」「親しみやすさ」を重視。岩田聡SCE社長が「家族全員が毎日当たり前のように触れるゲーム機を目指す」とコメントしていた通り、棒状のコントローラーを片手で持つという気軽さ、それでいて操作が簡単ということから老若男女が楽しめるものとなっている。
 価格も2万5000円と他の2機種より低く、発売後5日間で世界販売が100万台を突破するというものすごいスタートダッシュを見せた。

 年末商戦の時点では「Wii」が他に比べてリードしていると報じられているが、このまま「Wii」が今後のゲーム機の主役になっていくのかというと、そういうわけでもなさそうだ。
 今でこそ「PS3」は高価格だが、1年後には数量的に市場に普及し価格が下がり始め、多くの人に手が届くようになる。そして、なんといってもハイビジョン対応の次世代DVD再生機である「PS3」はAV機器としても最高峰の機能を備え、BD-DVD再生ハードとしても期待されている側面がある。ゲーム機が「家電」に完全に追いついたのが「PS3」といえ、今後の関連デバイスの発表にも期待が集まっている。
 年末商戦以後の各ゲーム機の展望はどうなのか。完全な予想などありはしないが、日々店に立ってゲーム機を販売する店員たちならば、その流れを敏感に感じ取っているはずだ。

■ゲーム担当店員の視点

 家電量販店やゲーム店が林立する秋葉原を訪れた。(この取材を行ったのは1月23日ごろ)
 まずは秋葉原駅横にそびえるヨドバシカメラマルチメディアAkibaに足を運ぶ。「Wii」の発売前日の夜から1500人もが行列を作った店舗である。
 ゲーム機器のフロアには多くの人が集まっていた。大きなディスプレイが用意され、映画のような「PS3」のゲーム画面が写し出されているかと思えば、「Wii」の棚にも人だかりができている。
「今のところは、『Wii』が押してると言えるんじゃないでしょうか。今日の時点でも在庫はゼロです。入ってきても、そのたびに即日完売の状態ですからね。やはり幅広い層に人気がありますし、操作方法が斬新で本当の意味で新しいゲーム機というインパクトがあるようですね。」
 店員さんが言うには、なんと予約の受付もできない状態であるという。
 売り場には、「Wii」が売り切れ状態であることを知った客が、人気ソフト『Wiiスポーツ』のパッケージを手に取って、心なしか物欲しそうに眺めている。
 他方、「PS3」には在庫があるようだ。
 初期出荷が少なかった「PS3」の方が在庫があることが意外だった。それでも、今後の見通しが暗いわけでもないようだ。
「思った以上に、BD再生機として『PS3』を見ているお客様が多いんです。たしかに『PS2』発売時も、DVD再生機としての側面がありましたが、そのころはもうDVD再生機は普及していました。でも、今回のBD-DVDに関してはまだほとんど普及していない。その意味は大きいと思います。これからの展望ということになれば、決定的な影響力を持つのは人気ソフトが出るかどうか、ということになりますよ。このソフトが欲しいからこのゲーム機を買う、という判断でハード機を決めるお客様は多いですから」。
 こう語る店員さん自身も、どのゲーム機を買うかはこれから発売されるソフトによって決めるという。

■『ブルードラゴン』でXbox復活!?

 実際にソフトの力によって売り上げを大きく伸ばしてきたゲーム機がある。「Xboxコア」である。「ゲームソフト店「メディアランド」の店員さんに聞いたところ熱っぽく語ってくれた。
「やっとキラーソフトが出たって感じですよね。『ブルードラゴン』『ロストプラネット』あたりが出てきて本体も売り上げが伸びてる感じです。なぜかアキバ(秋葉原)では『Xbox』系が強いという謎の傾向があるんですけど、ここにきて本格的に伸びてきました」。
『ブルードラゴン』はあの『ドラゴンボール』を描いたマンガ家、鳥山明がキャラクターを担当した作品だ。このソフトが発売された12月7日以降、売り上げが伸びたことからも年末商戦がさらに激化したことが伺える。

 ここで、いかにもゲーム担当らしい今後の展開についてのコメントを聞くことができた。
「でも、これから先、どのゲーム機に期待するとしたら、個人的には『Xboxコア』でも『PS3』でも『Wii』でもなく、『ニンテンドウDS』か、『PS2』ですよ。というのは、ソフト制作会社側が『PS3』からソフトを出すのを嫌っている傾向があるらしいということをたまに聞きますからね。『PS3』が高性能になったから、そのソフトを作る側にも相対的に今までより高い技術とコストをかけなければならなくなってしまった、というのが理由だそうです」。
 その点、『ニンテンドウDS』や『PS2』では今後も『ファイナルファンタジー』や『ドラゴンクエスト』といった大ヒット間違いなしの超大作が発売を待たれている。新たな3機種に移行するのはまだ早計ということらしい。

 何件か店を回ったが、1月23日まで「Wii」にお目にかかることができなかった。しかし、この23日にようやく「メディアランド」で中古の「Wii」を1台だけ見つけることができた。
 値段を見ると、2万9800円。なんと希望価格の2万5000円より5000円近く高くなっている。買い取り価格は2万6000円前後だという。
「今のところ希少価値がありますから。他の店では中古で3万円を超えてるのも見たありますよ」。
 それでも売れるというから驚いてしまう。新品にしろ中古にしろ、次に入ってくる見通しは今のことろないという。
「GAMERS」本店。この店でも当然のように「Wii」は売り切れである。「PS3」在庫アリ。「Xboxコア」も在庫アリ。
 店員さんの談。
「『Wii』は入ってくるなり品切れ。運がいいときは2週で連続で入ってきますけど、その日のうちにすぐ売れちゃいますね。個人的には『Wii』派です。『PS3』は『機械』という感じがして、気軽に楽しむという感じではないですよね」。
「Xboxコア」の売れ行きは同店でも伸びているという。ここで気になったのは、人気ソフトが出る前とはいえ、なぜ「Xbox360」「Xbox360コア」は伸び悩んだのかということだ。
「初代の『Xbox』と比較して、そんなに進化してる感じがしなかったからだと思います。目新しい機能もないし、ソフトもそんなに充実してなかった。だからMSにとっては『ブルードラゴン』は『これにかけた!』っていう感じだったんじゃないですかね」。
『ブルードラゴン』がヒットし、やや遅まきながら『Xboxコア』が攻勢をかける。それが『Xboxコア』の現状であるようだ。

 少し前まで、ゲームといえば子どもの遊び道具というとらえ方が一般的だったはずだが今は違う。
 SCEはテレビ以上の開発コストをかけ、家電のプラットフォームとしてのゲーム機を視野に入れている。全世界で大ヒットを記録している『メタルギアソリッド』(ハードは「PS2」)に大塚製薬の『カロリーメイト』がアイテムとして登場しているように、ゲームの中に広告が入るのは今後当たり前のことになるという。MSはゲーム中の広告を収入源として視野に入れはじめ、ゲーム向け広告代理店を設置している。
 飛躍的な進化を遂げる今後のゲーム業界に、そして3機種の生き残りの動向に注目!        (宮崎・『記録』2月号掲載記事)

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2007年3月25日 (日)

■日曜ミニコミ誌 いざ、寝袋持って野宿へ/『野宿野郎』

Photo  この『野宿野郎』を初めて手にとってパラパラ読んでみたとき、まず、この冊子についてどう考えればいいのかを迷った。書店に置かれているものが大体持ち合わせているような、誰かに向けられたメッセージ性だとか、なにかを共有するといった雰囲気のようなものが『野宿野郎』にはもともと備わっていないよう気がしたのだ。とりあえず「野宿」について書かれてある。もちろん、ここで言われてる「野宿」は、家の中ではなくどこかの公園や駅で寝るアレのことだ。

「トラック野郎」は既に市民権を得ている言葉だが、その場合の「野郎」には「トラックという仕事にムチャをするほど情熱をそそぐ野郎」とか「トラックを転がす荒くれ野郎」というニュアンスが働いている気がする。「野郎」ではあるが仕事をしているので得体の知れない感じはしないのだ。
「野宿野郎」はどうか。
 野宿は仕事ではないからなのか、「野宿野郎」につく「野郎」からは「投げやりな野郎」的なニュアンスのみが読み取れるような気がするのだ。得体が知れない。なにかを「投げ捨てちゃった感じ」とでも言えるのか。

『野宿野郎』の誌面約100ページ、多くの記事の中では、悪く言えば投げ捨てちゃった感じの人たち、良く言えば「俺ら、どんな風に見られたっていいからよ」と何か達観した雰囲気の人たちがとりあえず野宿をキーワードとして集まり、野宿について話している。
 悪い人たちではなさそうだ。でも、やっぱり得体が知れない。それだけでは何が何だか分からないだろうから、いくつかの記事のタイトルを挙げてみよう。
「駅寝の最中にヤンキーと酒盛りした話」「野宿学会 第二回・野宿学会最高幹部会 ~野宿を広めるのだ!~」「インドの、なんとかっていう駅で寝ていたら列車に乗り遅れた話」「中央線各駅野宿の旅」……。
 こんな感じである。
 これらの「駅寝の最中にヤンキーと酒盛りした話」などが、あまり鼻息荒くない様子で、そしてたまに真剣に語られている。はっきり言って、大人目線で言えば「バカバカしい」の境地になどラクに到達しているのだが、それでも笑いなしでは読むことができない。だって、旅先で野宿をしていたら地元のヤンキーがやって来て酒盛りをすることになったんだぞ? 面白くないわけがないのだ。

