« どうにか松岡センセイを信じてみた VOL.2 | トップページ | ■■お知らせ■■ »

2007年3月17日 (土)

『吉原 泡の園』 連載第10回 「ボーイの朝のお仕事」

■いつ爆発するか分からないマネジャー、勘違いして焼肉を大食いするイッセイ、葬式のような雰囲気で幕を閉じた新人歓迎会。イッセイの吉原のボーイとしての初日がようやく終わった。

     *    *    *

 その後、寮に着いたのは午前3時頃、優しい感じのボーイは、とうとう帰らなかった。僕は、ベッドの上段に寝ることにした。Eちゃんという違うボーイが、僕の部屋に移ることになったらしく、ベッドの下段に入る。1日目は、生まれて一番の衝撃と怒鳴り声との怒濤の日であった。

 朝、11時に起きるのがR店のやり方である。昼に店がオープンするのは別に決まりというわけではなく、それぞれの店の方針であるが、R店は11時30分には掃除を開始しないといけない。なんだかんだで、開店前準備でてんてこまいになるからだ。
 ちなみにオープンは13時である。
 掃除は、部屋の掃除をする者、車を洗車する者に、基本は分かれる。が、時にボーイが人手不足の際は、恐ろしいが、その2つをこなし開店に間に合わせるのだ。
「イッセイ、おまえ買い物いけ」
 そう言いマネジャーは買い物するメモと、買う店の簡易地図を手書きで書いてよこした。
「ほれ」
 そういって1万円ももらう。
「はあ」
 ボーっと考えていると。
「はよいけ」
 と来る。ヒャーと思いながら、送迎車に逃げ込む。送迎車には専用の携帯電話が装備されていた。それが鳴る。
「はい送迎車」
 出るとマネジャーである。
「サボるなよ、車ぶつけるなよ、事故るなよ」
 ガチャと切れる。
 買い物メモを見ると、それがまた細かい。ひとつの店で全て揃いそうなものなのに、これはここの店が安いと、主婦ばりの気配りを発揮する。

・コーヒー豆、茶→T店
・電球、ペン→100円ショップ
・ティッシュ→D店
・ウィスキー、ビール→G店
 
 などである。
 まずは1番はじめの店が見えてきた。T店である。が、そこの駐車場は止めるスペースがない。が、よく見ると、そこに1台分のスペースがある。
 急いで車を操作していると、
「ギギーッ」
 という鈍い音がした。慌てて車から飛び降り、見てみると、よその車にぶつかっている。
 送迎車のバンパーには無数に線が入ってしまった。が、相手の車は、幸いにして無傷だ。それが救いだった。車を入れ、買い物に走る。が、買い物に集中できるはずもなく、車が頭から離れない。
 がちがちに震え、汗も出る。オデブなので、汗をかきやすいが、違った汗が止まらず、そんなだから領収書をもらい忘れた。また、釣りも1円玉10枚あれば、10円玉にしてマネジャーに返すんだよ、と怒られ、領収書がないから、
「おめえ、飯でも食ってねえだろな」
 と疑われる。
 人間性が変わるとすれば、きっかけはこんなことなんだろう。ということの連続である。
 初めての仕事では、失敗はつきものである。また、それで初めて知り、成長もする。が、マネジャーは、失敗をした者を罵倒し、恐怖で支配する。
 自分の恨みを晴らすのだ。
「俺が下っ端のときにされた仕打ちを下っ端にしてやることが、俺をここまでがんばらせたんじゃ」
 恐ろしい男である。
 石川県、松井秀喜の出身地、ここがマネジャーの故郷である。よって、ボーイ達は、皆松井と比べられる。
「松井はここぞって時にすごい。おめえはどうだ。何かだめなんだよ」
 メジャーリーガーと比べても、職種に違いもあるし、意味もない。
 そして、この街に、最愛の娘と、1番目の奥さんを残してきたのだそうだ。(イッセイ遊児)

|

« どうにか松岡センセイを信じてみた VOL.2 | トップページ | ■■お知らせ■■ »

『吉原 泡の園』」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/122338/14282760

この記事へのトラックバック一覧です: 『吉原 泡の園』 連載第10回 「ボーイの朝のお仕事」:

« どうにか松岡センセイを信じてみた VOL.2 | トップページ | ■■お知らせ■■ »