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2007年3月 7日 (水)

■実録・コールセンター ~派遣の時代~ call2「バカヤローと言い返せない」

 NTTの電話番号案内「104」、電気やガスなどインフラを扱う会社、コンピュータのソフトウェア、引っ越し業者、家電製品のサポート、通販、ちょっと挙げるだけでも実に多分野でサポートセンターが活用されているのが分かる。
 だが、対応開始の一言は、
「お電話ありがとうございます、○○(企業名)○○(部署名)サポートの○○(名前)でございます」。
 であるパターンがほとんどであるように思う。
 コールセンターで働き始めた後に、あるソフトウェアのサポートセンターにユーザー側の立場から電話をかけたところ、僕が日頃喋っているものと全く同じような「お電話ありがとうございます……」が受話器の向こうから聞こえてきて、会社は違えど読み上げる内容は同じなのだということに初めて気付いた。
 この始まりの文言は「オープニング・スクリプト」と言われている。そんなに長くはない文章なので覚えるのは難しくないが、業務研修では「企業の顔として、印象が決まる瞬間なのでもっと明るく、ゆっくり」という風に繰り返し指導される。
 僕が働いてるのはプロバイダだが、実はプロバイダが直接コールセンターを直接設置しているわけではない。コールセンター運営を専門とし、業務として受注している企業があるのだ。
 コールセンターにプロバイダの社員はいない。これは推測だが、「あそこのコールセンター会社は丁寧な対応ができない」という評判が立てばコールセンター業務を発注する企業にとって「顔」の代役を務めてもらうに見合う魅力は減少してしまうのではないか。

 電話をかけるお客から見れば、コールセンターに電話をかけることは1日の中でもほんの僅かな時間だ。しかし、逆の対応者の立場から見れば、電話が1件終わればまた次の客、終わればまた次の客、と延々と対応が続く。「バカヤローが」と罵られたすぐ後でもにこやかに「お電話ありがとうございます」を維持するのはけっこうつらい時もある。
 仕事なんだから多少のつらさなど当然だろうという声が聞こえてきそうだ。しかし、この連載で書いていきたいのは「バカヤローと罵られるからコールセンターはつらい」などといったことではない。
 たしかに「バカヤロー」と罵られるのはつらい。これを読んでる人の中には、
「見知らぬ輩にバカヤローなんて言われて黙ってるくらいならちょっとくらい言い返してやればいい。お客様意識を振り回すヤツには、コソッとバカヤローを言い返してやればいい」
 と思われる人もいるかも知れない。
 ただ、オペレーター(電話案内する人)がそれをできない決定的なシステムがコールセンターの内部に存在していることに、僕は働き出して初めて気付いた。
 バカヤローと言い返せないシステムが、ある意味コールセンターの運営システムの全てといっていい気がする。それは「盗聴と見届け」とでも言えばいいのだろうか。

 バカヤローと言い返せない理由その1が、「盗聴」である。つまり、電話を受けるオペレーターをまとめるSV(スーパーバイザー)が、
「あそこの電話、だんだん込み入った内容になってきたな」
 と判断したとき、SVがその対応の内容を「聞き取り」に入るのである。直接横に来て聞くのではなく、離れた場所から、オペレーターが気付かないうちに、何の前触れもなくモニタリングに入っているのである。つまり、対応者は、いつ自分の対応をSVに聞かれているかどうかわからないのである。PCのネットワークが構築されているのでモニタリングに入るのはSVにとってごく簡単だ。たった1度マウスをクリックするだけでいいのだ。
 運営者から見れば品質管理なのだろうが、オペレーターにとっては業務の8時間、いつ人から聞かれているかわからない状態がつづく。盗聴といっても過言ではない。だから、お客に罵詈雑言を浴びせられたとしても、文句を言い返すわけにはいかない。ひたすら「申し訳ございません」を繰り返し続けるしかない。お客からSVから、どうしようもなく板ばさみの状態なのだ。
 もう1つの理由が「ログ(対応記録)による見届け」だ。
 もし、お客が怒って電話を切ってしまったとする。お客が怒って勝手に切ってしまったのだからそれで終了でいいではないか、ということにはならない。
 まず、向こうが勝手に電話を切ってしまったとしても、1つの案件は1人のオペレーターによって「完了」されなければならないことになっている。だから、お客が怒って電話を切っても、こちらから返電(電話を返す)し、案件を終了させなければならないのだ。
 どんな内容であれ、電話を取ったら必ず専用のアプリケーションでログを残さなければならない。お客がキレて電話を切った。そのまま案件を放置しておくと、そのログをチェックしたSVから「ちょっと、これどうなってるの? 対応を完了させてくださいね」となるのだ。

 だから、オペレーターはどんな状態でも、わずかでも文句を言い返せない。
 ひたすら低姿勢で「まことに、おっしゃる通りでございます」とご機嫌を伺い、お客の温度が下がるのを待つ。なんとか電話の対応が終わったら、SVが「しつこい客だったね」と慰めてくれることもある。
 どこのバイト先や会社でもそうかもしれないが、お客に対する態度は面従腹背だ。
 ちなみに、サービスの内容や運営の不備にいきり立ちながら「ちゃんと上に伝えとけ」と言って電話を切るお客もいるが、サービス提供もとのプロバイダにそれが伝わることは、まずないと言っていい。「サービス改善策」を上に伝えるシステムなんて聞いたことがないし、オペレーターはいちいち「改善策」をログに残すなんて、めんどくさくてしないからだ。(浅野)

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コメント

なんか、どちらも当然のシステムのようにしか…。そりゃ働いてる人はキツイのでしょうが、客商売ですからね。要望を上に上げるシステムがないのは、いかがなものかと思いますが。

投稿: ヌカ次 | 2007年3月 7日 (水) 19時57分

記事を読ませて頂いた感想です。

問題の1つは怒りの矛先です。
コールセンターのオペレータ個人は当事者ではありません。
オペレータにどんなに罵詈雑言をぶつけたところで
単なる八つ当たりにしかならない事を消費者は知るべきです。

もう1つは客の方が立場が上であるという思い込みです。
客は金を払う代わりに商品を受け取るのですから、
客と業者は本来対等な立場です。
にも関わらず、企業が下手な態度を取るのは
その企業の戦略(下心・建前)であって、個人ひとりひとりの
本心では誰も自分より客のほうが偉いなどとは思っていません。
ただライバルより多くの金が欲しいだけです。
金を支払う側はそこを勘違いしてはならないと思います。

お金欲しさに奴隷まがいなこと(やりたくも無い事)を
しなければならないというのは悲しい事ですが、
今の社会の現実です。

投稿: lan | 2007年3月12日 (月) 17時03分

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