『野宿野郎』を立ち上げた編集長のかとうちあきさんに、この不思議なミニコミについてお話を聞かせていただいた。まさか女の人が作っているものと思っていなかったので驚いた。しかも、電話の向こうから聞える声からするとかなり若い。だが、デザインにもレイアウトからも、名前とは裏腹に『野宿野郎』からはガサツな印象がしない。表紙に関しても、いっけん荒唐無稽な感じがするけれど、よく見るとなかなかに洒落ている。
 かとうさん自身は高校時代から野宿をしていた(早熟である)。大学でもアウトドア系の団体で活動。いつかは旅に関するミニコミを作りたいと思っていたが、旅のミニコミはすでにいくつか発行されていたので、どうせ作るのなら今までにないものを作ろうと思ったという。
 それに付け加えてこんなことを口にした。
「旅好きの人にはなんだか、オレはここへ行ったぞ、ここにも行ったぞ、ということを自慢げに話す人が多いんですよ。だから、逆にそういう態度では行かないっていうことは決めてました」。
 いるいる。本当に旅ジマン族は多いのである。かとうさんの言葉通り、『野宿野郎』からは押し付けがましさは微塵も感じられない。
 今までのところ野宿中に危ない目にあったことはないそうだ。旅先での楽しい出会いがあればいいとは思うが、寝ている最中に話しかけられるのは「眠いのでちょっとイヤ」。
 現在は介護ヘルパーをしている。そして、休みを利用して毎月必ず野宿してるそうだ。03年に第1号を発行して、4号からなぜか一気に売り上げ、認知度が増したという。最新号は去年12月に出た第5号で、なんと1000部も刷られている。4号が既に500部ハケているので「冒険しちゃおうかなって、一気に言いっちゃいました」。次号は夏あたりを予定しているそうだ。このところ、急に暖かくなってきた。夜道を歩いてて野宿者に出くわしても、物珍しいからといって起こさないように!

 最後に第5号にある、かとうさんの言葉より。
「野宿は必ずしも安全ではありません。本誌はおもいっきり野宿をすすめようとしていますが、その影響力は雨粒ほどです。しかしもしかして、これを読んで野宿に行ってくれる奇特でスバラシイ人がいて、運悪く危険な目にあったとしても本誌に責任はありません。自己責任という言葉は嫌いです。そんな時はなんでもかんでも太陽のせいにしましょう」。(宮崎)

(■B5 108ページ 500円 次号は夏あたり)

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2007年3月24日 (土)

『吉原 泡の園』 連載第11回 「鬼マネジャーの過去」

■「俺が下っ端のときにされた仕打ちを下っ端にしてやることが、俺をここまでがんばらせたんじゃ」。こう言い放つマネジャーにももちろん過去はある。愛する娘と妻は、石川県に置いてきたという。

     *    *    *

 さる日、まだ吉原に来たてのマネジャーは、ぺーぺーのボーイだった。休日を申請しており、その日、娘と奥さんとディズニーランドに行く約束をして、東京駅で待ち合わせしていたらしい。
 その日がやって来た。朝、先輩ボーイがマネジャーに言った。
「ワリィ、今日俺休むから。おまえ店でてくれ」
 当時のマネジャーはまだペーペーである。
「あっ、今日は自分やすみ」
 言い終わるまえにさえぎられ、泣く泣く仕事に出たという。悔しさで、奥さんと、娘に連絡を出来ず、会えるチャンスを棒に振り、そのまま音信も途切れたという。 さらに、それ以前は全国をまたにかけた建設業者のスターだったらしい。
 クレーンなども運転でき、それなりの金も稼いだ。が、マネジャーの働いてた会社で、現場で事故により死者が出て工事はストップ、会社に仕事は来なくなり、それまでの収入が激減、夫婦間で喧嘩が絶えなくなり、離婚。娘の自慢はいつもしていた。
 そして、地元に吉原流のソープランドを立ち上げようと、東京吉原のソープに修行に来て、そしてマネジャーまでになったそうだ。
 事あるごとに、
「俺は3回も離婚しとる、娘も捨ててきた、富士樹海もさまよったこともあるんじゃ」
 地元暴力団のSさんが兄貴で、前身刺青入れろと、700万置かれたときには、さすがに逃げたね、が口癖で、まあ確かに普通で考えればそれなりにビビる経歴ととれるが、僕はそれまでに壮絶人生読本を読んでいたせいで、だから何なの、くらいにしか思わなかった。

     *    *    *

 朝の掃除は、時に洗車をする場合もあるが、まずファブリーズで、室内の汗やタバコの臭いを消す。
 タイヤ、ホイルを磨き、そして灰皿の中身を捨てる。ソープランドの必要経費として、タオルも大きな物のひとつだ。タオル業者は毎日出入りしているが、その都度、送迎車のクラウンの荷物入れを確認し、細長い、車磨き用にしているタオルを補充してくれる。そして、これがまた重宝するのだ。
 車をざっと水洗いし、その細長いタオルを2人で端と端を持ち、ボンネットからフロントガラスから後ろ側まで一気に拭き取る。
「ほー、ええ手つきしとるな」
 と僕に言う。
「手つきがちがうな」
 マネジャーは、嘘でほめることはしない。命がけでも本心しか言わない男だ。このときは少しうれしかった。
 掃除はこのほか待合室の掃除も行う。R店の入り口にある鏡のようにすべてを映す柱2本も丹念に磨き、毎月1回訪れる花屋さんが植える花壇の花に水をやり、待合室に向かう。
 待合室は2つある。理由はおいおい述べるとして、広いほうは第一待合室、狭いほうは第二待合室だ。
 それぞれにテレビ、革張りの一人がけソファ、新聞台、雑誌台がある。
 第一待合室は、黒い革張りのソファ、新聞を数種類とっていて、その背の部分をホッチキスでとめる。週刊誌も入れ替える。エアコンのフィルターの掃除、また言葉ではそのゴージャスを言い表せないが、とにかく細いシャンデリアのようなきらびやかな装飾品が、電気をつけると光り輝き、一層幻想の世界にいざなう効果を持っている。
 ただ、姉妹店のG店は、そうした演出がうまくいき、繁盛してる店だが、我がR店は、何をどう演出しようと、まずもってマネジャーの怒鳴り声、罵声がその高級店のかもしだす幻想を崩し、客を現実に引き戻す。よって流行らない。そして、それ以上かもしれない要因が、とにかく古いのである。
 このR店は、遊郭だった時代、つまり明治から、花魁の寮として存在していた。が、そのためにガタもきている。そして、そのガタを直すことは、この不思議な空間、吉原ではできない。
 つまり、建物は普通、一度壊し、サラ地にし、そこからまた新しい建物が造られるが、吉原では一度サラ地にした土地は、原則建物は建てられないとなっている。
 この界隈に詳しい、福鳶のおかあさんに聞いてみたところ、
「政府が吉原をなくしたがっているから、そんな政策があるの」
 と語ってくれた。
 では、サラ地にしたらそこは何になるのか。答えは簡単、大体が土地所有者はパーキングとして金儲けをする。最後の手段として。
 よって、吉原には無意味にパーキングが林立している。(イッセイ遊児)

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2007年3月23日 (金)

ホリエモン実刑判決で思う「ゆきひろは大丈夫か?」

 3月16日、ホリエモンこと堀江貴文被告に2年6ヵ月の実刑判決が下った。その量刑について、東京地裁は次のように述べている。

「損失額を隠ぺいするような過去の粉飾決算事例とは異なり、投資者に対し、飛躍的に収益を増大させている成長性の高い企業の姿を示し、投資判断を大きく誤らせ、多くの投資者に資金を拠出させたもので、粉飾額自体は過去の事例に比べて必ずしも高額ではないにしても、その犯行結果は大きいものがある。投資者を欺き、その犠牲の上に立って企業利益だけを追求した犯罪で、目的に酌量の余地がないばかりか、強い非難に値する」

 さて、この理由で実刑なら日興コーディアルグループは上場廃止にもならず、捜査の対象にすらなってないのがなぜかという疑問もわく。
 184億円の粉飾決算を行い、その決算をもとに500億円もの社債を発行しているのに、「成長性の高い企業の姿を示し、投資判断を大きく誤らせ、多くの投資者に資金を拠出させたもの」とは言えないのか?
 一部で安倍晋三首相が日興に有利なように働きかけをしたなどの報道も流れているが、真実のほどはわからない。ライブドア事件のおかげで東証が大混乱に陥ったこともあるだろう、堀江被告が捜査にも裁判にも対決姿勢をとり続けたことを重く見たとも考えられる。ただバランスが悪いことは事実。
 もちろん彼が無罪だとは思ってないし、そもそも彼にシンパシーを抱いていない(だって貧乏出版社から見れば敵でしょう。あの思考は!)。といっても検察と司法の偏った判断は、やはり気になる。

 そもそも検察はあれほどの人数を動員して、ライブドアに攻め込んだのだろうか? さまざまに報じられているが、「違法にさえならなければ脱法行為でカネ儲けて何が悪い」という打ち出しが、法治国家を司ると自負する検察を刺激した部分はあっただろう。

 さて、ここで気になるのが2ちゃんねるの管理者「ひろゆき」こと西村博之氏である。彼は巨大掲示板の管理者として、年収1億円近くあると自ら語っているにもかかわらず、名誉毀損などの民事訴訟で敗訴した賠償金などをほとんど払っていない。

 読売新聞(07年3月14日)の報道によれば、「未払いの賠償金が計約5800万円、情報開示を命じる判決などに従わないことによる制裁金が約4億4000万円にのぼる」という。しかし当の西村氏は「支払わなければ死刑になるのなら支払うが、支払わなくてもどうということはないので支払わない」「踏み倒そうとしたら支払わなくて済む。そんな国の変なルールに基づいて支払うのは、ばかばかしい」(『読売新聞』07年3月20日)と語っている。しかも西村氏は個人資産を意図的に隠している可能性が高い。

 この法治国家に対する挑戦的な態度を司法当局が快く思ってないはずだ。
 ただ民事だけに警察や検察が介入することはない。資産を開示させるのはプライバシーの観点から問題もある。だから西村氏は安心だ。
 果たして、そう言い切れるだろうか?

