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2006年12月18日 (月)

全体像に迫る。ミニコミとは何か? (後編)

 さて、ミニコミ誌の起源についてだが、何かの媒体で「ミニコミは運動の中から生まれた」というふうに書かれてあるのを目にした人もいるかもしれない。
『ミニコミ総目録』で記述されている内容に従えば、それは60年7月に創刊された『声なき声のたより』であるようだ。
 60年の6月、当時の総理・岸信介は、日米安保反対を叫び国会議事堂を囲む大勢の市民に対し「運動に屈すれば日本の民主政治は守れない。私は国民の“声なき声”に耳を傾ける」と発言。『声なき声のたより』発行の中心となった小林トミという女性は、「ここで声を上げなければ、私も安保を支持する“声”として見なされてしまう」と思い、デモを決行した。デモ全体としては、第16次安保阻止国民議会の統一行動の日にはなんと17万人が参加している。
 しかし、この規模のデモにおいても、政党や労組が組織となって運動する形態が多く、個人の意志としてのデモは一般的ではなかった。つまり、どこにも属することなく自由に参加できる、という空気ではなかった。
 それでも小林と友人は「誰デモ入れる声なき声の会」という独自の横断幕を作り、自由に参加できるデモを掲げた。小林のデモの輪は広がり、300人以上にまで達した。『声なき声のたより』は、そんな中、仲間を結びつけるネットワークのツールとして誕生した。もともと同じ場所から集まった者同士というわけではなかったから、意志を結びつけるメディアを作ることが必要とされたのだ。
 茨城県土浦市で生まれ、千葉県浦安市で育った小林トミは東京芸大を卒業し、「声なき声の会」を作った当時はアトリエで絵を教える画家だった。『声なき声のたより』の表紙の絵は最後まで小林が描いたものだった。後年には児童文学も手がけていたが、2003年に亡くなっている。
 どんどん前に立って統率するタイプだったのかな、と思ったがそうではないようで、初めて横断幕を掲げて友人と歩いたときはとにかく恥ずかしかった、と「声なき声のたより」の創刊号で自らの行動について振り返っている。「声なき声のたより」はミニコミの原型として小林が亡くなるまで、98号を数えた。

『ミニコミ総目録』データによると、最もミニコミが多く創刊それたのは88年ということだ。84年あたりまでは年間100点前後で推移していたのだが、86年からいきなり200点近くに跳ね上がる。なぜ創刊数が急増したのだろうか? 目録の記述によると、86年2月に起こったチェルノブイリ原発事故が、直接的にも間接的にも、ミニコミの創刊ラッシュにつながったのだという。
 前代未聞の原発大事故に人々は驚愕し、原発はもちろん、原発から結びつくような健康・環境問題・食といった内容がクローズアップされた。遠く海の向こうで起こった大惨事が、日本人の問題意識を刺激したということだろう。

 さて、先週にはミニコミを手に入れることのできる書店をいくつか挙げたが、さすがにそれらの書店もバックナンバーまでは置いていない。今はもう発行されていないものやバックナンバーを手に入れようとするなら、求める先は埼玉大学の共生社会研究センターしかないのではないか。
 丸山尚氏を中心に少人数体制で1976年から存続してきた住民図書館が財政難という決定的な理由で閉館を余儀なくされた。その後、01年に住民図書館の役割を引き継いだのは国立大学だった。当時、よりによって国立大学に引き継がせるのかという議論も少なからずあったというが、今ではミニコミ誌の収集・保存機関として定着している。
 以前、南与野の埼玉大学キャンパスにある共生社会研究センターに取材に訪れたとき、なんと21万点ものミニコミ誌が収められていると聞いて驚いた。蔵書は誰でも閲覧可能である。職員さんの話によると、以前よりは社会運動、といった観点からのミニコミは数を減らしたようだが、その代わりに健康や福祉、表現や趣味といったジャンルのものが増えたという。
 もともと「マスコミ」(大量の情報伝達)から派生した(もじられた?)言葉として誕生した「ミニコミ」だが、今でもマスコミほどの影響力はどう見てもないし、この先どうなるのか、といえばそんなことは私にも分からない。
 だが、「そこには少数者の声があるのだ!」と訳もなく盲信しているわけでもないが、従来の大メディアでははなかなか語られることのない意見や考え、アンダーグラウンドな表現をストレートに体現するこのミニコミ誌というメディアは、貴重でありなかなかに深いものがあるのだ。「全体像に迫る!」というエラそうなタイトルの割には駆け足でダーーーっと来てしまったが、またそのうちこれについては書くかもしれません。チャオ!!(宮崎)

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