 例えば刑事の名誉毀損で逮捕してお灸を据えるという方法もある。実際、暴露本で有名になった出版社「鹿砦社」の松岡利康社長は名誉毀損で逮捕、192日も拘束されている。自ら裁判闘争を進めると宣言しており逃亡の恐れなどない。証拠隠滅も何も本は印刷や出版してしまっているわけだから隠滅しようもない。もちろん判決も執行猶予付きながら有罪だった。

 鹿砦社の松岡社長にはインタビューしたことがあるが、なかなか気骨のある人物だった。確かに裏取りが甘い記述もあったようだが、あくまで言論で訴えていた。それに高額の民事請求するのにも納得しかねるのに、逮捕など許されるはずない。
 いくつもの名誉毀損裁判を気にもせず暴露本を出版し続けていたので、検察が頭にきたというところだろう。

 もともと司法関係者にとって「2ちゃんねる」など好ましい媒体ではない。終戦記念日に靖国神社へと取材に行ったとき、「2ちゃん」と書いた看板を掲げ靖国参拝のオフ会を催している集団に強面の機動隊員が職務質問していた。右翼がパトカーの後ろに街宣車を止め、警察に声をかけられることなく参道に入っていったのと対照的だった。暴力団と見間違う格好の右翼でも、訳のわからないネットの集団よりはマシということか。
 
 先月の28日には「2ちゃんねる」で池内ひろ美さんを脅した人物が逮捕されているから、おそらく西村氏あるいは実質的に2ちゃんねるを管理していると噂される会社が警察にログを提出したのだろう。つまり推測だが、まだ警察側とは協力関係にある。
 しかし、西村氏の賠償金問題を無視してきた一般紙が報じた点を考えても、そろそろ潮目なのかもしれない。先述した松岡社長が逮捕されたときも、フリーウェイクラブの和合秀典会長の捕まったときも感じたが、権力はいきなり牙をむく。メンツを保つためならトコトンくる。

 さて、ゆきひろは大丈夫だろうか?(大畑)

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2007年3月22日 (木)

安倍政権、崩壊近し!?

 安倍内閣の支持率が下げ止まらない。3月16~18日に日経新聞社が実施した世論調査で2月より支持率が6ポイントも下落し、不支持率は4ポイント上昇した。不支持率が43%で不支持率が45%だという。支持率が不支持率を逆転したのは小泉前内閣の04年12月以来だとも報じている。
 この当時、小泉内閣は自衛隊のイラク派兵の1年延長を決めている。サマワの治安は安定していると小泉首相は強弁したが、国民は納得することなく支持率急落となったわけだ。「ポスト小泉」や「郵政花道論」がささやかれ出したころでもある。
 この後8月には政解散に打って出て自民党の大勝利を引き出したが、いわばこれはウルトラC。逆にいえば今年の夏の参院選で郵政解散並み、つまり違法すれすれの“サプライズ”がないと、安倍首相は政権を維持できないってことだ。

 いや、こう考えると結構深刻。
 しかもここ数週間、首相は「安倍カラー」を出すことに努力してきた。報道によれば、我慢して調整役に徹しても人気が下がる一方だから自分の思い通りすることにしたんだと。
 安倍首相の応援団と自称する山本一太議員などは、昨年12月から「安倍カラーを出せ」と主張し続けていた(ちなみに彼のブログは“山本一太の「気分はいつも直滑降」”って、まっすぐだけと落ちてるじゃん……)。おそらく右路線にしっかりと進路を取り、ブレずにといった辺りが安倍首相に期待されている姿勢なのだろう。ところが郵政造反落選組を復党させたり、先週書いた松岡利勝農相をかばい続けたりと、有権者の誰もが望んでいないところで我を張ったものだから調整役に徹しているより悲惨な状況に。

 従軍慰安婦問題でも持論を押し通したが、北朝鮮の拉致問題との整合性をロサンゼルス・タイムズに指摘される始末。あの靖国神社でさえ米国からの抗議で展示内容を変えたというのに、大丈夫かこんな筋に我を張って。自民党有志で作った「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」でも、慰安婦問題で謝罪を示した河野談話の変更を首相に求めるはずだったが、今の時期はよくないと取り下げている。つまり首相も「これ以上騒がないでくれ~」と願っていたわけだ。ここでも我を張る場を間違えたと……。

 自民党は「黒いハトと白いタカ」とも言われてきた。ハト派はリベラルだが利権にどん欲で、タカ派は強面で危険性こそ高いがハト派より潔癖だ、と。ところが、松岡センセイのかばい立てや日興コーディアルグループの粉飾決算問題での上場維持に安倍首相の影がちらついているという報道から受ける印象は「黒いタカ」。

 3月18日には、防衛大の卒業式で挨拶し「アジア太平洋地域は北朝鮮による拉致問題、核開発、弾道ミサイルの発射をはじめ困難な諸課題が存在している」と北朝鮮を名指しで批判した。対北朝鮮という最も得意な分野(というか、それ以外に強い分野を知らない……)で一席ぶったわけだが、米国が身をひるがえしたおかげで日本だけ浮き上がり、拉致問題にまったく進展がないなか言われても、という感じだろう。

 中川秀直幹事長あたりが「参院選は政権選択の選挙ではない」などと、参院選で負けても安倍政権が続くよう“世論作り”にいそしんでいるが、逆に言えば参院選の負けを予想しているわけで……。
 しかも、安倍待望論というのが「選挙に強い」という理由から出されたことを考えると、いよいよ政権崩壊も近いか!?

 というわけで、毎週安倍をウォッチするこの連載も終わりが近い。まあ、嫌いな人物を眺め続けるのもイヤなのでホッとしてますが……(大畑)

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2007年3月21日 (水)

■実録・コールセンター call4「ログがすべてを知っている」

 僕が勤務するコールセンターではオペレーターたちは常に時間に追われている。お客が「待ち」の状態にあることを示す積滞ランプが常につきっぱなしで、早く次の対応に出なければいけないからではない。1件の電話対応が終わると、その対応後にログ(記録)を専用のソフトに書き込むのが一連の流れになっている。そのログの時間が何分と決められているからだ。
 案内が簡単な内容ならログもすぐ書き終えることができる。しかし、込みいった内容になると書き終えるまでに時間がかかる。オペレーターの意思とは無関係に、電話案内が修了した途端にスイッチが入ったようにPCのモニター上でログに残された時間のカウントダウンが始まる。残された時間が1分を切ると不思議と「早くしないと」という焦りが働く。時間内にログを書き終わりそうにないときは、SV(スーパーバイザー)に「ログにもう少し時間かかります」と報告する義務がある。そして、ログを書き終わってモニタ上の「完了」をクリックした瞬間に、次の電話がかかってくる。
 簡単な案件の場合はラッキーである。ログを書き終わるのに2分もかからない場合は、残された2、3分の間に気分転換に伸びをしたり飲み物を飲んだりできるのだ……。喋る仕事なので、飲み物の持ち込みはOK。
 僕のいるコールセンターでは、休憩時間もカウントダウン方式でモニターに表示されるなど時間的な制約は厳しいけれど、センターの温度を一定に保つことに神経が使われていることからも、オペレーターへの体調面への気配りはされているような気がする。

 ログはPCにあらかじめ入れてあるコールセンター用に作られた専用ソフトに書き込むのだが、この専用ソフトがコールセンターには必要不可欠だ。このソフトには、過去にあるお客からどのような問い合わせがあったのかが数年前まで遡って残されている。膨大な量のネットワークが構築されている。最大何年前までのログが残されているかは分からない。なにかの用でコールセンターに問い合わせたとき、
「お客様番号をいただけますか」
 ということをほとんどの場合に聞かれると思うが、そのお客様番号を専用ソフトに入れると、お客の登録してある情報が一気にソフト上に表示されるのだ。もちろんログだけではなく、名前、電話番号、住所、契約日時、契約のプラン、料金の支払い方法、部署によっては利用明細まで表示される。僕のいるコールセンターで扱っているのはプロバイダの受付なので、ASDL回線設置の工事日や、契約時に付随した特典の内容などもログされている。
 電話の向こうでがなり立てるなどオペレーターに要注意人物と見なされた場合やクセのあるお客には、
「★注意★ かなり温度が高い方です」
「かなりのおじいちゃんです」
 などとログに書かれてある。
 時間に追われるオペレーターが書いたものだから、「保留が続いてあとにキレ、かんしゃくおさまらず」などという走り書きめいたものが見られる場合もある。
 このソフトに案内のログを残すことが、次回の案内をスムーズに進めることに役立てられる。
 ただ、使い方を間違えればこのソフトは怖い。検索の要領で無作為に電話番号を入れると、名前、住所、以下さまざまな情報が一気にモニター上に表れたりするのだ。もし、自分に対し良からぬ感情を抱いている人から、自分の名前で検索され、電話番号や住所や契約のプランや支払いの方法をのぞき見されているとなると誰だっていい気分ではないはずだ。
 そう考えると、もしかして時間を含む全体の管理体制も、オペレーターが怪しい動きをしないための手段とも思われてくるがそれは考えすぎだろうか。(浅野)

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2007年3月18日 (日)

■■お知らせ■■

「日曜ミニコミ誌」は来週から再開します。(編集部)

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2007年3月17日 (土)

『吉原 泡の園』 連載第10回 「ボーイの朝のお仕事」

■いつ爆発するか分からないマネジャー、勘違いして焼肉を大食いするイッセイ、葬式のような雰囲気で幕を閉じた新人歓迎会。イッセイの吉原のボーイとしての初日がようやく終わった。

     *    *    *

 その後、寮に着いたのは午前3時頃、優しい感じのボーイは、とうとう帰らなかった。僕は、ベッドの上段に寝ることにした。Eちゃんという違うボーイが、僕の部屋に移ることになったらしく、ベッドの下段に入る。1日目は、生まれて一番の衝撃と怒鳴り声との怒濤の日であった。

 朝、11時に起きるのがR店のやり方である。昼に店がオープンするのは別に決まりというわけではなく、それぞれの店の方針であるが、R店は11時30分には掃除を開始しないといけない。なんだかんだで、開店前準備でてんてこまいになるからだ。
 ちなみにオープンは13時である。
 掃除は、部屋の掃除をする者、車を洗車する者に、基本は分かれる。が、時にボーイが人手不足の際は、恐ろしいが、その2つをこなし開店に間に合わせるのだ。
「イッセイ、おまえ買い物いけ」
 そう言いマネジャーは買い物するメモと、買う店の簡易地図を手書きで書いてよこした。
「ほれ」
 そういって1万円ももらう。
「はあ」
 ボーっと考えていると。
「はよいけ」
 と来る。ヒャーと思いながら、送迎車に逃げ込む。送迎車には専用の携帯電話が装備されていた。それが鳴る。
「はい送迎車」
 出るとマネジャーである。
「サボるなよ、車ぶつけるなよ、事故るなよ」
 ガチャと切れる。
 買い物メモを見ると、それがまた細かい。ひとつの店で全て揃いそうなものなのに、これはここの店が安いと、主婦ばりの気配りを発揮する。

・コーヒー豆、茶→T店
・電球、ペン→100円ショップ
・ティッシュ→D店
・ウィスキー、ビール→G店
 
 などである。
 まずは1番はじめの店が見えてきた。T店である。が、そこの駐車場は止めるスペースがない。が、よく見ると、そこに1台分のスペースがある。
 急いで車を操作していると、
「ギギーッ」
 という鈍い音がした。慌てて車から飛び降り、見てみると、よその車にぶつかっている。
 送迎車のバンパーには無数に線が入ってしまった。が、相手の車は、幸いにして無傷だ。それが救いだった。車を入れ、買い物に走る。が、買い物に集中できるはずもなく、車が頭から離れない。
 がちがちに震え、汗も出る。オデブなので、汗をかきやすいが、違った汗が止まらず、そんなだから領収書をもらい忘れた。また、釣りも1円玉10枚あれば、10円玉にしてマネジャーに返すんだよ、と怒られ、領収書がないから、
「おめえ、飯でも食ってねえだろな」
 と疑われる。
 人間性が変わるとすれば、きっかけはこんなことなんだろう。ということの連続である。
 初めての仕事では、失敗はつきものである。また、それで初めて知り、成長もする。が、マネジャーは、失敗をした者を罵倒し、恐怖で支配する。
 自分の恨みを晴らすのだ。
「俺が下っ端のときにされた仕打ちを下っ端にしてやることが、俺をここまでがんばらせたんじゃ」
 恐ろしい男である。
 石川県、松井秀喜の出身地、ここがマネジャーの故郷である。よって、ボーイ達は、皆松井と比べられる。
「松井はここぞって時にすごい。おめえはどうだ。何かだめなんだよ」
 メジャーリーガーと比べても、職種に違いもあるし、意味もない。
 そして、この街に、最愛の娘と、1番目の奥さんを残してきたのだそうだ。(イッセイ遊児)

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2007年3月16日 (金)

どうにか松岡センセイを信じてみた VOL.2

 昨日は暖房費と高額の水の代金を507万円から差し引き、328万2306円まで金額を減らした。その続きだが、改めて気になってくるのが、センセイの答弁で出た「ナントカ還元水」という表現だ。還元水には人工的にも作れるが、浄水器がなかったのだから天然の還元水を指している可能性が高い。
 そこでインターネットでなるべく高い天然の還元水を探したところ見つけました。「白山命水」。そのお値段、20リットルで3150円。

●328万2306円÷3150円×20リットル

÷(365日-52日)÷5人=13.31リットル

 1人1日13リットルとちょっと飲めば、もう安心、ってオイ! こんな量は普通じゃ飲めません!! 今年1月に水中毒で亡くなった米カリフォルニア州の女性の飲んだ水の量は2リットル程度だと推測されているのだから。
 で、多量に水を摂取できる方法を調べてみた。センセイの言葉を信じてみようと決めたのだから仕方がない。
 候補に挙がったのは水ダイエット。諸説あって、何が正しいか分からないがモデルさんは1日に10リットル以上飲んでいるという話も。60歳を超えたセンセイがそこまで過激なダイエットするのもスゴイし、秘書4人も一緒にダイエットが科されるという地獄のような職場環境にも驚くが、何より困ったのがそれでも1人3リットル余ってしまうことだ。
 となるとアーユルヴェーダあたりしかあるまい。主にインドで行われているこの治療法には、胃酸過多を治すために大量の食塩水を飲んで吐き出すなどの方法がある。
 恐ろしい。だんだんセンセイがインドの仙人「サドゥー」(半裸でヒゲと髪を伸ばし放題にしている方ですね)に見えてきた。
 しかしここまで来て悲しい事実に気付いてしまった。松岡センセイのオフィシャルホームページのトップの写真は心なしか下腹が出てる? 少なくとも水中毒と闘いながらダイエットしている体ではない。
 となるとマイケル・ジャクソンのようにミネラルウォーターで風呂に入っていたとかか。しかも議員会館の事務所には風呂場などないから行水!? 金ダライなら約20リットルの水を入れることができる。ご存じの通り(?)センセイの部屋は冬でも常夏だから行水もOK。2日に1回、秘書も揃って事務所でミネラルウォーターで行水するなら説明は付く。水ダイエットとアーユルヴェーダのセットよりかは、いくぶんマシかもしれない。
 ただセンセイ1人ではなく、秘書も全員行水というのが少し引っかかる。胸をよぎるのは水の選定を誤っている疑惑だ。となると「ナントカ還元水」という文言はどうなる。かりにも国会での発言。軽々に扱うわけにはいかない。
 ここから導き出される結論は1つ。ボケでおられた。
 毎日、大量に飲んでいる水が問題になった。当たり前のことなのに周りがワンワンうるさい。じゃあ、答えてやるかと思ったらいつも飲んでる水の名前が出てこない。
「(う~ん、う~ん、あれ、何だっけ???)ナントカ還元水だ~!」てな具合だ。
 いや、仕方ないのだろう。厳しい選挙区を勝ち抜く一方、女性関係トラブル処理を食肉卸大手「ハンナン」関係者らに依頼しただの、NPO法人に認証に絡んでパーティー券を買ってもらったのだと、疑惑報道はてんこ盛り。こんな厳しい状況で17年間議員を続けてきて、62歳にもなればボケの1つもでよう。
 いやいや、本当に仕方がない。

 頭を切り換えて、330万近い金額を1年間で消費できる水を、健康関連グッズを販売するネットショップ「ケンコーコム」で調べてみた。
 値段の高い順に表示するとトップはミラクルスプリング。500ミリリットル24本で2万5200円。1本1050円だ

●328万2306円÷1050円÷(365日-52日)÷5人=1.99本

 おー! ついに現実的な数字にたどり着いた。秘書と一緒に毎日1リットル近くを飲み続ければ、お金を使い切ることができるわけだ。製造元のホームページに書かれた「飲み方について」には、

毎日、朝起床時と夜、寝る前などに1日1~2回、コップ1杯。
スポーツ後や疲れた時にコップ1杯または1本(500ml)。
糖尿、高血圧などの検査で標準より高い時には、毎日1本(500ml)

 と書かれている。約2本というのはやや飲み過ぎのきらいがあるが、毎朝晩に250ミリリットルのカップ1杯飲み、疑惑の追及に疲れた午後に必ず1本とか飲んでいれば「ノルマ」を達成できる。

 いや、これでも飲み過ぎだというツッコミはできれば避けていただきたい。次に高いミネラルウォーターは「飲む酸素α700」で500ミリリットル24本で1万4868円になってしまう。なんと1本619.5円。
つまり

●328万2306円÷619.5円÷(365日-52日)÷5人
   =3.38本(1690ミリリットル)

 成人男性が食物以外で飲料水として1日に必要な量は約800~1300ミリリットルといわれる。つまり「飲む酸素α700」を飲料水として使うと、毎日飲んでいる「ナノクラスター有機ゲルマニウム水」の100ミリリットルと合わせて、1790ミリリットルもの摂取することになる。
 これは運動して汗をかいたなと感じたときの摂取量になってしまう。別に汗をかいていないというのなら、また水ダイエットをしていることになってしまう。ただし年間2000リットルもの灯油を消費するセンセイの事務所が、そもそもサウナそ指向したものというのならつじつまは合う。

 というわけで、これまでの考察をまとめたい。現実味のある順番に並べてみた。
【ケース1】
・ミラクルスプリングを秘書4人とともに毎日1リットル摂取
・冬期は空調に加え石油ストーブを北海道なみにたく
・ナノクラスター有機ゲルマニウム水を秘書4人とともに毎日100ミリ摂取

【ケース2】
・事務所をサウナ状態にして「飲む酸素α700」を秘書4人とともに毎日1690ミリリットル摂取
・冬期は空調に加え石油ストーブを北海道なみにたく
・ナノクラスター有機ゲルマニウム水を秘書4人とともに毎日100ミリ摂取

【ケース3】
・2日に1回、秘書4人ともに事務所で行水
・冬期は空調に加え石油ストーブを北海道なみにたく
・ナノクラスター有機ゲルマニウム水を秘書4人とともに毎日100ミリ摂取

【ケース4】
・水ダイエットとアーユルヴェーダによる胃酸過多治療のため秘書4人とともに「白山命水」を摂取
・冬期は空調に加え石油ストーブを北海道なみにたく
・ナノクラスター有機ゲルマニウム水を秘書4人とともに毎日100ミリ摂取

 あー、スッキリした!
 これで松岡センセイの疑いが晴れた!

 もちろん詳細をセンセイが詳細を発表するときの資料として、このブログを参考にしてくれても構わない。(大畑)

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2007年3月15日 (木)

どうにか松岡センセイを信じてみた VOL.1

 安倍晋三首相は今週も強心臓だった!
「法律の求めるところによって報告がなされている」「農水相は法にのっとって適切に処理している」
 松岡利勝農相の光熱水費問題に対する彼のコメントである。
 松岡農相の資金管理団体の事務所は光熱水費が無料の国会議員会館だけ。それなのに5年間で2880万円、05年には507万円かかったと政治資金収支報告書に記載してあるのだ。電気、ガス、水道にしか使えない光熱水費を、基本無料の事務所でどうやって500万円以上使うのか? これはどう考えたっておかしい。
 

しかし一国の首相がここまで自信満々に「適切」だと言い切るのなら、やはり検証する必要があるのではないか。フッとそんなことを考えてしまった。「適切」だと信じている人など世の中にほとんどいない。そんな少数者の意見を愚直に受け止めるのも、また「弱者・少数者の味方である」と謳っている小誌の使命ではないか! 
 よし、2005年の光熱水費507万円の正当性を、私が証明証明してみせる!

 まず、松岡センセイの答弁を振り返ってみたい。3月5日の参院予算委では「ナントカ還元水のようなもの。暖房とか別途そういうものが含まれる」と。さらに9日には「今、水道水を飲んでいる人はいないでしょう」と記者に答えている。
 つまりセンセイは空調が整っている議員会館で電気やガス以外の暖房を使い、水道水以外の高価な水を飲んでいたということだろう。
 というわけで、まずは暖房。
 松岡センセイが寒がりであることは間違いあるまい。熊本県出身でもある。東京の寒さは堪えるはずだ。
 電気・ガスの暖房ならタダだし燃料を足す必要もないが、それもダメだと。「21世紀は環境問題が主役になる時代だと考え」、「化石燃料の使用を減らし、代わりに植物を中心とした生物資源を有効利用する政策、『緑のエネルギー革命』」の立ち上げを自身のホームページで宣言しているが、やっぱり石油ストーブがほしかったと。まあ、そういうこともあろう。
 センセイがどれほど寒がりか分からないので、少なく見積もっては申し訳ない。北海道の一世帯あたりの年間灯油消費量で計算したい。約2000リットル。2部屋合わせて18畳程度の広さに空調が入って、プラスこの消費量なら十分だろう。サウナになってしまうかもとの不安も残るが、九州人は寒さに弱いということでご勘弁願いたい。
 当時、18リットル灯油缶が1000円ちょっとだったところもあったようだが、天下の千代田区である。これも高めの1300円で計算させてたいだいた。

●(2000リットル÷18リットル)×1300円=14万4444円

 ストーブそのものも計上してあげたかったが、さすがにこれだけ寒がりなら前年に使った器具がないとは思えない。泣く泣く計算に入れるのを断念した。
 というわけで、

●507万円-14万4444円=492万5556円

 これが「ナントカ還元水のようなもの」に使われているわけだ。
 さて、このお金の使い道だが、3月9日の朝に芝博一議員や蓮舫議員など民主党議員4人が松岡氏の事務所を「襲撃」してくれたおかげで、浄水器がなかったことは分かった。まあ、500万弱を浄水器で使うのは無理がある。無いのも当然。
 現在、センセイが使っている水の最有力候補は「ナノクラスター有機ゲルマニウム水」である。500ミリリットル5250円。製造会社のホームページによれば、「毒素不純物を除去」するので「飲んで1分から10分で血液サラサラ健康状態」になるそうだ。
 人一倍、健康に気を使わなければいけない職業だけに、こんな水も必要なのだろう。この水をガンガン飲めば採算は合うと思いきや、そうは問屋がおろさなかった。
 実は「健康維持のための正しい飲み方」として、「1日約100㏄を3回(1回30㏄程度)に分けて、また体調の優れない場合は、1回50㏄程度を1日3回お飲みください」とホームページに書いてあるのだ。健康のために飲む水を飲み過ぎるわけにもいくまい。
 しかも1回が30CC(ミリリットル)ともなると、お客に出すのも不自然だ。テキーラグラスで水を出す国会議員はいない。やはりセンセイ当人と事務所スタッフ全員が飲み続けていると考えるべきだろう。
 議員会館で通常至急される秘書の机は3つ。しかし4人の秘書を付けている衆議院議員も少なくないと聞く。というわけで、水を飲んでいる人数が5人。
 週末ごとに東京から選挙区に帰り、選挙民にご挨拶をする議員も多い。2005年9月には選挙もあり、選挙区を訪れた日数も少なくなかったであろう。しかもセンセイは比例区の復活当選を経験しており選挙が強いともいえない。しかしセンセイは国政のために、きっと東京に居たはずである(つうか居なくちゃ、計算困る……)。恐らく地元に帰ったのは週1回、52日。
 というわけで、

●5人×(365日-52日)×100ミリリットル×
 (5250円÷500ミリリットル)=164万3250円

 年間これだけ「ナノクラスター有機ゲルマニウム水」に費やしたわけだ。これを先ほどの暖房費を除いた残金から引くと、

●492万5556円-164万3250円=328万2306円

 さあ、かなりお金もかなり減ってきましたよ!

というわけで続きは明日に!

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2007年3月14日 (水)

■実録・コールセンター ~派遣の時代~ call3「なんで繋がらないの?」

 利用しているサービスについてなにか分からないことがあり、コールセンターに電話したがなかなか繋がらない。そんな経験がある人は多いのではないかと思う。
「ただいま、電話が混み合っております……」
 丁寧な口調の女性による音声テープが延々と続いて次第にイライラしてくる、そんな気持ちはとても分かる。

「なぜこんなに繋がらないのか!」
 というクレームを貰うことは多い。だが、それに対する「答え」をオペレーターたちはあらかじめマニュアルとして教えられているので、だいたいの場合はそれをすらすら読み上げることでお客も落ち着いていく。
 なぜ電話が繋がらないのだろうか。少し考えてみれば分かるが、常にオペレーターの人数を適度に用意しておく、というのは不可能なのだ。いつ、どれだけの電話がかかってくるかなど正確には分からない。多めに人数を用意していたときに予想をはるかに下回る件数しか電話がかかってこなかったとする。それは多くのオペレーターが「待ち」状態になることであり、コールセンター側から見れば単なる人件費のロスでしかない。
「まったく繋がらないコールセンター」では話にならないし、多くのオペレーターに「待ち」が続く人余りの状態でもダメ。その中間が理想ということだろうか。
 それでも、僕の働くコールセンターでは常時、積滞ランプが点滅している。「ただいま、電話が混み合っております……」状態にあるお客が1人でもいると、このランプが点滅するようになっている。

「早く電話を取ってあげないと!」 
 積滞ランプが点滅しているとき、そんな雰囲気がセンターにあるかというと、そうでもない。
「何やってんだよ、早く電話に出ろよ」
 テープを延々と聞いているお客からすれば、こんな心境だろう。
 だけど、休憩になればランプが点滅してても席を離れるし、昼ご飯だって食べに行く。僕もはじめは「いいんだろうか」と思っていたが、当然だけどオペレーターだって飯は食べるしタバコだって吸いに行く。
 ランプが点滅するのはほぼ1日中ずっとだから気にしてもしょうがないし、休憩も昼ご飯休憩も契約で決まっているのだからそうする権利があるのだ……。
 僕の働いているコールセンターはクレーム系が多いそうだ。タバコを吸いに行くと、休憩室で「さっきのクレームはまいった」というような内容が話のネタになることは多い。不思議とそこで同じ立場の者同士で連帯が発生する。
 休憩室で電話の向こうの人たちのことを「客」呼ばわりしているオペレーターたちを知れば反感を覚える方もいるだろう。けど、電話が繋がらないことでイライラするお客の怒りを受け止めて案内をしているのはオペレーターで、電話が繋がらないのはオペレーターの責任ではない。
 もっと1件1件の処理を素早く終わらせることができれば、あるいは効率が上がってお客を待たせる割合が低くなるのかもしれない。
 それでも、僕の働くコールセンターの業務は「複雑系」であるらしいから、それは難しいかもしれない。

 コールセンターの仕事にも、比較的単純な業務とそうでない業務があるようだ。
 比較的簡単な業務とは、ダイレクトメールによる商品案内を見た顧客からの注文の電話を受けるという類のもの。顧客の住所とどの商品をどれだけ発送するのかということだけを聞き取って電話案内は終わり。あとは聞き取った内容を伝票に記入して完了。伝票は定期的にまとめて回収される。単純な流れなのでパソコンを使わない場合もある。
 一方、僕の業務では、相手の要望を聞き取り、相手が望んでいる情報を案内したり手続きをしたりして、手続きを行った場合はそれを実際に反映するために各部署に連絡するまでが一連の業務になっている。どうしても時間がかかる。

 特に、お年寄りの方は時間がかかってしまうのはしょうがない。パソコンのことをほとんど分かっていないおじいさんからから、パソコンの設定に関連する問い合わせがあったようなときは、どうしても時間がかかる。
「いちど、お手数ですが再起動していただけないでしょうか」
 と僕が言うと、再起動が分からないという。なんとか再起動の手順を案内しても、そこからまた起動までに時間がかかってしまう……。
 やっと案内が終わった、と思って次の電話を取ると、「なんでこんな繋がらんないの?」
 とドスを聞かせた低い声が聞こえてくる……。(浅野)

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2007年3月 9日 (金)

セカンドライフと現実認識

 インターネット上にある「セカンドライフ」の人気が高まっている。すでに知っている人も多いだろうが、アバターと呼ばれる自分の分身を作って遊べるオンラインゲームである。ネット上の街を歩き回り、他人と言葉を交わすことも可能。ゲーム内の通貨であるリンデン・ドルを使えばセカンドライフ内で使える商品を買うこともできる。イメージ的には目的を限定されないオンラインゲームといったところか。

 ただし「セカンドライフ」では経済活動が自由に行われている。これまでのオンラインゲームとは、そこが決定的に違う。土地を購入できるし、店を立てて自分で作った商品を売ることもできる。またリンデン・ドルを実際のドルに換金することも可能なのだ。すでにセカンドライフ内の土地取引で、かなりの金を儲けた人までいるという。
 こうなるとゲームというより、もう1つの「現実」だ。もちろん企業も、こんなビジネスチャンスを放っておかない。ニッサンやトヨタなどもセカンドライフ内に土地を買い、宣伝用のショールームなどを作り上げている。
 
 セカンドライフ内で売られている商品は安い。バイクでも日本にして500~600円ほど。クリエーターの時給にもならない金額である。ただよくよく考えてみれば、セカンドライフ内の商品はネット空間でしか使えない。しかも通常のオンラインゲームのように、そのアイテムを持てばゲームに有利というものでもない。

 数年前、テレビのプロデューサーから「番組でも商品でも、とにかく重要なのはデザインでしょう」と言われたことがある。「中身だろやっぱり!」などと内心呆れたのだが、じゃあ、セカンドライフで買う商品の「中身」ってなんだ??? 

 経済が「架空」のものであることは説明するまでもないだろう。実体経済の何十倍ものお金が金融世界を巡っている。そうした資金の持つ破壊力のすさまじさを、ホリエモンは私たちに見せつけた。
 企業、六本木ヒルズ、ばか高いTシャツなどなど、彼は高額所得者としての生活を披露した。しかしライブドアの利益そのものが「架空」だったと判明した現在、彼が買った「商品」が薄っぺらなものに見えてしまう。実際、あれほど隆盛を誇った六本木ヒルズから撤退する企業が増えているとの報道も流れている。
 
 いや、よくよく考えてみれば「架空」の商品に囲まれて、「架空」の人生を生きているのはホリエモンだけではない。地震がきたらいきなり崩れるかもしれない住宅やマンション、明日クビを切られるかもしれない会社への献身などなど。自分の足場と思っているものは案外脆く崩れやすい。
 もちろん人間関係も例外ではない。
 不倫している既婚女性を取材したとき、旦那さんは絶対に見破れないだろうと感じたことがある。美しく、家事も完璧で、夫とのコミュニケーションもうまくいっている。それなのに彼氏が居て、兄弟のうち1人は夫の子ではない。
 現実がどんどん実体を失っていく一方で、架空世界のリアリティーがどんどん上がっていく。私たちはそういった時代に生きているということなのだろう。

 近年、現実感を得られない離人症を訴える患者が増えているという。その一方で突飛な妄想につきまとわれる統合失調症の患者が減っているそうだ。現実が揺らげば、その逆ベクトルの妄想にも「力」がなくなるということかもしれない。
 セカンドライフにはまり、実生活の時間とセカンドライフで過ごす時間が一緒になったら現実の認識は変わってくるのだろうか? 最近、そんなことを考えている。(大畑)

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2007年3月 8日 (木)

安倍晋三は首相を研修生だって!?

 安倍晋三首相について毎週書くと決めてから、けっこう安倍首相の動向が気になる。6日は赤坂プリンスホテルで成蹊大の同窓生と会っていたのかとか、首相動静を読みながら頷いちゃったりしている。
 うーん、好きでもない男のストーカーって、けっこうきついかもしれません……。
 
 さて、2月28日から首相の言動をウォッチしていたわけだが、当初かなり気をもんだ。イマイチ面白いことをやってくれない。連載前は毎週のように各方面から批判を浴びていたはずなのに。
 しかし首相は私の期待を裏切りはしなかった。
 3月3日、夜っぴての国会審議で午前4時過ぎ公邸に戻ったにもかかわらず、翌日の午前10時過ぎからチンギス・ハーンの半生を描いた映画を鑑賞。おそらく、大帝国を築いた男に何かを学んじゃったのだろう。5日から始まった国会審議ではこれまでの優柔不断さがウソのように、強気の答弁を繰り返したのだ!
 内閣支持率が下がる一方だとの質問には、「そもそも支持率のために政治をしているわけではない」と切り返し、道路特定財源の見直しを批判されても「50年ぶりの改革だ。そういうことは今までできなかったじゃないか。(見直しの)法案を出すと決めたのは私が初めてだ」と自慢。一般財源化が既得権者の反対に遭ってほとんど進まなかったことも、ムダな道路を造らないようにする歯止めもかけられなかったことも忘れてしまったようだ。
 しかも、こうした「支持率のため」じゃない強気の発言も、新聞各紙で一斉に支持率悪化の対策として報じられる始末。
 格差については、「格差はいつの世にもある」と答弁したうえで「06年1年間だけで14万人フリーターは減っている。我々の進めている政策で恩恵が広がりつつある」(07年3月6日『朝日新聞』)と「成果」を強調した。この「成果」の基になったのが総務省が発表した06年平均の労働力調査なのだが、当の統計について厚生労働省は「景気回復で、フリーターと新卒者が正社員になる常用雇用化が進んでいる」(07年3月2日『朝日新聞』)と結論付けている。首相の「再チャレンジ」が機能したわけでもない、「景気が回復したんですよ」ってことだ。おそらく今頃「我々の進めている政策」のおかげで株安となり、フリーターが増えるであろう現実を首相も反省していることだろう。

 強気発言はこれだけではない。
 従軍慰安婦問題について、首相の公式謝罪を求める決議案が米下院で採決されても「我々が謝罪するということはない」とキッパリ! 言っちゃった。米国に意見しちゃった。大丈夫か、北朝鮮以外への強気。主張は違うが、こんな強気を米国に示し続けられるなら見てみたい気はする。

 いずれにしても付け焼けば的な強気だらけで、かなり危なっかしく感じたが、ただ1つ「こいつは大物かも」と感じる発言があった。
「首相(の座)は鋳型に入れて型を作るのではない。鍛造品(たんぞうひん)のようにたたかれながら精神力も鍛えられていく。今まさにその途上」(『毎日新聞』07年3月6日)
 いやー、参った、参った!
 日本のトップは学びの最中だったのね。それじゃあ、心許なくても仕方ない。なんせ本人が自覚しているのだから文句の付けようもない。まさか首相が研修生だとは思わなかった。
 精神力が鍛えられ終わる前に政権が終わらないことを祈るばかりだ。(大畑)

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2007年3月 7日 (水)

■実録・コールセンター ~派遣の時代~ call2「バカヤローと言い返せない」

 NTTの電話番号案内「104」、電気やガスなどインフラを扱う会社、コンピュータのソフトウェア、引っ越し業者、家電製品のサポート、通販、ちょっと挙げるだけでも実に多分野でサポートセンターが活用されているのが分かる。
 だが、対応開始の一言は、
「お電話ありがとうございます、○○(企業名)○○(部署名)サポートの○○(名前)でございます」。
 であるパターンがほとんどであるように思う。
 コールセンターで働き始めた後に、あるソフトウェアのサポートセンターにユーザー側の立場から電話をかけたところ、僕が日頃喋っているものと全く同じような「お電話ありがとうございます……」が受話器の向こうから聞こえてきて、会社は違えど読み上げる内容は同じなのだということに初めて気付いた。
 この始まりの文言は「オープニング・スクリプト」と言われている。そんなに長くはない文章なので覚えるのは難しくないが、業務研修では「企業の顔として、印象が決まる瞬間なのでもっと明るく、ゆっくり」という風に繰り返し指導される。
 僕が働いてるのはプロバイダだが、実はプロバイダが直接コールセンターを直接設置しているわけではない。コールセンター運営を専門とし、業務として受注している企業があるのだ。
 コールセンターにプロバイダの社員はいない。これは推測だが、「あそこのコールセンター会社は丁寧な対応ができない」という評判が立てばコールセンター業務を発注する企業にとって「顔」の代役を務めてもらうに見合う魅力は減少してしまうのではないか。

 電話をかけるお客から見れば、コールセンターに電話をかけることは1日の中でもほんの僅かな時間だ。しかし、逆の対応者の立場から見れば、電話が1件終わればまた次の客、終わればまた次の客、と延々と対応が続く。「バカヤローが」と罵られたすぐ後でもにこやかに「お電話ありがとうございます」を維持するのはけっこうつらい時もある。
 仕事なんだから多少のつらさなど当然だろうという声が聞こえてきそうだ。しかし、この連載で書いていきたいのは「バカヤローと罵られるからコールセンターはつらい」などといったことではない。
 たしかに「バカヤロー」と罵られるのはつらい。これを読んでる人の中には、
「見知らぬ輩にバカヤローなんて言われて黙ってるくらいならちょっとくらい言い返してやればいい。お客様意識を振り回すヤツには、コソッとバカヤローを言い返してやればいい」
 と思われる人もいるかも知れない。
 ただ、オペレーター(電話案内する人)がそれをできない決定的なシステムがコールセンターの内部に存在していることに、僕は働き出して初めて気付いた。
 バカヤローと言い返せないシステムが、ある意味コールセンターの運営システムの全てといっていい気がする。それは「盗聴と見届け」とでも言えばいいのだろうか。

 バカヤローと言い返せない理由その1が、「盗聴」である。つまり、電話を受けるオペレーターをまとめるSV(スーパーバイザー)が、
「あそこの電話、だんだん込み入った内容になってきたな」
 と判断したとき、SVがその対応の内容を「聞き取り」に入るのである。直接横に来て聞くのではなく、離れた場所から、オペレーターが気付かないうちに、何の前触れもなくモニタリングに入っているのである。つまり、対応者は、いつ自分の対応をSVに聞かれているかどうかわからないのである。PCのネットワークが構築されているのでモニタリングに入るのはSVにとってごく簡単だ。たった1度マウスをクリックするだけでいいのだ。
 運営者から見れば品質管理なのだろうが、オペレーターにとっては業務の8時間、いつ人から聞かれているかわからない状態がつづく。盗聴といっても過言ではない。だから、お客に罵詈雑言を浴びせられたとしても、文句を言い返すわけにはいかない。ひたすら「申し訳ございません」を繰り返し続けるしかない。お客からSVから、どうしようもなく板ばさみの状態なのだ。
 もう1つの理由が「ログ(対応記録)による見届け」だ。
 もし、お客が怒って電話を切ってしまったとする。お客が怒って勝手に切ってしまったのだからそれで終了でいいではないか、ということにはならない。
 まず、向こうが勝手に電話を切ってしまったとしても、1つの案件は1人のオペレーターによって「完了」されなければならないことになっている。だから、お客が怒って電話を切っても、こちらから返電(電話を返す)し、案件を終了させなければならないのだ。
 どんな内容であれ、電話を取ったら必ず専用のアプリケーションでログを残さなければならない。お客がキレて電話を切った。そのまま案件を放置しておくと、そのログをチェックしたSVから「ちょっと、これどうなってるの? 対応を完了させてくださいね」となるのだ。

 だから、オペレーターはどんな状態でも、わずかでも文句を言い返せない。
 ひたすら低姿勢で「まことに、おっしゃる通りでございます」とご機嫌を伺い、お客の温度が下がるのを待つ。なんとか電話の対応が終わったら、SVが「しつこい客だったね」と慰めてくれることもある。
 どこのバイト先や会社でもそうかもしれないが、お客に対する態度は面従腹背だ。
 ちなみに、サービスの内容や運営の不備にいきり立ちながら「ちゃんと上に伝えとけ」と言って電話を切るお客もいるが、サービス提供もとのプロバイダにそれが伝わることは、まずないと言っていい。「サービス改善策」を上に伝えるシステムなんて聞いたことがないし、オペレーターはいちいち「改善策」をログに残すなんて、めんどくさくてしないからだ。(浅野)

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2007年3月 6日 (火)

教えてください

いつもご愛読ありがとうございます
実は皆様にお聴きしたことがあります
3月4日(日)午後11時から12時にかけて
当ブログへ約2時間で数千人のアクセスが殺到しました
「光クラブ」以来の短時間集中です
別に大した記事は書いていません
リモートホストではplala.or.jpが抜きん出ています
原因がわからなくて眠れません
といいつつ寝る前に皆様にご質問
わがブログの何がどうヒットしたのでしょうか
(編集部)

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2007年3月 5日 (月)

キリンは本当に1日20分しか睡眠をとらないのか

Ki  仕事にカタがつかないとき、やむを得ず徹夜することがある。
 仕事で徹夜というとなにか「仕事してる感」が醸し出されるような気もするが、長い時間をかければその分だけ量をこなすことができるかというとそうでもない。集中力が低くなるので効率が悪い。結果的にそんなにはかどらなかったりもするのでなるべく避けたいところではある。
 もちろん眠気との闘いでもあるけど、それに打ち勝つのは難しい。カフェインや「眠眠打破」を見方にしても勝率は五分に届かないのではないか。

 キリンは1日に20分しか睡眠を取らないという。はじめ聞いた時、冗談だと思った。しかも、立ったまま寝るのだという。生きとし生けるもの睡眠が必要で、当然動物たちも1日のうちそれなりの時間を眠りにあてているものだと思いこんでいた。しかしよく考えればそれでは渡り鳥や回遊魚について説明がつかないのである。
 春眠の魅力については誰もが知るところだと思うので説明不要だろうが、一方で暁を覚えず本を読み続けたり趣味の時間に没頭できるようになれば、それもまた魅力的だろう。
 魅力的な生活へのカギはキリンが握っているのである。その前に、本当にキリンが1日に20分しか眠らないのかを確かめる必要があるだろう。

 上野動物園は明治15年(1882)に日本初の動物園として設立された。不忍池の一部を含む14ヘクタールという広大な土地に500種を超える動物がおり、年間の来場者数は300万を超える。
 じつに開園から120年以上。第二次大戦中は、爆撃を受けた際に檻から猛獣が逃げ出して民間を巻き込む事態が起きかねないとして多くの動物が殺されたいういたたまれない歴史もある。演劇の題目にもなったりしている象のジョン、花子、トンキーは有名。

 休日の上野動物園はかなりの人が来場していた。家族連れはもちろん、若いカップル、外国人のグループなども多い。動物の檻の周りの人だかりでは動物を撮ろうと携帯・デジカメが至るところから突き出されている。
 キリンは園内の西園に配置(?)されているが、檻の中にはいなかった。見えない場合は食事を取っているので施設の中に入って下さいと立て札がある。
 キリンは建物の中で、高い位置に取り付けられた桶に頭を突っ込んで草を食んでいた。飼育されているのは2頭。当然だが、起きている。眠ってはいない、が、眠そうに見えるのはいわゆる「自顔」なのか。圧倒的に首が長い。キリンについて書かれた立て札によると、サバンナで肉食動物から身を守るために巨大化したとのこと。
 1時間ほど様子を観察していたが眠る様子はない。周りに人だかりがしているから当然か。
 キリンの睡眠時間について知りたいとインフォメーションでたずねてみた。ヘンなヤツだと思われるかも覚悟してたけど、受付の女の人がにこやかに対応してくれて、「どうぞ」と受話器を渡された。
 受話器の向こうからは人の良さそうな初老くらいの男の声が聞こえてきた。動物のことについて知りたいことは、詳しい職員さんが教えてくれるということらしい。なかなかいいサービスなのである。

 結論から言うと、キリンは20分しか寝ないというのは正確ではないらしい。
「サバンナにいる野生のキリンはたしかに、横になって寝る時間が1日に20分くらいしかないという報告がありますよ。ただ、立ったまま寝る場合がほとんどなので、1日に20分しか寝ない、ということはない。サバンナでは敵と対峙したとき、一瞬が勝負になりますからね、そんな寝ていられないでしょう」。
 一瞬が勝負になりますからね、と言う職員さんの声が覇気に満ち満ちている。ムツゴロウさんに似たものを一瞬感じた。
 ここで疑問に思ったのは、上野動物園のキリンが野生であるかどうかだ。
「ここにいるキリンは、アフリカから連れてきた野生のキリンではありません。動物園には野生の動物を連れてくることは少ないのです。今いるキリンは、ここに来る前は多摩動物公園から借りてきました」。
 思わぬところで動物園事情を知ってしまった。レンタル・ジラフだったのである。
 だとすると、野生ではなく天敵もいない動物園内では、キリンは惰眠をむさぼるようになっている可能性だって考えられるのではないか。
「ええ、野生のキリンよりも、眠ってると思います、たぶん……」。
 天敵がいないのに「眠るな」というのも酷だが、野生のキリンが警戒のアンテナを張り巡らせ立ったまま眠るのに比べると、どうしても「だらしない」感じがしてしまう。さて、キリンにとってどちらが幸福なのか?

 生活横になって眠る時は、犬の「お座り」のような格好で、首を曲げてコンパクトな体勢になって眠るそうだ。首を長くするまでもなく春が到来しつつあるからか、多くの動物は檻の中で気持ちよく眠っていた。勝手気ままに眠り続ける動物は、見向きもされない。(宮崎)

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2007年3月 2日 (金)

テレビ界のヤラセ体質は直らない

 ブログの更新をサボっているうちに、『発掘!あるある大辞典Ⅱ』のやらせ問題がえらく盛り上がっていたようだ(そして収束しつつ……)。おそらくこの問題に最も戸惑っているのはテレビ局と番組の制作会社に違いない。
 なんでこんなのが問題になるの? と。

 煽るつもりはないが、テレビ番組に「やらせ」が横行していることはテレビ業界に近い人は誰でも知っている。10年近く前の話になるが、私も知人から海外を舞台にした番組でのヤラセを制作会社社員から聞いた。

 アフリカだかパプアニューギニアで取材に出掛けたら、原住民がジーンズにTシャツを着ていたという。民族衣装で派手に彼らを出迎える様子を撮るつもりだったが、先進諸国と同じような衣服では絵にならない。仕方なく村民を民族衣装に着替えさせた。
 ところがさらなる問題が発生する。歓迎の踊りを頼んだら「そんなものはない」と断られてしまったのだ。これもテレビではお決まりシーン。放映しないわけにはいかない。仕方なくディレクターが振り付けを考えて村民に教え、カメラの前で踊ってもらったという。
 刀も提げず、着物も着ていない日本人に驚いた海外メディアが町中の人を着替えさせ、殺陣まで教えて立ち回らせたようなものだ。

 当時はこんな話も社外秘ではなかった。むしろ笑い話。ただ「演出」が行き過ぎただけ。制作者側に罪悪感などあろうはずもない。この話をしてくれた当人はこのヤラセに関与していなかったが、別の実験検証番組で数値をごまかしたと話してくれた。今なら新聞で叩かれまくりだっただろう。
 結局、こうした体質が嫌になり、彼はテレビ業界を離れることになったが……。
 
 繰り返すが10年も前の話である。昨日今日の問題ではない。テレビ番組の「ヤラセ」はすでに体質である。
 では、どうしてここまでヤラセがはびこったのだろうか?
 テレビ局が制作会社に丸投げし、番組をチェックできないからだとの声もある。確かにそれもあろう。しかし、もっと大きな問題はテレビ局の予算配分ではないか。
 キー局の年収は30歳で1000万円を超えるともいわれる。しかし制作会社は30代中頃で、その半分をもらっているかも怪しい。これが番組の下準備をする制作会社のアシスタント・ディレクター(AD)ともなれば、状況はさらに悪化する。寝るヒマを惜しんで働いて雀の涙。

 いくらADが「大宅図書館」で関連の雑誌記事を集めても、時間がないから万全な調査などできない。仕方ないから「現場処理」となる。ところが取材で予定通りのコメントが返ってくるわけではない。それでも撮り直す時間や経費がない。結局、構造的にヤラセをするしかないのだ。
 おかげで誰もヤラセが悪いと感じなくなってしまった。時間的・経済的に不可能な改善など実施されるはずがない。キー局の社員の給料を下げ、制作会社にカネを回せばヤラセもかなり少なくなるだろう。

 じつはテレビ業界と同じような矛盾を抱えていると感じるのが原発産業だ。2002年に東京電力の自主点検データ改ざんが発覚してしばらくたった頃だろうか、原発の検査を担当していた会社の上層部の奥さんから旦那さんの愚痴を聞いた。
「あんな改ざんなんて大したことない。全部バレたら原発なんか動かせないよ」

 構造的な矛盾が業界全体を覆っているとき、内部の人間がその根源に手を突っ込んで改善できるはずがない。「あるある」と最近の原発のデータ改ざん問題で、そんなことを改めて考えさせられた。(大畑)

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2007年3月 1日 (木)

■実録・コールセンター ~派遣の時代~ call1「入社」

 積滞ランプが1時間以上も点灯したまま。
 SVは次々に持ち込まれる難度の高い案件に追われっぱなし。
 僕の隣のオペレーターは頭を掻きながら必死にナレッジ集を探し続けている。
 そして、僕の受話器の向こうのお客は、キレまくって僕に怒鳴りたてている。
 僕が特に悪い事をしたわけではないが、受話器の向こうの客は、こちら側がしでかしたらしい手続きの不備についてキレまくっている。
 僕に投げかける言葉は罵詈雑言に近い。「あんたら」と言われてもハッキリ言って困る。だからといって、激高したオバハンにキレ返すわけにもいかないのだ。忍耐。ここは忍耐だ。

 僕は派遣社員として東京の某プロバイダのサポートセンター(通称サポセン)に数ヶ月前から派遣されている大学生。なんとか就職も決まり残された単位も少ないので、しばらくお金を稼ぐため派遣会社に登録した。現役合格じゃなかったから派遣の面接でも学生だと思われずに済んだ。

 早々に派遣先が決定し、配属されたのは西新宿にある某プロバイダのサポートセンターだった。もともとコールセンター志望だったのは、決まった就職先がコールセンター運営に関する業務も受注しているから、なにかの勉強になるかと思ったからだった。

 これから数回にわたり、『記録』編集部のブログの場を借てコールセンターの実態について書いていこうと思う。コールセンターに勤務された経験のない方にはピンと来ないと想定されるけど、僕はこの現場に足を踏み入れて、
「コールセンターとは実際こんな世界だったのか!」
 と軽くカルチャーショックを受けた。
 センター内の環境と電話をかけてくる顧客、それにカスタマーサポートという仕事について書こうと思う。一般の人からは声だけでのみ接する相手だけに、その内部からの様子を描く事はそれなりには面白いモノとして読んで頂けるのではないかと思う。

 僕は、もともとあまりコールセンターについていい印象を持っていなかった。僕自身HPを作っているので、たまにカスタマーサポート(あるいはユーザーサポート)に何かをたずねてお世話になることは度々ある。けれど長時間待たされる、たまに要領を得ない案内をよこす担当者にぶつかる等でハッキリ言ってイライラさせられる時があったからだ。
 就活が上手くいかない時、コールセンターの担当者にやけに高みから見られているような、怠慢な態度を取られてる気がして、
「どうせ俺はお前の在籍するような大企業には入れないよ!」
 と内心イラついてたこともあった。
 けれど今回派遣された先は、僕のHPスペースを提供しているプロバイダと同じくらいの規模で、トップ10には必ず入る会社だった。急に、たずねる側から「たずねられる側」に回る事になったのだ。
 はじめに驚いたのが、カスタマーサポートの担当者はプロバイダの社員ではなかったことだった。ずっと大手プロバイダ社員だと思って話していた人は、派遣会社から派遣されてきた社員だった。
 研修の同期として他の派遣会社から派遣されてきたが一緒になって6人で業務研修を受ける事になった。皆僕より年上で男と女の比率は4対2。中にはどう見ても40歳以上に見える人が男女一人づつ。口に出したりはしないが、自然と「リストラに遭った?」と思ったりした。
 僕は、研修期間は時給1300円、常勤後は1500円という契約だ。
 他の人たちの契約が気になった。他の人たちがもし1800円の契約だったらやりきれないじゃないですか。
 初めて天井の高い大きなフロアのコールセンターに足を踏み入れた時の印象は、
「たくさんの人がいる割にはやけに静かだな」
 だった。
 大勢でハキハキした態度で喋りまくってるイメージがあったのだが違ってた。後から気付いたのだが、フロア全体が奇妙に静かなのは大声で対応していると周りの対応者の邪魔になるからだ。
 
 次回からコールセンターについてより詳しくレポートします。(浅野)

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